素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

ナウマンゾウの絶滅原因を探る(17)中本博皓

2020年05月09日 10時57分57秒 | ナウマン象と日本列島

 ナウマンゾウの絶滅原因を探る(17)

 

  絶滅したナウマンゾウのはなし(第三話)

 

 ナウマンゾウの過剰狩猟はあったか(その3)

 ハンター(狩人)が狙いをつける獲物は、群れを離れて単独行動する若い雄ゾウだと思います。雄ゾウの場合は、雄だけの小さい群れをつくりますが、単独行動をするケースも多いようです。雄は15歳位になるとリーダの雌ゾウが率いる群れを出て放浪的なマイグレーションをすることが多く、「野らゾウ」の時期があるといわれています。

 一般に、野生ゾウにとって最もリスクが高いのがこの時期だといわれています。ハンターの格好の獲物となったであろう多くのナウマンゾウは、単独行動の成獣前の雄だったのではないかと思います。

 それでも雄ゾウならば、体重も3トン位には成長していたでしょうから、1頭を射止めた場合、火を使える狩人たちなら食せる部位の量は、優に2トンから2.5トン位はあったであろうと推測できます。

 狩猟肉はわれわれの知る今日の豚や牛の飼畜肉と違って、皮下脂肪があったにせよ、脂肪の割合は、全体量からすれば少なかったと思いますので、そんなにたくさん一度に食べなくとも腹持ちが良かったのではないでしょうか。

 後期旧石器人は、すでに火を利用して狩猟・採集生活をしていたことは、考古学的にも明らかです。食料は動物だけでなく木の実や木の芽、野草なども食していたと考えられます。したがって、ナウマンゾウやオオツノジカの大量絶滅を招くような過剰狩猟(オーバーキル)をしていたとはとても考えられないのです。

 むしろ狩猟の困難さ、リスクの大きさを考えれば、食料資源を絶やさぬような生き方をしていたのではないか、また本能的にもそういう狩猟行動をとっていたのではないかと思います。

 確かに、アリゾナ大学のポール・マーチン(Paul.S.Martin:1928-2010、動物学者)は、40年前のことですが、ゾウやマンモスなどの大型動物だけではないのですが、後期更新世の末(最終氷河期の末期で、4万年前~1万年前)には、北アメリカに生息していた大型哺乳類が、人類の過剰な殺戮的狩猟で、大量に絶滅してしまった、と説いています。

 わたしは、それを真っ向から否定するだけの十分な材料を持ち合わせていませんし、また積極的に肯定出来る材料も持ち合わせていません。ただ、日本列島におけるナウマンゾウの絶滅問題となりますと、過剰狩猟に唯一の原因を押し付けてしまうことには、さまざまな側面から考えて否定的な立場に立たざるを得ないのです。