素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

絶滅した日本列島のゾウのはなし(20)

2021年01月26日 11時44分58秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち
       絶滅した日本列島のゾウのはなし(20)


   3.アケボノゾウが「日本固有」と言われるのは


 もう大分前のことですが、日本古生物学会の『化石』(73、2005)に、神奈川県立生命の星・地球博物館の学芸員樽創さんが「ふぉっしる」欄に、日本固有のゾウ「アケボノゾウ」と言う論稿を記載されているのを読んだことがあります。大変興味深い内容でした。

 アケボノゾウの標本に関しては、本ブログでも何度か扱ったことがありますが、1918年の松本彦七郎博士の論文が基になっており、大変重要なのです。なぜ重要かと言いますと、松本(1918)論文は、松本彦七郎博士によって「和名:アケボノゾウ(学名:Stegodon aurorae;ステゴドン アウロラエ)」と言う「種」が記載された論文だからです。

 また、松本博士の研究によりますと、これまで、このアケボノゾウを含め、仙台付近から北上低地帯にかけての地域において、中新世(2300万年前~500万年前)中期から更新世後期(12万6000年前~11700年前)頃に生息した多種多様な長鼻類の化石が産出したことが明らかにされています。それら長鼻類の最初の記載はいずれも松 本博士によるものだということが学会(第23回化石研究総会・学術大会講演抄録参照)でも報告されています。

 本稿でもアケボノゾウと言う和名を使っていますが、正確に表現しますと分類学上のアケボノゾウはゾウ目ではありますが、ゾウ科には属しません。

 上述のように、アケボノゾウの学名はStegodon auroraeでありまし、われわれが一般に呼ぶゾウやマンモスとは異なる「科」「属」に分類されています。すなわち、ステゴドン科ステゴドン属に分類される古生物なのです。また、「種」はアケボノゾウ(S.auroraeと記載されています。ただ長い鼻を持っていますから「目」は、長鼻目(Proboscidea)で分類されています。したがって、「目」はナウマンゾウや現生のゾウと同じです。

 さて、アケボノゾウは以下のように日本の至る所で発見されておりますが、発見された当初はその都度、その発見場所等の名が付けられていました。したがって、アカシゾウ、スギヤマゾウ、タキカワゾウ、ミツゴゾウ(ショウドゾウ)、カントウゾウなどと呼ばれていたことがありました。アカツキゾウもアケボノゾウと全く同種です。今日ではどれもアケボノゾウと呼ばれています。

 ではどうして日本『固有』のゾウと言われるのかその理由ですが、それは広大な大陸から、狭い島嶼から成る日本列島に渡来したコウガゾウの一種が、百万年単位の歳月を経て餌となる草木の少ない狭い島でも生きられるように島嶼化と言う進化を遂げ、小型化したことで、日本『固有』の種に変異したのではないかと考えられます。

 アケボノゾウの大きな特徴は、ステゴドンとしては体高が1.8m、体長5m以下、重さ2〜2.5トンと現生のアジアゾウよりも小型だったと推測されています。

 古代ゾウと言われるステゴドンの中でも特に大きかったコウガゾウの産地は中国大陸であり、中国甘粛(かんしゅく)省の合水(ごうすい)県辺りに生息していたと言われています。その時代は、新生代第三紀鮮新世(およそ400万年前ごろから300万年前ごろ)と推測されています。

 コウガゾウゾウの大きさは、全長が凡そ760~800㎝超、幅は235㎝、高さは380㎝、 重さは6000㎏~8000㎏、中には10トンを超えるような巨大なものもいたと言われています。埼玉県長瀞町の埼玉県立自然の博物館(ジオパーク秩父)には、コウガゾウとアケボノゾウを対比した模型が展示されていますが、大人と子どもの感じです。

 重さの測定は難しいようですが、本稿(12)でも述べましたように、現在わが国の動物園で飼育されているアジアゾウのこどもゾウで1000㎏を超えると聞いています。京都市動物園のおとなのアジアゾウ、メス44歳で3210㎏(2015年9月測定)、オスでは4000~5000㎏はあると言われています。東京上野動物園で2020年10月に初めてゾウの赤ちゃんが誕生しましたが、その体重は120㎏だっとそうです。現生のアフリカゾウでは、7000~8000㎏超の大きなゾウもいるそうです。