気分はガルパン、ゆるキャン△

「パンツァー・リート」の次は「SHINY DAYS」や「ふゆびより」を聴いて元気を貰います

知波単学園チームの特二式内火艇カミ

2019年07月02日 | ガールズ&パンツァー

 6月15日より上映中のガルパン最終章第2話に関して、6月29日より公式および協賛企業のサイトにて動画およびアニメ劇中シーンの数々が公開されています。公式サイトでは新登場の戦車やキャラクターの紹介も追加され、次第にストーリーの全容が明らかにされつつあります。
 そのなかで、最も注目を浴び、かつ人気の的となっている戦車が、上図の上映特典ポストカードデザインにも登場している知波単学園チームの特二式内火艇カミであるようです。

 周知の通り、知波単学園は日本軍ティストのチームですから、第二次大戦中に日本軍が実戦配備した戦車を使用しています。劇場版においては九七式中戦車チハの2種および九五式軽戦車が登場し、対大学選抜戦にて見事な戦いぶりを見せました。
 今度の無限軌道杯においては、1回戦でコアラの森学園を下し、2回戦で大洗女子学園と対決しています。その参加戦車数10輌のうちの2輌が、新登場の特二式内火艇カミでした。

 

 知波単学園が特二式内火艇カミを保有しているであろうことは、既に劇場版公開の段階で上図の公式イラストが公開され、画集「戦車のよこみち」に収録されていた時点で知られていました。それ以前に、劇場版の対大学選抜戦にて、公園内のプールにて相手を迎撃した九七式中戦車チハが、プール内に潜航して待ち伏せし、浮上して水上からの砲撃を展開するシーンがあり、それが特二式内火艇カミの運用法と大して変わらなかったのでした。

 それで、知波単学園チームには、川や池などでの水上戦のノウハウがもともとあるのだろう、と個人的には推察していました。特二式内火艇カミも保有しているのであれば、西絹代や玉田や細見たちが池での待ち伏せや水上砲撃戦に通じていてもおかしくない、と思ったものでした。

 なので、私自身は上図の公式イラストを大真面目に受け止めており、いずれはアニメシリーズに登場するだろう、と期待していました。なにしろ本来は日本海軍マニアですので、日本海軍が開発した特別車輌つまり「特車」にあたる特二式内火艇カミには、ぜひ出てもらいたい、いや出てきて欲しい、と願ったものです。

 

  なので、第2話にて池の水面に表れて砲撃戦を展開した特二式内火艇カミの勇姿に接した瞬間、猛烈な驚きと感動で全身が固まり、頭の中が真っ白になりました。キューボラおよび排気筒の頂部が白く塗られているのにまた感動し、「連合艦隊法令第50号・・・」と口に出しかけて危うく右手で抑えました。

 帝国海軍の軍艦艦艇が艦橋やマストトップを白く塗装したのは、いわゆる対空識別表示の一種です。昭和17年5月24日に連合艦隊司令長官の山本五十六が発した機密電にて、連合艦隊法令第50号として戦索の改訂が命じられ、戦艦、巡洋艦、航空母艦の3艦種において前後の檣頂を白灰色に塗装せよ、との内容が追加された経緯にちなみます。
 おそらく、直後に予定されていたミッドウェー攻略作戦に備えての処置でしょうが、その戦策のオマージュがガルパンの特二式内火艇カミにて表現されているわけです。見ようによっては白波形の迷彩とも受け取れますが、それは側舷に長く施されているほうに相当するでしょう。

 

 御覧のように水面上を船のように航行していますが、海軍では「内火艇」と呼んで小艦艇に分類し、数える際の単位も「隻」でした。上図は、中央に戦車本体を置いて前後にフロートを装着した状態ですが、戦車本体のみでも水上航行が可能です。

 現に、大洗女子学園チームとの接触において2輌の特二式内火艇カミが陸地へ上陸し、1輌が前部の分割式フロートを吹っ飛ばされたものの、辛うじて直撃をかわして再び池中に退避して航行に移っています。が、フロートが無い場合の乾舷は約50センチ程度しかありませんから、上図よりは沈んだ状態で進んでいました。そのあたりもきちんと描写しているところは、さすがにガルパンです。
 その後、2輌の特二式内火艇カミは、再び陸に上がって西絹代以下の戦車部隊本隊に合流していますが、1輌は前部フロートを失ったままですから、知らない方が見ると別の戦車に見えたかもしれません。

 

 そして前後のフロートを付けたままの1輌は、上図のように全体に迷彩が施されていることが分かります。夜中の密林内でのシーンなので、何色に塗られているのが分かりにくかったことでしょう。

 しかし、日本海軍マニアである私は、すぐに「帝国海軍の対空対潜迷彩の基本色かな」と察しました。いわゆる海軍航海学校の「船舶迷彩実験」報告書に基づく4種類の色の組み合わせが、戦時中の航空母艦の対空対潜迷彩に応用されたことはよく知られていますが、写真資料や米軍のカラーフィルム映像などでみる限りにおいては、二号色、二一号色、二二号色の3種のカラーがよく使われていたようです。特に二一号色、二二号色は「外舷21号色、外舷22号色」の通称のほうがよく知られているでしょう。

 そして知波単学園の特二式内火艇カミにおいては、車体およびフロートの上半分ほどに二一号色、二二号色が史実の航空母艦の対空迷彩パターンのような形で塗られているのだと分かりました。ですが、下半分の暗い色は何色であるかが分かりにくいのでした。五号色かな、と考えたのですが、それよりはもっと暗い色に見えました。

 

 それで、上映パンフレットの下巻に掲載されている、上掲の公式設定図を見ました。側舷に白波がペイントされており、その下は茶色系のカラーでした。
 おそらく、昭和19年10月25日の比島エンガノ岬沖海戦における航空母艦「瑞鶴」および「瑞鳳」の飛行甲板の一部に残されていたとされるリノリウム板のカラーに通じるのでしょう。「瑞鶴」の乗組員だった方の話によれば、「土色」だそうです。

 知波単学園の特二式内火艇カミにおいては、この「土色」カラーの帯が後部フロート上面に二条に引かれており、さながら航空母艦「天城」の飛行甲板上の茶色の道路状迷彩を連想させます。
 「天城」の乗組員だった方の話によれば、昭和20年4月に瀬戸内海の三ツ子島沿岸にて仮泊偽装の際、飛行甲板に田んぼとあぜ道を描いて、民家にみせかけた建物も建て、さらに樹木を並べたそうです。その時のあぜ道が「土色」みたいな色で塗ってあったそうです。これもたぶんリノリウム板のカラーに近いのかもしれません。

 以上の知見により、、知波単学園の車輌において、陸軍の九七式中戦車や九五式軽戦車では陸軍式の迷彩、海軍の特二式内火艇カミでは海軍式の迷彩、というように明確に表現されていることが理解出来ます。ガルパンらしい、細かくマニアックなこだわりようです。

 ちなみに、私自身は、20代の後半において太平洋戦争戦跡の巡拝および遺骨収集事業に何度か参加したことがあり、パラオ諸島のバベルダオブ島およびコロール島に残る特二式内火艇カミの本物の残骸にも接しています。
 その際に、特二式内火艇カミの搭乗兵士だった方に話を聞いたことがあります。残骸が赤錆に覆われて本来の色が分からなかったので、本来は何色だったのかを訊ねたところ、「カミは艦艇なので、軍艦と同じように呉か横須賀の工廠の指定灰色に塗られていた」という説明が返ってきたのでした。

 なので、知波単学園の特二式内火艇カミの迷彩は、ガルパン独自の設定であることが分かります。模型で再現する場合の塗料は、基本的にはクレオスのMr.カラー特色セットNo.CS642「日本海軍・日本船舶 迷彩色」と、62番の「つや消し白」があれば事足りるだろうと思います。
 なお、No.CS642は入手しにくいかもしれませんので、その場合は単品で604番の「外舷21号色」、605番の「外舷22号色」、606番の「リノリウム色」を揃えると良いでしょう。
 ですが、見ようによっては、少し調色が必要かもしれません。そのあたりについては、また別記事にて考えてみたいと思います。

 


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