呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

今も昔も変わらない悩み

2010年07月02日 | 日記
 弊社は今月別のビルに移転することになった。これを機会に不要なものを整理していくのだが、その作業の中でたまたまとある本を見つけた。『中国投資はなぜ失敗するか』という本で1996年に出版されたものだ。今でもこの手の本は見かけるが、14年前はどんな論調で書いていたのかを見てみた。その中からテーマをいくつかを拾ってみたのが次のものだ。

 ・深刻化するコピー製品の氾濫
 ・工場内の無秩序と個人責任制
 ・性悪説による労務管理
 ・迫られる政策変更への対応
 ・決して謝らない現地従業員
 ・日系企業への厳しい評価
 ・望ましい駐在員の条件

 今でも全く通用するテーマばかりだ。逆に言えば中国側も日本側も14年の間これらの問題を解決できていないということがいえる。日系企業への厳しい評価というテーマなんていうのは今でも全く通用する内容だ。厳しい評価の理由を見てみよう。この本では、中間管理職が日本人に対して「いばっており」「ずるく」「がめつい」と考える傾向が強いと紹介している。そしてこのような事態に至る原因として日中間のコミュニケーションギャップを挙げており、「文化・価値観の違いによる中国人スタッフと日本人管理職の軋轢」が最も深刻な問題になっているという調査結果が紹介されている。本当に今この本を新たに発売しても何の違和感もない内容だ。これを単に日本企業がこの14年間改善してこなかったというよりも、それだけ改善することが難しい問題だととらえるべきであろう。このような問題を語るときのキーワードとして「現地化」という単語が出てくる。さすがに14年も経過すると全然できていないわけでもなく、結構現地化できている企業も出てきている。そして、その極めつけは先日の日経トップ記事である“コマツの中国16子会社「社長すべて中国人に」意思決定速く、幹部候補も育成”という見出しだ。かなり話題になっているのでこのブログをご覧の方であればほとんどの人が知っているはずだ。これは日系企業としては本当に革新的な判断だといえる。なにせ日系企業は現地に派遣している駐在員自体に権限を持たせてもらえていないケースも少なくなく(6月3日のセミナーでは日系企業の権限の現地化が進んでいるという結果が出たことを紹介したが、私個人としてはまだしっくり感を得ていない)、まして現地従業員に大幅に権限を委譲するというのはかなり勇気のいる行動だといえる。もっとも、実際に実行に移すコマツからすると、そういう時期に来たから、そうすべき理由があるから、ということで以って現地化を勧めるので、勇気のある行動でもなんでもないと反論してくるだろう。いずれにせよ、はたからみるとかなり革新的な動きであることは否めないし、今後追随する企業も出てくるだろう。

 現地法人トップが現地化するだけで全てが解決するわけではないが、最近の中国各地のストライキ騒動で労務管理があらためてクローズアップされているさなかのコマツのこの判断は大いに参考になる施策であるといえるだろう。

「80後」世代の自動車購入の傾向

2010年07月01日 | 日記
 中国国内市場が注目されるに伴い、やたらと聞こえてくるキーワード、「80後」あらためてこの単語の意味を見てみよう。

 80後:1980年から1989年までに生まれた世代。今年21歳から30歳。ということは、
 70後:1970年から1979年までに生まれた世代。今年31歳から40歳。ということになる。

 さて、MSN中国語サイトが《MSNホワイトカラー自動車調査報告》というものを発表した。一線都市のホワイトカラーの自動車購入・保有状況に関する調査報告だ。これによると、自動車を保有するMSNホワイトカラーの半数以上がその年齢が25歳から30歳の間に集中しており、「80後」が自動車消費のメインとなりつつあることがわかる。なるほど、やはり「80後」は国内消費の牽引役であることがわかる。ところが、そのお金の出所は彼ら自身ではないのだ。

 「80後」世代のホワイトカラーの72.5%もの人がは両親または親類の援助に頼っているという結果が出ている。これとは逆に、「70後」世代の75%の人が自ら全額負担して自動車を購入しているという。「80後」初期の人はもう30歳になるが、結構スネかじりであることがわかる。

 また、地域によっても購入金額に特徴があることがわかっている。北京地区のホワイトカラーが始めて車を購入する場合の費用は割と少なめで、30%以上が10万元以下の自動車を購入している。一方で、広州地区のホワイトカラーの予算は高く、15%の人が初めての自動車購入金額が25万元以上に上る。これは北京の9%や上海の11%を大きく上回る。南に行くほど太っ腹であることがわかる。常住人口を比較すると、2009年末で北京が1755万人、上海が1921万人、広州で1025万人という数値が発表されている。人口こそ違えど、台数ベースでは北京と広州はほぼ同じだ。広州が所属する広東省にはこのほかにも深圳もあり、広東省全体の人口も9638万もの規模に達しており、日本をちょっと小さくしたくらいの規模だ。なんとなく中国での事業展開は上海からというような形で入り始めるケースが多いが、広州(広東)からはじめるというのもひとつの考え方として検討に値するといえるだろう。