下の表をご覧頂きたい。中国に進出している外資系小売業の比較表だ。一般的にはカルフールが最も馴染み深いと思われるが、他社も負けていない、というよりもカルフールのトップの地位が危うくなってきている。
名称
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進出
時期
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2008年末店舗数
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現在の店舗数
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本年新設店舗
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以前の年間平均店舗開設数
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2008年
売上高
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店舗平均売上高
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1995年
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134
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139
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5
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20-25
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338億元
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2.52億元
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1996年
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123
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158
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35
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10-20
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278億元
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2.3億元
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(台湾)
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1997年
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101
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約110
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約9
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10
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336億元
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3.33億元
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(出典:第一財経新聞)
カルフールと大潤発とを比較すると、2008年の全体売上げがほぼ同じながら、一店舗あたりの売上げは大潤発のほうが30%以上も高い。また、カルフールとウォルマートを比較すると、新店舗の開設ピッチがウォルマートのほうが断然早く、店舗数ではカルフールを抜いてしまっている。
百聯や
華潤万家等の中国資本の小売業を除くと、カルフールの店舗販売能力はずっと最強といわれていた。各店舗に独立した営業権を与え、大量の販促や各種の活動を行わせ、同時にサプライヤーから多項目の費用を受け取り、且つ大量にサプライヤーの価格合戦を行わせていた。サプライヤーに価格競争を行わせた上で最も低い価格を提示するサプライヤーを選ぶという方法を取っている。サプライヤーにとってはかなり厳しいやり方だ。これに対して大潤発は違う方法を採用している。大潤発は通常いくつかの固定サプライヤーを選定し、安定的な価格で仕入れ、しかも支払を早期に済ませてしまう。当然のことながらサプライヤーからの評価は高い。また、大潤発は納品状況を毎日更新するシステムを持っており、サプライヤーは毎日リアルタイムで自社の商品の販売状況を把握することができるようになっている。このシステムはカルフールにもウォルマートにもない。また、大潤発は「包養」政策、つまり丸抱え政策を行っている。具体的には米、豚肉、果物のサプライヤーを抱えてしまうのである。そこから纏め買いする契約を行うことで安く仕入れるのだ。当然新鮮なものをスピーディーに仕入れられるし、安く仕入れることができる分だけ販売価格にも反映させることができる。この他には従業員が盗み食いや盗み飲みすることに対して厳しく処分することにしており、これもあって損耗率が0.2%~0.3%と、同業の1%と比べてはるかに低く、これだけで年間1億元の収益に寄与している。
最近インターネットを通じて無記名調査が行われ、この先5年以内にどこが中国小売業のトップになるかという質問に対して、大潤発が1310票でトップ、ウォルマートが1135票で2位、そしてカルフールはわずか327票しかなく、世紀聨華や華潤万家よりも下にランクされてしまった。
2009年第一四半期の売上高で大潤発は115.6億元の売上げを達成し、108.6億元の『カルフールを上回っている。店舗数、売上高、店舗あたり売上高のどれもトップでなくなってしまった。
サプライヤーからすると闇雲に競争ばかりさせられて、しかも支払が悪いよりも、安定的に仕入れてくれて、しかも早く支払ってくれる。どっちがサプライヤーにとって「いい納品先」かは明らかだ。スーパーに商品をおろしている企業に何度かお話を伺ったことがあるが、カルフールのやり方は上に書いてあるようなお話だった。そして、そのやり方に対して決して満足していなかった。カルフールだけが特をするシステムになっているように感じているのだ。スーパーとサプライヤーが共に成長できるようなスキームを組んでくれるところがあれば乗り換えたいのだが、なんだかんだいいながらもカルフールには大量に物がさばけるということから取引を続けているところが多いように感じた。しかし、大潤発のようなやり方が普及してくるとカルフールの今までのようなサプライヤーに対するサディスティック路線は通用しにくくなってくるだろう。どっちがサプライヤーにとってやりやすいかは明らかだ。さあ、どうするカルフール?!
(ご参考:2008年中国小売業トップ100)