狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

蔵書家N氏の場合

2006-07-06 22:55:12 | 本・読書

先ずこの雑誌の説明からせねばなるまい。
野鳥  創刊号       梓書房
     五月号
昭和九年四月廿日 印刷
昭和九年五月一日 発行
    編輯者    中西悟堂
  東京市神田区駿河台町一ノ八
    発行人    岡 茂雄
  東京市神田区美土代町二ノ一
    印刷所    三秀舎
  東京市芝区田村町六ノ一
    写真製版所  斉藤任弘

  東京市杉並区井萩三ノ四一
       中西悟堂方
    編輯所    日本野鳥の会
  東京市神田区駿河台町一ノ八
    発行所    梓 書房
        電話神田二七七五番
        振替東京七八六四四番

この雑誌は中学同僚であるN兄から、何気なく頂戴したもので、その奥付をコピーしたものだ。
N氏としたのは、兄のお父上さまのことなので、敬称として氏を用いたのである。勿論故人(昭和45年逝去)であり、N兄も数年前物故された。

 この「野鳥創刊号」は20冊くらい纏まって置いてあったから、おそらくN氏は野鳥の会の会員であったか、地方支部の責任者だったのであろう。
 
 N家は終戦後まで、専売品を商う豪商だった。広大な邸宅。煉瓦造り土蔵、書院を兼ねた離れがN兄の居間だったようだが、商家造りの本屋はもとより、座敷4方8方が書架であり、その前には本が横積みされ、廊下にまでも及んだ。
何所から何所まで、蔵書で埋もれていたといってよい。

 土蔵の中も案内されたことがある。ここには洋書のコーナーや、骨董品などもあった。階段で区切られた1階も2階も全て本ばかりであった。
 ここに毎日新聞社が発行する「神田神保町古書街ガイド」なるムックが数冊あるが、この中にある載っている古書の老舗店内部のように、歩く隙間もないほど、びっしり本が積まれてあった。