極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ヤンキースに学ぶ清盛

2012年08月27日 | 時事書評



 
【ヤンキースに学ぶ清盛】




大河ドラマ『平清盛』の視聴率が低迷していると彼女が言うので、そうなんだ。でもねぇ~、脚本が悪い
とは思えないなぁ、面白いよ、とテレビを見ながら返事する。今回は、日宋貿易拡大を目論み厳島神社の
大規模営造の実権争いにも勝ち抜き、頂点に立った清盛の心模様が描かれており、宮廷政治の時代考証へ
の腐心
が垣間見えるようで大変面白い。なかでも、ムロツヨシ扮する、歌人として名高く「よみ人知らず」
とし
て入集した『千載和歌集』の1首を含め勅撰和歌集に11首入集しているほどの平忠度の登場シーンの
シャープさが面白い。面白いがこれが視聴率と相関(費用対効果が悪い?)しないからなおのこと面白い。

                        



   行き暮れて木の下かげを宿とせば花や今宵のあるじならまし/『千載和歌集』

   さざなみや志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな/『千載和歌集』

   われのみやいふべかりける別れ路は行くもとまるもおなじ思ひを/『玉葉和歌集』

   たのめつゝこぬ夜つもりのうらみてもまつより外のなぐさめぞなき/『新勅撰和歌集』

   住吉の松としらずや子規岸うつ浪のよるもなかなん/『続後拾遺和歌集』

    あれにける宿とて月はかはらねどむかしの影は猶ぞ床しき/『風雅和歌集』

   恋死なん後の世までの思ひ出はしのぶこゝろのかよふばかりか/『新拾遺和歌集』



次回は「白河院の伝言」-清盛よ、みるがいい。のぼり切ったその果てを-ということだ。そこがどのよ
うに描かれる楽しみにしている。そんなことを考えていると、「イチローを覚醒させる妥協なきヤンキー
」で、球界には「ヤンキースは、金で勝ち星を買っている」という見方が根強い。確かに、年俸総額は

他球団と比べて飛び抜けて高い。しかし、そんなチームの選手らが、自主的な打撃練習で球拾いまでして
いる。イチローも移籍以来、折に触れてチーム体質の違いを口にしてきたと書いている。そして、「(ヤ
ンキースでは)プレーの中に、捨てられるものがない。常に集中して動かないと1個のフォアボールでも
のすごく大きくゲームを左右したり、塁に出るだけでそういう可能性が生まれたりするので、野球がちょ
っと違うなぁというふうに思います」「ひとつの成功がものすごく満足っていうか、喜びを生むし、ひと
つの失敗がものすごく精神的にこたえる」何がそう感じさせるのか。そんな問いにイチローはこう答えて
いる。「それはこのチームがずっと背負ってきた宿命がそうさせている」と。

  

勝ちを義務づけられたチーム。そのプレッシャーに、ホームでも遠征でもさらされる。4万~5万人の目
が常にそこにあるのだと。つまり、登りつめたその先に見える全景が、ヤンキースと平家というコントラ
から見えてくるものを想像する楽しみがシンクロナイズというわけだ。さらに、その先をいえばいかにし
て崩壊・滅亡していくのかが興味あるところだが、市場や産業界には、
このようなドラマが日常茶飯事に
繰り返されるわけで、シャープ液晶大家の凋落しかり、テレビ受像器大国の家電メーカもしかりと。そこ
で大事なことは、春秋時代の孫子ではなく、ビジネス場面での新しい孫子の出現が求められているのだろ
う。下記の、太陽電池メーカや半導体メーカの現状がその好例だ。 

   
 

 日本国内の利権を狙いに、外国勢も虎視眈々と参入を狙っている。米国のサンエジソン、カナダのカ

 ナディアンソーラー、ドイツのソーラーワールドなども国内数カ所にメガソーラーを新設する計画を
 持っているようだ。さらに、情報筋によれば、中国上海に拠点を持つスカイソーラーが日本国内で数
 カ所メガソーラーの用地物色を行っている。同社はヨーロッパで実績があるが、原発がほとんど止ま
 っている日本にチャンスありと見て進出を計画する。あろうことか、インドに拠点を持つモーザーベ
 アもまた日本国内でメガソーラーの用地物色を行っているのだ(中略)こうしたメガソーラーフィー
 バーの一方で、セルそのものを製造する太陽電池メーカーはここにきて苦悩の色が強い。なにしろ、
 かつての太陽電池世界一企業であったドイツのQセルズが破産してしまったのだ。同社は99年に設立
 され、ドイツをはじめ太陽光発電に熱心であった欧州市場を主戦場にシェアを伸ばし、07年にはそれ
 まで長年太陽電池市場で首位を守っていたシャープを抜き、生産量世界一に輝いた。しかし、その後
 はサンテックパワーなどの中国勢や、コストの安い米国ファーストソーラーなどの猛追を受け、シェ
 アを一気に落とした。同じドイツの太陽電池モジュールメーカー、ソロン社も破産を申請、薄膜太陽
 電池で勝負する米国のユナイテッドソーラーオボニックも今年に入って会社更生法の手続きを申請し
 ている(中略)何しろ、世界の太陽電池の55%はドイツとイタリアが買っている状態であり、とても
 世界すべてで均一に普及しつつあるという情勢ではないのだ。風力発電、さらには地熱発電といった
 強力な新エネルギーのライバルも存在する(中略)サンテックパワーも、インリーも、JAソーラーも
 みな軒並み赤字が続いている。ニッポンの御三家といわれるシャープ、京セラ、三洋電機もまた収益
 面では苦しく、のたうち回っている。太陽電池はいまや、メモリー半導体や液晶パネルのようにコモ
 ディティー化が進み、誰も儲からないビジネスに突入しつつあるのだ。この苦境を脱出するためには、
 やはり低コストで製造できる技術の確立、新材料を採用したパフォーマンスの上昇などが待たれると
 ころだろう。

                 泉谷渉「わかってきたぞ、太陽電池の光と影」、半導体産業新聞

  

 日本メーカーは携帯電話、パソコンのいずれの分野においても世界的なスタンダード製品を出せなか
 った。もちろん現在、大フィーバーのスマートフォン、タブレット端末においても世界の後塵を拝し
 ている。垂直統合構造で戦ってきた日本勢は、電子機器のセットメーカーがまずヒット製品を出し、
 これに使われる半導体を同じ社内で量産というカルチャーの中にいた。しかしながら、最終セット機
 器で大ヒットを出せない限り、これに追随する半導体メーカーはどうしても勝てないという構造にな
 る。つまりは、日本のシステムLSIは弱くなった日本のエレクトロニクスの土壌の中にあり、世界の
 流れから取り残されたのだ。日本でしか通用しないシステムLSI技術では、どうやってもグローバル
 展開はできなかったのだ。

               泉谷渉「世界で最も多い半導体はシステムLSIだ」、半導体産業新聞


この2つの商品は、デジタル革命渦中のコア商品なのだが、そこからの撤退は、世界のリーダを放棄する
のに等しいが、そのことを(下線箇所)を踏まえ戦略・戦術を練り直しリベンジし、ベスト・マッチさせ
る方策はそう簡単にでそうもないこともわかっている。ヤンキースの例でいえば球場に足を運ぶ観客を満
足させる何かであり、その何かのゴールに向かって他を圧倒するパワーが必要なことは誰しもわかってい
ることだ。ここで、確認しておこう。いつしか、ターブをつくり、逆立ちしてはいないか? あるいは、
事なかれ主義に陥っていないか? さらには、ゴールの設定に間違いはなかったか? と
 

 

コメント
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