寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

何事も表には裏がある?(20131109)

2013年11月09日 21時59分50秒 | 日記・エッセイ・コラム

 筆者の友人(Aさん)の話です。 Aさんは元来争いごとを好まない性質である。それは子供の頃から身体が小さくケンカをしても大概の相手には大略力負けをしてしまうからである。しかし体型と柔和な顔に似合わず芯は太く負けず嫌いなところもある。
 そんなAさんはあるボランテア団体に所属していた。この団体に入って集まってくる方々は、大方60代後半の婦人たちであるという。毎月初めの日曜日午前10時から2時間ほど定例会が開かれるという。そこではその月に行われる活動のあらましが説明される。ボランテア活動に参加する人たちは仲間と毎月数回は顔を合わせるのでいろんなお喋りをすることがある。しかし月に一回だけ定例会にやってくる人たちの中には、久しぶりに会う仲間といろんな話に花が咲き、世話人の説明など全く聞かないで自分たちの話に夢中になっている人たちがいる。世話人が途方に暮れることもしばしばある。
 ある日いつものように会員が集まって世話人の話が始まり、何回か「お静かにお願いします」という注意喚起をしたにもかかわらずお喋りを続けている。Aさんは突然立ち上がりお喋りに夢中になっている人たちの前に立ち黙ってその人達を見ていた。1,2分も経ってから、Aさんがいることに気がつき、不思議なものを見るような目つきで「何かご用ですか」と聞いた。Aさんは「あなた方は何をしにここにいらっしゃったのですか」と尋ねた。お喋りをしていた人たちの何人かがAさんをにらみつけて足音高くその場を去って行ったという。残った人たちは「申し訳ありませんでした」と言って世話人の話を聞いてボランテア活動に熱心に参加するようになったという。
 その集まりに参加していた他の人たちはAさんに感謝の気持ちを表した。Aさんは、「何か勘違いがあったようなので出過ぎたことをしてしまいました」と言った。
 後の噂話で、Aさんはしっかり者だと言うことになっていた。Aさんは自分のことを次のように話していた。
 私は自分でも思うのですが、決してしっかり者でも無く、出しゃばりやでもありません。ただ父がいつも言っていたことを出来るだけ守ろうと思っているだけです。      私が小さいときに父は私を膝に乗せて、
「お前は身体が小さいけれどな、決して卑屈になってはいけないぞ。卑屈というのはお前にはまだ難しいだろうが大きくなったらいつかわかるようになる。いいか、お前は身体と同じ大きさの人間になってはいけない。わかったな」
  私(Aさん)は父の言っていることをその当時は全く理解できなかった。しかし成長するにつれていろんなことを経験し、父の話してくれたことを理解できるようになってきた。そして、今この年になって、父の言っていたことを子供たちに言葉を換えて伝えたいと思うようになりました。
 Aさんははにかむようにこの話を筆者に言ってコーヒーカップを口元に持って行った。


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