呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

税関による工場立ち入り検査の増加

2009年09月10日 | 未分類
  今年の下半期に入ってから税関による工場の立ち入り検査が増えてきているという声があがっている。立ち入り検査の重点内容としては財務、物流、税関実務だ。日頃からちゃんとしていれば問題ないと口で言うのは簡単だ。しかし、実際にその作業を行っている部門を見学させてもらったときに感じたのだが、実務的には特に加工貿易の保税材料を寸分の狂いもなく管理することは至難のわざだ。こんなの合うわけがないというふうに言ってくれた人もいる。

  今年上半期で税関は査察により9.3億元を追徴している。工場立ち入り検査強化の動きはこれを更に進めていくということにつながるのだろう。

2008年度の上海百貨店店舗売上げ

2009年09月08日 | 未分類
  この間スーパーのことを書いたので今度はデパートのことが気になった。今日はちょっと古い情報だが2008年のデパートに関する情報をまとめてみた。

  上海市商業信息中心が調べた62店の百貨店データによると、2008年の上海百貨店小売規模は291.6億元に達し、前年比6.95%増加、そのうち、トップ20の店舗の売上げ規模は177.9億元に達し、これは全体の61.0%を占める。そして、店舗売上げベスト3は浦東第一八佰伴、南京東路新世界商城、久光百貨店だ。以下全て2008年の状況である。

  浦東第一八佰伴は初めて年間売り上げ30億元の大台を突破し、32.03億元に達し、引き続き首位の座を守った。確かに店舗は大きいのだが、余りにもぶっちぎりでの1位だとは思っていなかったので驚いた。

  次に南京東路新世界商城が23.54億元で第二位、前年比9.6%増。そして久光百貨店が16.26億元で第三位、前年比15.1%増加しており、ベスト3の中で最も伸び率が高かった。たまたまなのか、これらの店舗はちょうど地下鉄2号線沿線にある。

  それにしても久光百貨店の勢いは凄い。最初の頃は置いてある品物が高級品ばかりなので、買う人がどれだけいるのかと思っていたのだがとにかく好調だ。久光百貨店の好調の原因はどこにあるのだろうか。私が愛読している「RINKOKU(隣国)」で久光百貨店について紹介されている。それによると、好調の原因は徹底的なサービス、接客及び品揃えは当然のことながら、新しいブランド、商品の誘致に注力していることが大きいようだ。また、これとの相乗効果を狙ったイベントの開催も効果があるようで、さらに付け加えるといわゆる日本のデパートと同じようなイメージの「デパ地下」もかなり寄与している。この「デパ地下」をきっかけに久光百貨店のファンになる人も多いようだ。今年4月時点の記事なのだが、それによると平日は約42,000人、休日は約60,000人のお客様もの来店客があるとのことだ。まとめると、キーワードは、サービス・接客・品揃えを前提として上で、さらに「新ブランド」、「新商品」、「イベント」、そして「デパ地下」だ。いわれてみれば当たり前のことなのだろうが、当たり前のこととそれができることとは別の話だ。この当たり前のことができるというのも強みといえる。今後も期待できそうだ。また、純日系デパートの伊勢丹、これから進出する高島屋にも期待したい。

上海ホワイトカラー昼食事情

2009年09月07日 | 未分類
  所得水準が年々向上している上海のホワイトカラー。彼らはお昼時どのような食事を取っているのだろうか。ここでは陸家嘴、淮海路、虹橋の3エリアについて紹介しよう。出典は上海中医薬大学が約3万人に対して調査を行ったという《華東ホワイトカラー生活形態調査研究報告》だ。新聞紙上では陸家嘴エリア、淮海路エリア、虹橋エリアの3つが紹介されている。

(1)陸家嘴エリア
  陸家嘴エリアのホワイトカラーの平均昼食時間は28分だそうだ。時間が短い!それもあって、ファーストフードが人気だ。ファーストフード選択率33.8%、外食が元々23.5%だったのが16.1%に下落。そして、週に3-4回は昼食を取り漏れてビスケットやパンでおなかを満たすことがあるという。仕事に比べれば昼食はそんなに大事なわけでもないらしい。でも本当に平均28分しか時間がないのだろうか。食べているだけの時間が28分なのではないかと思ったりする。なんか、必要以上に忙しいことをアピールする結果のように思える。

(2)淮海路エリア
 このエリアでは外食を選択する比率が57.7%に上る。簡単な弁当でも16元、18元、ちょっと高いものだと20元や25元する。弁当の割には高いので、それならいっそのこと外食しようと言うインセンティブが働くのだろう。中には社内に弁当のにおいが充満するのを嫌がる外国人総経理が社内で弁当を食べることを禁止しているようなところもあり、これもまた外食を選ぶ原因になっているという。しかしこの総経理も臭豆腐のような独特のにおいならともかく、普通レベルのにおいの食事くらい我慢して欲しいものだ。きっと中国の食文化についていけない人なのだろう。

(3)虹橋エリア
 上海ホワイトカラーの昼食に対する平均消費が18.92元という結果が出ている中、このエリアにおける平均消費は26.8元という数値が出ている。このエリアの昼食は値段が高く、最も安いものでも100元くらいしてしまう(筆者注:このように紹介されているが、そんなに高いわけではない。定食類だとせいぜいこの半分くらいのはずだ。取材先が偏りすぎていたのだろう)。台湾式・香港式レストランで「蜜汁叉焼飯」や「蜜汁鶏腿飯」を注文しても20-30元してしまう。これもあって、わざわざ近くの大学まで行って学食を食べる人もいるらしい。それか自分で弁当を持ってくる人も多いようだ。

     
       蜜汁叉焼飯        蜜汁鶏腿飯

  このほか、睡眠時間のことについて触れていたが、10時前に寝る人が全体の12%しかいないという表現になっていた。しかし私的にはそもそもいい大人のうち12%もが10時前に寝ているという事実のほうに驚いたのであった。

  違和感を感じる部分もあるだろうが、いちおうの参考にはなるだろう。

カルフール、トップの座危うし!

2009年09月04日 | 未分類
  下の表をご覧頂きたい。中国に進出している外資系小売業の比較表だ。一般的にはカルフールが最も馴染み深いと思われるが、他社も負けていない、というよりもカルフールのトップの地位が危うくなってきている。
 
名称
進出
時期
2008年末店舗数
現在の店舗数
本年新設店舗
以前の年間平均店舗開設数
2008年
売上高
店舗平均売上高
1995年
134
139
5
20-25
338億元
2.52億元
1996年
123
158
35
10-20
278億元
2.3億元
(台湾)
1997年
101
約110
約9
10
336億元
3.33億元
                            (出典:第一財経新聞)

  カルフールと大潤発とを比較すると、2008年の全体売上げがほぼ同じながら、一店舗あたりの売上げは大潤発のほうが30%以上も高い。また、カルフールとウォルマートを比較すると、新店舗の開設ピッチがウォルマートのほうが断然早く、店舗数ではカルフールを抜いてしまっている。

 百聯華潤万家等の中国資本の小売業を除くと、カルフールの店舗販売能力はずっと最強といわれていた。各店舗に独立した営業権を与え、大量の販促や各種の活動を行わせ、同時にサプライヤーから多項目の費用を受け取り、且つ大量にサプライヤーの価格合戦を行わせていた。サプライヤーに価格競争を行わせた上で最も低い価格を提示するサプライヤーを選ぶという方法を取っている。サプライヤーにとってはかなり厳しいやり方だ。これに対して大潤発は違う方法を採用している。大潤発は通常いくつかの固定サプライヤーを選定し、安定的な価格で仕入れ、しかも支払を早期に済ませてしまう。当然のことながらサプライヤーからの評価は高い。また、大潤発は納品状況を毎日更新するシステムを持っており、サプライヤーは毎日リアルタイムで自社の商品の販売状況を把握することができるようになっている。このシステムはカルフールにもウォルマートにもない。また、大潤発は「包養」政策、つまり丸抱え政策を行っている。具体的には米、豚肉、果物のサプライヤーを抱えてしまうのである。そこから纏め買いする契約を行うことで安く仕入れるのだ。当然新鮮なものをスピーディーに仕入れられるし、安く仕入れることができる分だけ販売価格にも反映させることができる。この他には従業員が盗み食いや盗み飲みすることに対して厳しく処分することにしており、これもあって損耗率が0.2%~0.3%と、同業の1%と比べてはるかに低く、これだけで年間1億元の収益に寄与している。

  最近インターネットを通じて無記名調査が行われ、この先5年以内にどこが中国小売業のトップになるかという質問に対して、大潤発が1310票でトップ、ウォルマートが1135票で2位、そしてカルフールはわずか327票しかなく、世紀聨華や華潤万家よりも下にランクされてしまった。

 2009年第一四半期の売上高で大潤発は115.6億元の売上げを達成し、108.6億元の『カルフールを上回っている。店舗数、売上高、店舗あたり売上高のどれもトップでなくなってしまった。

 サプライヤーからすると闇雲に競争ばかりさせられて、しかも支払が悪いよりも、安定的に仕入れてくれて、しかも早く支払ってくれる。どっちがサプライヤーにとって「いい納品先」かは明らかだ。スーパーに商品をおろしている企業に何度かお話を伺ったことがあるが、カルフールのやり方は上に書いてあるようなお話だった。そして、そのやり方に対して決して満足していなかった。カルフールだけが特をするシステムになっているように感じているのだ。スーパーとサプライヤーが共に成長できるようなスキームを組んでくれるところがあれば乗り換えたいのだが、なんだかんだいいながらもカルフールには大量に物がさばけるということから取引を続けているところが多いように感じた。しかし、大潤発のようなやり方が普及してくるとカルフールの今までのようなサプライヤーに対するサディスティック路線は通用しにくくなってくるだろう。どっちがサプライヤーにとってやりやすいかは明らかだ。さあ、どうするカルフール?!

(ご参考:2008年中国小売業トップ100)

ゆとり教育

2009年09月03日 | 未分類
 日本でゆとり教育という言葉が唱えられるようになって久しい。受験戦争があまりにも熾烈であったり、学校の管理があまりにも厳しかったりしたことを改善するためにゆとり教育なるものが始まったといわれている。ゆとり教育賛成派もいれば学力の低下につながるからだめだという反対派もおり、議論の尽きないところであろう。
 
 さて、中国ではどうだろうか。中国の教育は科挙の名残からか暗記教育、詰め込み教育の印象を持っている人もいるだろう。こんな中で江蘇省が風穴を開けた。なんと、宿題を与えることに対して制限を課す通達を出したのである。その名も《江蘇省学生体質健康促進条例》で、91日からスタートしている。この中で、生徒の学業負担を減らすため、また睡眠時間を確保させるために、以下の制限が設けられた。 
 学年
学校の授業時間
宿題に要する時間
小学生
      12年生
6時間
なし
      3-6年生
1時間以内
中学生
7時間
1.5時間以内
高校生
8時間
2時間以内
  授業や宿題の時間が制限される一方で、学校及び教師は補修クラスのようなものを一切行うことはできなくなった。これらに違反すれば責任者は処罰されてしまう。各科目の先生が宿題を課するような場合、それをどうやって規定時間内に収まる量に調整できるのだろうか、という議論が早速出ている。学力低下を心配する保護者も少なくないだろうが、このように強制化してしまえば不満も出しにくいだろう。こんなことをルールで強制化するところがいかにも中国的だ、と思ったのであった。
 
 
  日本ではゆとり教育の後に
モンスターペアレントと言う言葉も生まれた。中国でもモンスターペアレントなるものが発生していくのだろうか。ちょっと見て見たいような気もする。

外貨管理局が外貨の国外留保を検討中

2009年09月02日 | 未分類
  輸出による回収外貨を国外に留保することについて外貨管理局が検討中だ。もしこれが実現すれば外貨流入の抑制がもたらされる。マクロ的な話はここでは触れないことにして、実務的にはどんな問題が起こるかを考えてみよう。

 まず、輸出税額還付にあたり外貨が回収できていることを確認する必要があるが、国外に留保するとなれば、これをどのように管理するのかと言う問題が出てくる。仮にこの問題が解決できれば外貨をずっと国外に留保することが可能になってしまう。

  次に、中国国内からなかなか払い出せないお金を国外で決済してしまうことができてしまうということも考えられる。個人的にはこちらのほうに注目している。

 なかなか払い出せないお金の決済として考えられるのが、移転価格に該当するとみなされて海外送金に必要な税務証明を発行してもらえず、結果として海外送金できない非貿易送金がある。ただし、これは税務面の問題さえクリアできれば送金できる話だ。

  もうひとつが親子ローンだ。ちゃんと外債登記さえしていれば元本及び利息の支払のために海外送金を行うことができるのだが、中には外債登記をちゃんと行っていないケースもある。そのため返済手続きを行うことができず、親会社からすると貸しっぱなしの状態になっており、借りた側からすると十分に返済資金があっても返済できない、いわゆるベタ貸しの状態になっているケースがある。もし外貨を海外に留保することができれば、このような資金貸借を海外で処理することができてしまう。ただ、中国も外貨の管理には目を光らせるだろうから、このような処理、要するに自分のあずかり知らぬところで処理されてしまうということに対して制限をかけてくることは十分に考えられるし、きっとそうなるだろう。

  輸出回収外貨の国外留保に関する通達はそう遠くないうちに公布されるらしい。果たしてどんな内容になるだろうか。