極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

干魃と食料危機

2012年08月10日 | 地球温暖化

 



【異常気象と温暖化】

昨夜の続きなのだが、彼女に聞くと、ノウゼンカツラの花の不成はどうやら剪定業者(シル
バー人材派遣会社)の担当者が経験のない素人だということの落ち着きこの件に終止符(ピ
リオド)を打つことに。



ところで、米海洋大気局(NOAA)は8日、米本土の7月の平均気温が1895年の観測開始以来、
最高を記録したと発表。猛暑の影響で干ばつや山火事などの被害も広がっている。それによ
ると、アラスカ州とハワイ州を除く米本土48州の7月の平均気温は25.℃と、これまでの最
高だった1936年7月の25.2℃を上回わり、2012年1月から7月までの平均気温と、過去1年
間の平均気温がともに観測史上最高を記録し、ワシントン州を除くすべての州で気温が過去
の平均を上回った。各地で記録的な猛暑が続く中、干ばつの被害も拡大し、ネブラスカ、カ
ンザス、アーカンソーの3州では5月から7月にかけて記録的な乾燥に見舞われている。こ
の影響でトウモロコシと大豆の不作が広がり、飼料不足のためやむなく家畜を売ったり処分
したりする農家も増えている。米農務省は全米の半数以上の郡を災害地域に指定したと報
じた。





また、『緊急避難策としてのCCS』で触れたように、グリーンランドの氷床が解氷現象は
平均して150年に1回起こるという。最後に起こったのは1889年で、今回の現象もこの周期に
沿ったもだといわれているが、もし来年も同じような解氷現象がつづくのであれば大事にな
る可能性(地球温暖化人為説が原因)も残されているわけだが、また一方、上図のごとく現
状では、太陽活動などによる宇宙風の影響と気象変化のメカニズムについて明らかにされて
いないのだ。



また、干ばつによる穀物価格高騰への懸念から各国が輸出を制限すれば、世界は2007~2008
年と同様の食料危機に直面する可能性があるため、7月に世界食料価格が急騰したことを受
けて国連食糧農業機関(FAO)が9日、警告を発した。FAOが発表した7月の世界の食料価格
指数は213ポイントで、6月の201ポイントから6%上昇。指数は3カ月連続で低下していた
が、穀物や砂糖の価格が急騰するなどして再び上昇に転じた。FAOのシニアエコノミスト兼穀
物アナリスト、アブドルレザ・アバッシアンは「2007~2008年のように事態が進行する可能
性がある」と指摘したと報じている。

 

つまり、トウモロコシなどの主要穀物は、ハイブリット種(1代雑種)を使うため全ての種
を農家が専門の種苗会社から買わなければならず、種苗会社でも来年度の作付用種を確保で
きているかが問題にされている。1代雑種から収穫されるトウモロコシなどは発芽せず、次
の代を残さない、残せない。種苗会社が近隣諸国で作付をして、毎年の販売量を確保してい
れば問題無いが、米国の大手種苗会社のハイブリット種育成地がどこにあるよくわからない
とされている。従って、独占あるいは寡占状態となっている上に、該当企業の手元にその種
がなければ、穀物の高騰はさることならが、食料自給率の低い輸入国は勿論のこと発展途上
や貧困国で食糧危機や飢餓状態が発生すると予測されている。

ここで、新興国の経済発展に伴う穀物需要の増加や気候変動による食料供給不安が懸念され
るなか、農作物の増産、生産性向上は喫緊の課題であり、問題解決の手段の、主要穀物種子
について、つまり、従来の単なる“タネ” から高機能を付加したハイテク商品へと変化を遂
げ、農業生産において重要な役割を担う種子のこれまでの種子市場形成過程を俯瞰し、市場
の分析と今後の産業動向について考えてみる。

さて、1930年代に入り、従来とは異なる育種技術が市場の様相を変化させる。ハイブリッド
種子の誕生だ。これは異なる性質のタネを掛け合わせて作った雑種1代目のタネであり、F1
(first filial generation) 種子とも呼ばれる。雑種の1代目には雑種強勢という性質が
働き生育が良くなるほか、大きさや形状、収穫時期がそろうので、大量生産に向く作物を作
ることができる。このため、トウモロコシの種子であるハイブリッドコーンは全米で急速に
普及、1960年代にはトウモロコシの作付面積の大部分がハイブリッド種子に置き換わってい

った。この優良な性質は次世代には受け継がれない、農家は従来のように自家採種できなく
なり、種子業者から毎年買う必要あり「種子は自家採種して毎年使用するもの」という慣習
に大きな変化をもたらし、種子は農家が自給するものから購入資材化され種子需要はハイブ
リッド種子の普及とともに増大し、種子市場を成長する。

 

さらには、1968年に発効したUPOV条約(植物の新品種の保護に関する国際条約)に基づいて
各国が日本の種苗法に当たる法律を制定し、種苗に関わる知的財産管理をする。育成者権保
護の制度化は、ハイブリッド化されていなかった小麦やダイズなどのコモディティ作物の種
子開発に拍車を掛け、同時期は、人口増による需要を賄うべく、大量生産指向されると優良
な種子は、農薬、肥料、農業機械と一緒に輸出され、その結果、種子市場の国際化が進む中

小の種子企業を買収し、種子の争奪戦を展開して、種子市場の寡占化が進行する。

1990年代、種子市場にハイブリッド種子の出現に匹敵するバイオテクノロジーの進化、遺伝
子組み換え技術を使った種子の登場すると、従来の種子の品種改良が、異なる優良な形質を
持った種子の掛け合わせが可能となり、伝子組み換え= GM (genetically modified) 種
は、遺伝子を直接操作することにより新たな形質を生み出して品種改良する。GM種子は従
来のハイブリッド種子よりも価格は高くなるが、遺伝子組み換え技術による除草剤への耐性
や害虫に抵抗性を持つ機能が組み込まれたことにより、農薬の使用量を抑え、生産者の手間
が省け、農業生産の全体コストを下げることを可能となる。


1994 年にベンチャー企業のCalgene (後にMonsanto に買収される) が世界初の遺伝子組み
換え食品となる、完熟後でも日持ちがよい「フレーバーセーバートマト」を作り出し、米国
で販売された。次いで1996年には、害虫に抵抗性のあるトウモロコシを皮切りに、ダイズ等
の主要品目における遺伝子組み換え作物の商業栽培が始まり、2011年では、GM 種子は29カ国、

1億6,000万haまで作付面積を急速に伸ばす。主要農作物の全世界作付面積のうち、ワタ82%、
ダイズ75%、トウモロコシ32%、ナタネ26%がGM種子に置き換わる。

このように急速に発展してきたGM種子は、農薬生産化学系企業が深化させ、遺伝子組み換え
技術が医薬品分野等で発展を遂げてきた経緯から、医薬品業界等の大手企業がバイオテクノ
ロジーを梃子に種子分野への遺伝子組み換え技術の導入を試みる。農薬という農業関連事業
を持ち、かつ、バイオテクノロジーへの知見もある化学品業界も同様に、GM種子開発に参入。
した。一方、農薬部門を持つ化学系企業は一層種子の分野へと足を深めていった。その理由
は、ほぼ同時期に農薬の人体への悪影響や環境汚染などが声高となり、農薬使用量を減らそ
うとする世論が出始め、遺伝子組み換え技術を利用した、農薬使用量を減らせる種子開発は
生き残りを掛けた戦略に転向する。また、その地域の特性に合ったタネと掛け合わせてカス
タマイズする必要があることから、GM種子を開発する農薬企業は多様なタネを持つ各々の地
場の種子企業を押さえる必要から農薬企業の種子産業への浸食を後押しする。



国際的な種苗業界団体であるInternational Seed Federation (ISF) の調べでは2011年で
約420 億ドル規模と推計。グローバル市場を相手にしている穀物種子が360 億ドル(86%)、
地場の気候や食文化に根ざして生産される野菜・果実が55 億ドル(13%)、花卉が5 億ドル
(1%)とみられる。国別では、市場規模が10億ドルを上回る上位7 カ国で全体の73%を占め、
特に、米国と中国は3 位以下を大きく引き離している。他方、The International Service
for the Acquisition of Agri-biotech Applications (ISAAA) の報告書では、2011年時点
での種子市場は約370 億ドルであり、その36%に当たる132億ドルがGM種子種子企業の対象領
域の拡大種子メジャーは、従来、狙いとしていた主要穀物以外、野菜・果実、花卉種子へも
進出。2005 年にはMonsanto が野菜・果実種子市場では世界最大で、市場シェア約2 割を持
つSeminis (米) を買収、花卉分野では2008 年にSyngenta がGoldsmith Seeds(米)を買
収するなど、残された種子分野でのシェアを高めてきている。しかし、野菜などは地域の食
文化によって味や形状の好みにも違いがあり、少量多品種生産が必要なため、多額の研究開
発費を必要とする現在の遺伝子組み換え技術に向かず、それぞれの国の地場の有力種子企業
を買収、提携することで地場の固定種を使った生産からハイブリッド種子農法への転換を促
し市場拡大を目指しているという。

また、気候変動によって頻発する旱魃による不作を低減するための乾燥耐性をもった種子
開発があり、既にMonsanto とBASF が共同開発した乾燥耐性トウモロコシは商業栽培が目前
に迫っているとのこと。穀物生産大国の中国でも水不足は問題となっており、このような種
子の商業化は、市場拡大はもちろんのこと、農作物の供給不安や食価格の高騰を回避すると
期待されている。もうひとつは、従来の製品が生産者側の利点(コスト、生産性等) に重き
を置いていたのに対し、消費者側の視点に立ち、遺伝子組み換え技術によって商品に「健康」
という付加価値を付けた種子の開発が行われている(「オメガ3 ダイズ」は、オメガ3 脂肪
酸という魚から抽出して健康食品に使う油を、ダイズから採る油で代用するもの)。

ここで見たように、種子産業は地域と領域の拡大によって今後も成長が続くと見込まれてお
り、そのペースや方向性を左右する要素には、種子メジャーの動きに加え、市場として拡大
が見込まれる中国の当局による国内種子産業育成や外資規制などの動き、さらには穀物の需
給バランスやそれに伴う食料価格の変動などが想定されるという。

 箱椅子

大規模気候変動の影響は大きくなるにつれ、種子産業の研究開発はお手上げになることが考
えられ予断をもって対応できないことぐらいは素人でも納得いくことだが、来年も両極の解
氷が進むようならばこれは世界的非常事態を招来させることになるだろう。「チャイニーズ・
バタフライ」ならぬ「我が家のノウゼンカツラ事変」は思わぬ方向へと波紋を投げかけてし
まったようだ。今夜も「無知に栄えたためしなし」を戒めに、就眠することとしよう。
                                  

コメント
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