呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

灰色収入

2010年07月28日 | 日記
 中国経済体制改革基金会国民経済研究所が研究課題として行った研究会によると、2008年の全国居住者可処分所得総額が国家統計局の世帯収入統計調査の結果よりも9.26兆元上回るという結果が出た。この差額は2005年の4.85兆元の倍近くまで跳ね上がっているが、この大部分が灰色収入と言われている。そして、こういった灰色収入の大部分が高収入者により占められている。また、2008年の都市最高収入と最低収入家庭の実際の一人当たり平均収入の差は26倍だったが、政府統計ではこれが9倍しかなかった。また、収入レベル上位10%と下位10%との間の収入格差はなんと65倍もあり、これも政府統計の23倍をはるかに上回っている。

 なぜこれだけの差が出るのだろうか。これは政府の行う調査方法に原因があるという。現在の世帯調査における抜き取り調査は自ら進んで行うことが中心であり、高収入者はこのような調査を受けたがらない傾向にある。また、高収入者が抜き取り調査を受け入れたとしても、本当の収入情報は開示せず、そのため灰色収入部分は統計に反映されることはない。中国経済体制改革基金会国民経済研究所はこのようなことを避けるべく調査員がよく知っている人、たとえば親戚、友人、同僚といった人たちに調査を行ったことにより、政府統計と違った数値が出てのではないかとしている。

 中国の場合は上と下との格差があまりにも大きく、平均値を以って物事を推測することは賢明ではないが、平均賃金等の指標を見ていると、いくら中国が豊かになったとはいえ、とてもこれだけの消費を行うことができるとは思えない。

 そういえば、かなり以前に会社で人を募集したときに某区の税務局員と面接をしたことがある。そのときの履歴書に収入に関して記述しているところが2箇所あり、それが矛盾していたので質問したところ、「なんというか、我々のような人間には灰色収入というものがあり、、、、」という言い訳をされた。末端レベルにまで浸透していることがよくわかる例といえるだろう。

 もらう人がいるから渡す人がいる、渡す人がいるからもらう人がいる、どっちでもいいのだが、なんとなくこれが当たり前になっているから性質が悪い。色んなところで「反腐敗」というキーワードを見かけるし、しかも何年も前から見かけるのだが、先ほど紹介したようにあまりにも末端に浸透していることから見ると、この問題を解決するには相当の時間を要するだろう。