山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

189:辞めっちまえ

2019-11-08 | 小説「町おこしの賦」
189:辞めっちまえ
 二日酔いの翌日、恭二は吉村に呼ばれた。指定された喫茶店に入ると、タバコの煙が充満していた。吉村は恭二が座ったとたん、速射砲のようにまくしたてた。
「二日酔いで休む。業績は上がらない。おまえは怠け者だ。早いうちに見切りをつけて、しっぽを丸めて帰りな。おまえがいると、生産性がガタ落ちになる。一流大学の学士さんには、この仕事は向いていない。さっさと辞表書いて、退散することだ」
 退職勧告をされている。線香花火のように、頭の暗部で、何かが弾けた。返すべき言葉はなかった。線香花火の燃えかすが、抑止力の上に落ちた。
「わかりました。辞表は郵送します」
 絞り出すような声で、恭二はそう告げた。映画の最後の場面みたいに、「完」という文字が脳内を支配した。急に吉村があわてた。
「まあ、短気を起こすな。おれが同行してやるから、もう少し辛抱してみることだ」
 一度火がついてしまった恭二には、そんな言葉は受け入れられない。
「辞めさせていただきます。短い間でしたが、お世話になりました。足を引っ張って、申し訳ありませんでした」

 恭二はそう告げると、席を立った。「待てよ、瀬口」という声が、背中から聞こえた。おれは会社を辞めるんだ、と他人ごとのように思った。空しさとさばさば感が、同時に押し寄せてきた。

 アパートに戻り、辞表を書いた。大家さんのところへ行き、退去を伝えた。荷物は全部置いていくので処分してください、とお願いした。MRに未練はなかった。そして長崎にも、未練はなかった。
 おれは負け犬。落伍者だ。どんな顔をして、留美の待つ家へ帰ればいいのか。恭二は事態を意外に冷静に受け止めながら、このいきさつをどう物語ろうかと考えている。

126:廃止すべき

2019-11-08 | 新・営業リーダーのための「めんどうかい」
126:廃止すべき
――第10章:人間系ナレッジマネジメント
 営業リーダーを鍛えると、確実に業績は向上します。ところが、多くの企業は営業担当者への研修ばかりで、営業リーダーのレベルアップは考えてもいません。これはあまりにも、もったいない話です。

 私たちは、次のことを廃止すべきだと提言しています。

「プレーイング・マネージャー」
 営業担当者をレベルアップさせたいのなら、中途半端な体制では、絶対にダメです。人間はそんなに器用ではありません。2つの職務を、完璧にこなせる人はいません。

「ムダな提出物」
 本社からは、湯水のごとく通達が発信されます。それを読むだけで、毎朝2時間ほどを要しています。意味のない通達は、同行の阻害要因のひとつです。ぜひ考え直し、交通整理をしてもらいたいと思います。

「量的管理に使う日報」
 日報には、本当のことが、書かれているのでしょうか。自分自身の役に立たない日報に、営業担当者は真剣な対応をするのでしょうか。そんな日報を分析して、何がわかるのでしょうか。

「膨大なデータベース」
 本社はさまざまなデータを、提供してくれます。ところが、営業担当者はそれを検索する時間がありません。もったいない話だと思います。

「支店・営業所の会議室、応接室」
 月に1回しか使わない会議室。ほとんどお客さんがこない応接室。もったいないと思います。営業担当者のための、知的な空間に改善できないものでしょうか。

「一律の集合研修」
 集めて、教える。もちろん、一時的な刺激は受けます。でも、持続する効果は希薄です。営業リーダーに、個別の指導してもらわなければならない時代なのです。

「唐突な同行」
 何度も指摘しているので、おわかりでしょう。

これらを廃止して浮いたコストを、営業リーダーに回します。営業リーダーには、専用のスタッフをつけ、すべての雑用を肩代わりしてもらいます。

アイリッシュ『幻の女』を孫への推薦作に

2019-11-08 | 妙に知(明日)の日記
アイリッシュ『幻の女』を孫への推薦作に
■ただ今、午前2:21。室温21度。本日は企業人時代の後輩たちとの宴席があります。家を出るのは午後2時なので、それまでは昨日に続き、書棚の大改造。日本人作家は昨日並べ終えました。今日からは外国人作家の選択です。中学生に読ませたい作品を選ぶことになります。■中学生に読ませたい海外作品を「あ行」から、確認しています。最初の作品は、アイリッシュ『幻の女』(ハヤカワ文庫)に決めました。本書は「山本藤光の文庫で読む500+α」で紹介しています。それをコピーして、文庫にはさみこみました。さて中学生の孫たちは、手にとってくれるでしょうか。
山本藤光2019.11.08