山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

190:一緒に暮らした痕跡

2019-11-09 | 小説「町おこしの賦」
190:一緒に暮らした痕跡
 しっぽを丸めた恭二は、札幌のマンションへと戻った。チャイムを鳴らした。応答はない。カバンから合い鍵を取り出し、鍵穴に差しこむ。動かない。扉の上の、ネームプレートを見上げる。あるはずの、「瀬口・浅川」の名前はなかった。
 不思議に思った恭二は、管理人室へ急行する。留美は先週引っ越した、といわれた。行き先は、聞いていないという。携帯をかけた。つながらない。なぜ黙って消えてしまったのか、恭二には心あたりはない。混乱する頭で、おれの荷物はどうしたのだろうか、とふと思う。

 行き場を失った恭二は、釧路行きの夜行バスに乗ることにする。バスのシートに身を任せると、どっと疲れがやってきた。二間のマンションは、一人暮らしにはもったいない。留美はそんな気持ちで、どこかに転居したのではないか。落ち着き先は、いずれ知らせて寄越すつもりなのではないか。そんな思いは、携帯がつながらない現実に気づくと、粉々に砕け散ってしまう。そして姿を消した、という確信が支配してくる。

 実家では事情の知らない、両親に迎えられた。
「札幌から、どさっと荷物が届いている」
 二階を顎で示して、父がいった。恭二は脳天に大きな石が、落ちてきたような衝撃を受けた。留美からの最後通牒(つうちょう)。できるだけ冷静を装って、恭二は食卓椅子に腰を下ろす。恭二は手短に、現在を伝える。
「おれには、営業職は向いていなかった。だから辞めてきた。落ち着いたら、どこかで調剤の仕事を探すから心配いらない」

それだけを告げると恭二は、二階の自室に上がった。信じられない光景を目にした。狭い部屋に、ベッドと机が二組並んでいる。段ボールも、山積みにされていた。開ける気にはならない。
以前からのベッドに横になると、急に悔しさがこみ上げてきた。それは留美に向けられたものではなく、ふがいない自分に向けられたものであった。

ふと思いついて、恭二は留美が勤めていた会社へ電話をかけた。所属部署がわからないので、人事部へつなげてもらった。浅川留美の名前を告げると、「どちらさまですか?」と質問された。恭二はとっさに「兄です。ちょっと急用があって」と告げた。
しばらく間があって、男性が「浅川はアメリカ支社へ、転勤になりました」と答えた。
謎は解けたが、なぜ電話の一本もくれなかったのかは、不可解なままだった。留美が失踪し、一緒に暮らした痕跡だけが、今この部屋にある。

127:企業が放つ不発弾

2019-11-09 | 新・営業リーダーのための「めんどうかい」
127:企業が放つ不発弾
――第10章:人間系ナレッジマネジメント
ざっと企業の放つ不発弾と不燃物のコストを計算してみたいと思います。

検証されていない定期人事異動:250万円×100人=2.5億円
定期集合研修+研修所維持費=1億円
ぶらさがり営業担当者:500万円×50人=2.5億円
部下育成できない営業リーダー:700万円×20人=1.4億円
活用されていない支店の会議室、応接室:1億円
活用されていない営業向けシステム、データベース:1億円

 営業リーダーには、「人間系ナレッジマネジメント」の勉強を徹底的に叩きこみます。ちなみに、コラボプランの「コラボレーション・プロジェクト」(CP)は、半年間(月に1回×6)かけて営業リーダーのレベルアップを図ります。

私が紹介した企業の不発弾・不燃物は、年間で約10億円になります。私はその予算で、営業リーダーのスタッフを雇うことを提案しています。また「CP」に投資すべきだとも、ぬけぬけと申し上げています。

営業リーダーの70%は、「多忙でこれ以上同行する時間がない」と答えています。同行の阻害要因はどこにあるのでしょうか。企業は検証しなければなりません。

『ぼくらの七日間戦争』映画ノベライズ版がいい

2019-11-09 | 妙に知(明日)の日記
『ぼくらの七日間戦争』映画ノベライズ版がいい
■昨日は古い仲間との集まりがあり、帰宅したのは午後10時半。したがって、起床は午前4時半にずれこんでしまいました。室温19度。パジャマの上から厚手のカーディガンを着込みました。着替えは部屋が暖まってからです。■原作・宗田理『ぼくらの七日間戦争』の映画ノベライズ版(角川文庫)は、伊豆平成の著によるものです。コンパクトにまとまっており、十分に楽しむことができました。
山本藤光2019.11.09