狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

責任をとるということ(6)

2006-03-24 22:25:13 | 反戦基地
   公式参拝とは       角田三郎

 天皇の靖国神社公式参拝ということを、もう少し視点を変えて考えてみよう。
 まず“公的〟というあいまいな言葉であるが、それは、国事行為と私的の間の中間的な領域にあることだという。宮沢俊義『日本国憲法』の国事行為についての説明にはこうしるしてあった。

 「天皇の国事に関する行為に〝内閣助言と承認〟を必要とするとは……天皇のそれらの行為はひとえに内閣の意思にもとづいて行われるべく、天皇が単独に行うことが出来ないこと、言葉をかえていえばそれらの行為は、天皇の名で、天皇の行為という形でなされるが、其の実質上の行為者は原則として内閣でなくてはならないこと、これを裏からいえば、それらの行為についてについては、天皇は、内閣の決定を無条件にそのまま採用し〝めくら判〟を押さなくてはならないことを意味する」。

 天皇の公式参拝は、いかにしても国会で成立しなかった靖国法案を、内閣が、天皇を利用悪用して、何とかその成立にこぎつけたいとする第一歩である。

しかし、国会と内閣が、本来の責任ある行為と判断を自らの責任においてとることを放棄し、天皇という無責任なる存在に、また、かつて民衆の一切の生命と権利を侵略した存在に、再び憲法上疑義ある行為をなさしめるとは何事であろうか。
私たちは、内閣の責任は国事行為に準じて問われるべきであると思うから、天皇の公式参拝の時点で総理大臣を(内容的には天皇それ自身を)告発しようと思っている。
公的などという言葉で逃げても、内閣には責任があるからである。

また、公的な行為とは私的な領域との中間であるということから考える。それならば、それは、黒でも白でもないといって逃げられることではなく、黒でもあり白でもあるとして考えられるべきことであろう。ということは、国事行為に準ずるものとして内閣の責任は問われ、又、天皇自身の私意、恣意によって、現憲法の根幹をつきくずす業がなされているということを、天皇自身がなそうとしていることを問われなければならないということである。

無責任な、無責任な者をして、現憲法を破らしめようとする内閣も問題なら、無責任なる者をして、現憲法を(天皇制にとって全く困った存在であるものを)踏みつけようとする天皇も問題である。

そもそも天皇は、旧憲法上に君臨し、民衆の生命も思想も良心も信仰も無視してきた当事者であった。それは、明治初期や大正の、自由民権運動の歴史を見れば明白なことだ。
昭和にあっても、国会で決し得なかったことを、緊急勅令で、天皇自身が国会を無視する形式で成立せしめた治安維持法があり宗教法人法があった。

「治安立法として有名な治安維持法の前身は、大正12年の大震災に便乗して弾圧をねらった緊急勅令であったし、さらに、その強化のために、昭和3年4月、同法罰条に極刑を加えて提出した改正法案が、衆議院において未了となると、政府は『事態ノ急到底議会招集ノ暇ナシ』との理由のもとに、6月29日、治安維持法を改正する緊急勅令を公布、即日施行。遂に
『国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ5年以上ノ刑ニ処』することにしたのである」(体系憲法時点より)

天皇の公的参拝は、かつて天皇自身が政府と共に実行したあの緊急勅令による悪法作りを繰り返すことだ、ということを、天皇自身と内閣が銘肝すべきだと私は思う。
再三繰り返すけれど、公的という灰色の言葉で、天皇も内閣も共に無責任な形で、現憲法の侵犯がなされることは承認されるべきではない。

 8・5集会の動因の1つは、朝鮮半島の民衆や台湾の民衆が「天皇陛下ノ為ニ喜ンデ死ンダ」と確言した靖国神社当局の発言にあった。靖国神社当局にも靖国法案や天皇の公式参拝を推進する人々にも、隣国の民への戦争責任や罪責が全く欠如していることはこのように明白である。
以上のことから、靖国当局や改憲論者や靖国法案推進の意見を一言でまとめればこうである。

「日本は肇国以来、天皇の私有物である。天皇が天皇制という国体護持のため、兵士と庶民をどんな惨苦に追いやっても、それは統治者の権利の行使だから当然のことで、民衆も兵士もそして服属した隣国の民も、天皇のために死ぬことを光栄とし、喜んだのである。
天皇はまた、天照大神の直系の現人神である。そのまことの最高至貴の神の勅のまにまに生き死んだものを、天皇の命令で神とするのが靖国神社や国家神道の神社である。だから、法にあっては神聖不可侵の統治者であり、精神界にあっては現人神であり、人を神とすることを承認し否決できる唯一の方である天皇が、堂々と国家の元首として、靖国神社に望むことが正しいことなのだ。そうでなければ、天皇のために死んだことが全く無意味になるではないか」。






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2 コメント

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責任 (ましま)
2006-03-25 09:56:16
大日本帝国憲法

第8条2項 此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若議会ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ



 やっぱりとりまき政治家と帝国議会のせいですな。

 ところで、我が方のサービス当局、また故障です。(激憤)
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腹が立つのは良くない (tani)
2006-03-30 13:43:21
激憤は寿命を縮める。

あの天真爛漫のお方はノホホーンとしておられたから、史上最高年齢まで(神武帝は例外だと思うけど)この世にあらせられた。

低頭。
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