素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

始祖鳥について(2)

2023年11月25日 11時18分28秒 | 絶滅と進化

            

              始祖鳥について(2)

 

 

  始祖鳥の標本について

 

 前回、「始祖鳥について(1)」では、始祖鳥の「ベルリン標本」のレプリカを掲載しましたが、わが国の博物館で展示されている始祖鳥の標本としてもこの化石標本が多いように思います。

 確かに、最初の記載標本は、「ロンドン標本」ですが、いろいろ調べてみますと、ここに掲げた「ベルリン標本」が始祖鳥の化石標本として評価が高いように思います。

 本稿に掲載した「ベルリン標本」は、群馬県多野郡神流町中里地区にあります「神流町恐竜センタ-」に展示されているものを使いました。その理由は、センター内に「写真撮影自由」という掲示が出ており、個人のブログで紹介する程度なら、敢えて許可をとらなくても問題ないと判断したからです。

 始祖鳥の標本は、2014年までに12体が発見されています。因みに、最初の標本は、上述のように、ロンドン標本(London Specimen)、2番目がベルリン標本(Berlin Specimen)、3番目がマックスベルク標本(Maxberg Specimen)、4番目が、ハールレム標本(Haarlem Specimen)、5番目がアイヒシュテット標本(Eichstätt Specimen)、6番目がゾルンホーフェン標本(Solnhofen Specimen)、7番目がミュンヘン標本(Munich Specimen)、8番目がダイティング標本(Daiting Specimen)、9番目が、ブルガーマイスター・ミュラー標本(Bürgermeister-Müller Specimen)、10番目がサーモポリス標本(Thermopolis Specimen)、11番目が2011年に発見され個人の手元で保管、12番目が2014年発見され個人の手元で保管標本の12体です。

 

 ところで、わが国を代表する博物館、上野の国立科学博物館(略称:「科博」)に常設展示されている始祖鳥の標本は、本稿に掲載した「ベルリン標本」と全く同じレプリカです。「科博」の常設展示では、分類階級の綱名が「鳥綱」なってます。「鳥綱」としますと「鳩やすずめ」と同じ扱いになりますので、1億5000万年前の始祖鳥がすずめなど現生鳥類の直接の祖先のようにも考えてしまいます。分類学上「階級」の問題は難しく判断に迷います。もう少し時間をかけて調べて見たいと思っています。

 始祖鳥を最初に「鳥類」としたのは、英国の古生物学者、比較解剖学者のリチャード・オーウエン(Sir Richard Owen、1802-1892)であることは調べがついてますが、これまでにも世界の研究者の間で諸説あるようです。因みに、ネイチャーを出典とする分類「系統図」の一つには下記のような図も見かけます。

             ネイチャーネイチャー始祖鳥は砦はない に対する画像結果

 また、英国の生物学者トマス・ヘンリー・ハクスリー (Thomas Henry Huxley、1825–1895)は、鳥類の起源に関する研究では高名な学者の一人です。T・H・ハクスリーの鳥類の起源に関する研究は、同じく英国の高名な自然科学者で地質学者だったチャールズ・ダーウィン(Charles Robert Darwin , 1809 – 1882)による『種の起源』が出版(1859)された直後から始まったと言われています。

T・H・ハクスリー は、チャールズ・ダーウィンの自然選択に基づく新しい進化理論に対して厚い信頼をおく英国の生物学者でした。また、彼は、鳥類と爬虫類の間の移行化石としての始祖鳥に注目したようです。

 「比較解剖学の基礎」で知られるドイツのカール・ゲーゲンバウアー (Karl Gegenbaur、1826-1903)やコープの法則で知られる米国の古生物学者で比較解剖学者、エドワード・ドリンカー・コープ(Edward Drinker Cope、1840-1897)による示唆をもとに、T・H・ハクスリーは、1868年から始祖鳥と様々な先史時代爬虫類との詳細な比較を行い、ヒプシロフォドン(Hypsilophodon:約1億3,000万年~1億2,500万年前、中生代白亜紀前期の英国に生息していた言われている恐竜)やコンプソグナトゥス(Compsognathus:1億5000万年~1億4600万年前のジュラ紀後期に生息した恐竜で、フランスやドイツで発掘された)のような恐竜類と最も類似性があることを明らかにしています。

 とくに1870年代後半に発見された始祖鳥の象徴的な「ベルリン標本」は爬虫類的な歯を兼備していたことに注目しています。E・D・コープと同じように、T・H・ハクスリーは鳥と恐竜の間に進化上の関係性があることを解明したともいわれています。

 

 始祖鳥が現生鳥類の祖先であるかどうか、また分類学的に始祖鳥が現生鳥類(例えば、鳩やすずめなど)と同じ「綱名」、同じ「目名」でいいのか、始祖鳥の標本(Specimen)を観察したとき難しい問題を突きつけられた思いです。

 最近、山﨑優佑氏の論文「始祖鳥は飛べたのか?現生鳥類を参考にした始祖鳥の研究」を読む機会がありました。当該論文で使われている下記の図を見て大変参考になりましたが、同時にいろいろ考えさせられています。。

            

          出所:山﨑優佑「始祖鳥は飛べたのか?現生鳥類を参考にした始祖鳥の研究」(2020)による。