GSゲルマニウム原人の退屈な日々

見わたせば、気になることばかりなり・・

ブルースセッションでもどう?

いつの頃からか……

2005年10月25日 09時44分16秒 | 美術
もう大分たっちゃったけど

国立博物館の常設の方で展示されていた久隈守景作『夕顔棚納涼図屏風』一見なんの事もない江戸時代の普通の家族が屏風絵になってる、じつは昭和27年国宝に指定されているのだけど、この作品を国宝に指定しているなんて昭和二十年代の日本も捨てたものじゃない。

どこかの田舎の農家、昼間の仕事を終えて風呂でも入ったか行水だったのか、夕げもおそらく質素な漬け物と湯漬けくらいだったのだろうか。
多分それほど大きくもない粗末な藁屋根の軒先に竹を組んだ夕顔(瓢箪)棚、夏の夜と言っても畑や田んぼの田舎暮らし、夜の風は涼しいのだろう、ぽっかりと月もきれいに出ているしゴザを敷いて亭主は夕涼みを始めた。片づけ物をし子供と一緒に行水を浴び髪も洗ったのか上半身裸のまま洗い髪を背中に垂らし妻も横座りに亭主の横に「あら、良い風……」などと。

亭主なかなかの渋いいい男である、恋女房なのか妻も若く美しい大分歳が離れているのかもしれない。

「なぁ、良い月だな」…「そうねぇ」…「今日はちょっとがんばっちゃったな」…「お疲れ様」…「なんだか幸せな気分だよ、貧乏だけどな」…「そうね(笑)」そんな会話が聞こえてきそうな素敵な絵だ。

作者の久隈守景は狩野探幽の弟子の一人といわれているが生没不明、いろいろあって家族離ればなれになってしまったらしい。そんな彼が描いた家族の肖像、この絵は日本で最初に描かれた家族の肖像画とも言われている。

この家族の視線は何処を見ているのだろう?月に照らされた遠くの山影か、田を渡ってくる田園の風の音なのか。

何もない、何もないのである、持たざる者の幸せ、ただそれだけが描かれている。

こんな境地で夕涼みが出来るようになるにはもう少しかかるだろうが、それでも秋も深くなってきて少しだけ気持ちは近づいてきた感じがする、いつの頃からか忘れかけていた事があったような、かつてはうちだって何もない暮らしをしていたんだよねとか思ったりもする秋の夜だったのだ。
コメント
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