通常、私達が当たり前のように利用している市区町村などが発行する証明書、例えば戸籍謄本や住民票、或いは、卒業証明書などの私文書を海外の機関に提出する際に、その証明書が本物であることを証明しなければなりません。
そうしないと、その外国機関では、日本語で書かれたその文書が本物であるかどうかの判断が出来ません。
それを、「確かにそこに押印されている印は本物です。」と証明する手続が公印確認(AUTHENTICATION=本物確認という意味です。)という手続です。
外国案件を扱う行政書士等であれば、至って常識的な手続ですが、一般の方々にとってはなかなか馴染みの少ない手続なのかもしれません。
例えば、出生、婚姻、離婚、死亡など個人の民事的な事項のほとんどが家族単位で記載されている世界的に見ても珍しい制度である戸籍謄本を外国の機関に提出する場合ですが、この戸籍謄本を外務省領事局領事サービスセンター証明班に持参(郵送も可)すると翌日にはこの公印確認証明印を押印してくれます。また、認証不要条約に加盟している国(先進工業国が多い)の機関に出すのであれば、付箋による証明(アポスティーユ)を貼り付けてくれます。
公印確認証明だけの場合には、更にその提出する外国機関の在日領事館(例えば中国領事館など)に持参して、それが確かに日本の外務省による公印確認証明であるという証明を付けて貰います。そして、更にはその国の本国外務省でその証明が確かに在日領事館によるものであるとの証明書を添付して貰うという、大変面倒なプロセスが必要です。
ところが、アポスティーユが付いた文書では、原則としてそのままで海外の機関に提出できる大きなメリットがあります。
なお、添付する翻訳文に関しては、翻訳者自らが公証役場で宣誓供述して原本に添付する場合と、提出先領事館に出向いて宣誓供述する方法が一般的です。しかし、国によっては翻訳者資格のある者が宣誓翻訳しなければ有効とならない国もあるようなので注意が必要です。
また、私立学校などの卒業証明書などの私文書の場合には、その学校関係者が卒業証明書などを最寄りの公証役場に持参して、「確かに、真正な証明書です」との宣誓供述をして、その公証人の所属する地方法務局長の公印を受けて貰ってから前述の手続を行うことになります。
もっとも、東京・埼玉・茨城・栃木・群馬・千葉・長野・静岡及び新潟などの都県では、公証人の認証と地方法務局長による公証人押印証明が一度に入手できるようになっていますし、東京(他県は知りません。)などの公証役場では、認証不要条約に加盟している国に出す卒業証明書などの私文書の宣誓認証をして貰うと外務省に行くこと無しに付箋による証明(アポスティーユ)を添付してくれます。
外国へご家族と共に長期赴任される方々、留学される方々や外国人との離婚などの身分関連手続などをされる方々、或いは、翻訳者の方々などは、この手続は必ず必要となるようです。