素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

絶滅した日本列島のゾウのはなし(Ⅱ)—消えたゾウたち、その謎を追う―(6)

2021年06月28日 15時56分00秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち
絶滅した日本列島のゾウのはなし(Ⅱ)
—消えたゾウたち、その謎を追う―(6)
 



消えたステゴドンの謎を追う(その1)

前回までは日本列島に生息していた長鼻目のゴンフォテリウムの仲間について扱いました。わたしのイメージとしては、ゾウは長い鼻と長い2本切歯そして大きな耳を持っている現生ゾウを思い浮かべてしまいますので、イラストで見るゴンフォテリウムの姿を見せられましても、これが本当にゾウと呼んでもいいのか頭を悩ませてしまうのです。

ゴンフォテリウムが絶滅して、その後大陸から日本列島に渡って来て、生息していたとされているのがステゴドン科やゾウ科の仲間です。

 古生物学者の教えてくれるところによりますと、ざっと今から500万年の間に日本には幾種類ものステゴドン科やゾウ科の仲間のゾウがいたそうです。たとえば、➀ツダンスキーゾウ600万年~500万年前、②ミエゾウ400万年~300万年前、➂ハチオウジゾウ230万年前~200万年前、④アケボノゾウ250万年前~60万年前、⑤ムカシマンモス100万年前から70万年前、⑥トウヨウゾウ70万年前~50万年前、そして⑦ナウマンゾウ40万年前(ないし30万年前)~1万2000年前頃ごろまで生息していました。
 また、マンモスについては北海道で12点の化石が、また島根県の日本海海底から1点が見つかっていますが、化石の加速器計分析による年代測定法では、4万年前から2万年前くらいまで生息していたと推定されています。

 生息年代は、凡そのもので発見された地層の地質年代から推定されていることが多いと思います。専門家によっても諸説あります。たとえば、アケボノゾウですが、250万年前から100万年前という説もあります。
 また、アケボノゾウの産地と知られる狭山市や入間市にも博物館があります。埼玉県立自然の博物館には、アケボノゾウの全身骨格標本や埼玉の奇獣と呼ばれるパレオパラドキシアの全身骨格標本の展示されていることでも知られています。

 埼玉県立自然の博物館には、発行している何種もの配布資料がありますが、よく読んで見ますとアケボノゾウの生息に関わる年代が3通りあることに気づきました。

 その1として、展示解説リーフレット「アケボノゾウ:学名Stegodon aurorae」の裏面右列で「アケボノゾウの生きた時代は、新第三紀鮮新世後期~第四紀更新世中期(約250万年前~60万年前)と考えられます」、と記されています。

 その2として、やさしい解説シリーズ(展示解説リーフレット)「アケボノゾウ:埼玉にもゾウがいた」では、「250万年~100万年前に生きていた」。とあります。そしてその3として、『埼玉の自然誌』「ゾウが来た道」として、54頁と55頁で「アケボノゾウ」が特集されています。「アケボノゾウは今から250万年ほど前から120万年ほど前まで日本に生息していました」、と解説しています。狭山市博物館によりますと、県立自然の博物館と同じ、「1985年(昭和60年)に笹井ダム上流の入間川左岸の崖から」発見された化石は、約170万年前のアケボノゾウの骨格化石なのですが、今から250万年前から100万年前に生息していたアケボノゾウの仲間として展示されています。

 このように、同じ公立博物館の資料でさえ、アケボノゾウの生息年代は、アケボノゾウの化石が発見された地層の累重の分析によって、専門家の間でも若干の差異はあると思います。

 しかし、「ある地域で見られる地層の積み重なった順序と、それらの地層ごとに見つかる化石を調べ、どんな種類の化石がどんな順番で見つかるかをしらべます。1か所の研究では、それほど長い期間の化石の変化を追うことはできません。しかし、このような研究を多くの地域で行い、それらの結果をつないでゆくことで、長い地球の歴史の中で、どんな種類の生物が現れ消えていったかがわかる」(樽野博幸:大阪市立自然史博物館「○○年前はどうしてわかる」)、のだそうです。

 その根拠となる法則が、地質学者や古生物学者の地道な研究で明らかにされています。その一つが「地層累重の法則」であり、二つ目が「化石による地層同定の法則」と言われる法則です。
前者の法則では、上下に積み重なった地層においては、上位の地層程新しい、と判断されます。

 後者の法則では、発見された場所が離れていても、同じ種類の化石が発見された場合、その地層の時代は同じであると見なされます。それでも年代の推定には差異が生じてくるところが地質学や古生物学のむつかしさであり、また面白いとこでもあるのだと思います。