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退職後の日々を写真で記録

野口英世はなぜ間違ったのか(7)

2013-02-15 20:04:53 | 野口英世
ワイル病に対するワクチンは稲田らによる病原体の発見(1915年)当初から検討されていた。稲田らは動物実験でワクチンが有効であることを立証し、次いで実地にも応用して著しい効果を発揮した。
しかし野口は、一つの菌株で作製したワクチンは他の菌株に対しても同等に防御するのかどうかの疑問を持っていた。そこで幾つかの菌株を用意し、それぞれでワクチンを作製して、その効果の比較実験を行い、論文とした。それが下の写真にあるレプトスピラに関する第5報目の論文である。

今回は、日本、アメリカ、ヨーロッパで分離された菌株間で、一つの株と他の株との関係を調べるための実験を行った。

論文の要約と結論

方法:
・アメリカ株2株、ヨーロッパ株1株、日本株1株のワクチンを作製した。
・各ワクチンの0.5、0.05、0.005cc を5日間隔で3回モルモットの皮下に接種した。
・各有毒株で最終接種後、2,4及び8週後に攻撃した。

結果:
・0.5ccのワクチンを接種したモルモットは、どの株での攻撃でも生き残った。
・0.05ccのワクチンを接種したモルモットは、ワクチン製造株と同じ株の攻撃には耐えたが、他の株の攻撃で死亡するものもあった。
・0.005ccの場合、アメリカ株1と日本株はワクチン株と同じ株での攻撃には耐えたが、その他の株での攻撃では死亡した。その他のワクチン接種モルモットは製造株での攻撃でも死亡した。
・以上のデータから、ワイル病ワクチンは、十分な量を接種すれば、モルモットは全ての株に対して免疫状態になるが、少量であると製造株に対しては免疫状態になるが、他の株に対しては防御できないかも知れないと結論付けられる。
・このことから、普遍的な免疫をつけるためには、ワクチンの作製においてできるだけ多くのタイプの株の入った混合ワクチンが良い。(以上)

この研究で野口は同じワイル病の病原体でも、少しずつ抗原性が異なることに気がついていた。しかしこの時点では現在知られているようなレプトスピラに多く(250以上)の血清型があることは想像もしなかったであろう。
では今回の研究技法を黄熱病病原体としたレプトスピラに対して野口はどのように利用したのだろうか。
コメント
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