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056cut:どちらが楽しく働けるか

2018-12-03 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
056cut:どちらが楽しく働けるか
――09scene:プロフェッショナル魂
影野小枝 その日の午後九時半。漆原さんはカウンターでラーメンを食べています。他にお客さんはいません。
漆原 おいしかったよ。ごちそうさま。
料理人 お客さん、昼間もきてくれましたよね。まいど。
漆原 聞いてみたいことがあったので、質問してもいいかい?
料理人 スープの秘密以外なら、構わないけど……。
漆原 変な質問で申し訳ないのだけど、どうしても聞いてみたくて。なぜあっちの店を辞めたの?
料理人 お客さん、週刊誌の記者なの?
漆原(名刺を差し出し)いやいや、薬屋さんだよ。
料理人 薬屋さんが何で?
漆原 あなたに興味を持った、っていえばいいかな。
料理人 もの好きっているんだね。あっちの店を辞めたのは、金にうるさくなったからかな。もうかってくると、もっともっとと強要してくる。いちいち客の好みに合わせるな。時間のムダだ。スープも麺も大量に用意しろ。そんなときに、この店のオーナーから声がかかったのさ。お客さんに、おいしいといってもらえる店にしたいって。
漆原 向かいに移ったのは、たまたまだったの?
料理人 そう。別に前の店を恨んじゃいない。問題はどちらが楽しく働けるか、の選択だけだよ。お客さん、今度は濃い目のスープをためしてごらん。すべてのお客さんが濃い目を希望すると、売上は2割ほど落ちるけどね。お客さんがスープまで飲み干してくれたら、こんなうれしいことはないのさ。
漆原 ごめん、スープ残しちゃって。
料理人 いいってことよ。だから今度は、濃い目で挑戦してみてよ。
漆原 楽しく働けるか、か。いい言葉だね。
料理人 じゃあ、後片づけするので、またきてちょうだい。

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