炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

原子力発電の再稼働

2012-04-17 13:26:04 | Weblog
 いま原子力発電所の再稼働について国家レベルでの検討が行われている。なかでも関西電力による大飯原子力発電所の再稼働に関して、野田内閣は再稼働を認める閣議決定をくだして、各地方自治体に説得を行っている。

 国民に対するアンケート調査では、原子力発電所の再稼働は安全性が確保されていないということから反対意見が多数を占めている。そのこともあるのか、橋下徹大阪市長は声高に原子力発電の再稼働に反対を唱えている。多くの世論を引き寄せ、橋下軍団の議員を国会に送り込む、またとない機会のように映る。世論の政治的な利用のもとに、橋下市長は国家政権まで奪取するような演説を行っている。

 筆者は、青さんと同様に原子力発電所の安全性は信頼していない。巨大地震などの災害もさることながら、ある国が人工衛星打上実験と称して、原子力発電所にミサイルをわざと失敗させて粉砕破片で直撃する可能性も否定できない。
 およそヒトが建造したシステムとか構築物などに、絶対安全はない。絶対的な安全性がないから、原子力発電の再稼働を中止しなければならないということは理論的には正しい。世論もその理論的な正しさからの反対意見が大半であろう。筆者もその理論的な正しさを基にすれば、原子力発電の再稼働には反対である。

 冷静に原子力発電が行われるようになった歴史的な経過をたどってみよう。
 日本国は小資源国である。
ダムを建設して電力の供給を水力発電に依存した時代もある。しかし高度経済成長に伴い工業の根幹を支える電力需要がたかまり、水力発電の開発が限界に達して火力発電が基盤となった。
 家庭でも電力需要が高まった。
電気冷蔵庫、電気釜、電気洗濯機が普及し、ついでクーラー、カラーテレビなどがゆきわたり、いまやオール電化の家庭まで出現している。
 需要の伸びと共に、石油とか石炭、天然ガスを用いる火力発電だけでは不足し、さらに電力がコスト高になることから原子力発電を導入して安価な電力の供給を行う必要性があった。福島第一原子力発電所の事故により教えられることは、ボブとか青さんも鋭く指摘しているように安全性の面からすると技術的には未成熟なまま原子力発電所を建設した。このとき電力供給コストをできる限り押さえるために、当時は地震・津波などの災害は少なめに想定した。

 日本は原子爆弾被爆国である。
 いかに平和利用といえ国民は、原子力発電が巨大なエネルギーを保有することから、災害発生の疑心暗鬼をぬぐいきれなかった。
当時の政府は、国内の経済発展のためには十分な電力供給を行う必要性を認識し、原子力発電は安全であるとして建設に着手した。原子力発電の安全性に疑問を持つ市民からは建設反対運動があった。いまの原子力発電の再稼働と同じ状況に思える。
 市民の反対運動をかわすこともあったのか、原子力発電所に関する技術的な事項は極端に秘密主義になっている。好意的に見れば、弱点を暴露すれば、テロの標的になることをおそれたからかも知れない。
 原子力発電の開発は密室で行われるようになり、安全性については「充分配慮してあり、心配いりません」と広報を行って原子力発電所の建設を進めて、充分な電力の需給をまかなうことができるようになった。
 そのような歴史的経緯から、いまや原子力発電をすべて停止するとすれば、電力の需給を充分にまかなえない事態になっている。特に関西電力は大飯原子力発電が再稼働しなければ、電力供給が不足するらしい。
 ある政治家は「原子力発電の停止は日本国の自殺である」と極端な表現をしている。

 いま二つの選択肢があると筆者は考える。
 そのひとつは、原子力発電をすべて停止することである。
 どのような状況になるか想像してみよう。
 まずは東日本大震災の直後のように計画停電が行われることになる。暑い夏場にあっても冷房装置は使えない。交通機関も災害後のように間引き運転される。
 電気代金は、石油と天然ガスを使った火力発電のために高騰化する。電力の供給が低下するばかりでなく電気代も高くなることから工業力はますます低下する。当然ながら輸出製品が高騰化するために輸出が減少して貿易収支は悪化し、そのために食糧の供給も逼迫する。
 経済はインフレーションに陥ることになるであろう。

 いまひとつは、安全性に疑問が残るが原子力発電を必要最小限の範囲で再稼働することである。
 再度になるが絶対的な安全はあり得ない。
 ボブさんがいうように「おおむね安全」では大いに心配である。いつ、どこで巨大地震による災害が発生するか、そのことをおそれながら、またそのような災害が起こらないことを神仏に祈りながら、上記の様な事態を招かず、いまの豊かな国民生活を過ごすかである。
 原子力発電の稼働に十分な安全性を確保し、国民すべてが安心できるようになるためには、叡智を集めてさらに高い安全性をもつ原子力発電を再開発しなければならないであろう。

 いずれになるか。
 反対論が多く地方自治体の首長が原子力発電の再稼働に反対すれば前者になり、いまの野田内閣が英断を下せば後者になると推察する。
 いま日本国民は前者を選択し、困難時の再来を体験することは、歴史的な課程の一端として長い目で見れば、貴重な教訓になるかもしれない。
(納)