素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

人種とは・日本人の昔を探る(8):中本博皓

2020年06月29日 19時40分48秒 | 人種とは・日本人の昔を探る

       人種とは・日本人の昔を探る(8)

 

 

 人種と民族 (その5)

 民族、足元から考える(上)

 「民族」の英語として、ethnic group、 nation、 peopleなどと書いてあることが多いのですが、nativeは出て来ないようです。しかしraceは出てきます。

 ところで、日本の国語辞典で引いてみると、「民族」とは、「言語・人種・文化・歴史的運命を共有し、同族意識によって結ばれた人々の集団」のことで、「騎馬民族」「少数民族」などと言う使い方が紹介されているものから、金田一京助、金田一春彦らの編集した三省堂『国語辞典』(第二版、昭和35(1960)年)では、「同じ土地に起こり、同じ言語・宗教をもつ、同じ人種の集まり」とあり、用例として、「大和民族、民族衣装」を挙げてあります。

 また、新村出編『広辞苑』(第五版・岩波書店、1955)によりますと、「民族」にnationと言う英語を当て、「文化の伝統を共有することによって、歴史的に形成され、同族意識を持つ人々の集団」であるとし、さらに「文化の中でも特に言語を共有することが重要視され、また宗教や生業形態が民族的伝統となることも多い」、と指摘しています。さらに、人びとの社会生活に触れています。その基本的構成単位について、「一定の地域に住むとは限らず、複数の民族が共存する社会も多い。また、人種・国民の範囲とも必ずしも一致しない」、と説明してあります。

 要するに、「民族」とは、言語、宗教、生活様式、歴史、価値観など文化的特徴を共有する人々の集まり(集団)のことです。「人種」が生物学的特徴で分類しているのに対して、「民族」は文化的特徴で分類していると言うことになります。

 この「民族」に関する概念は、以上のように、大変幅広くしかも若干の曖昧さも拭えません。言語だけでも世界には数えきれないほどあります。英語を話すからと言っても一括りにするわけにはいきません。同じ言語を話す「民族」は大変多いですから、言語だけで同じ民族とは言えないでしょう。

 たとえば、日本でも通常は日本語を話していても、また日本の国民であっても、アイヌ語という独自の言語文化をもつアイヌ民族は、民族として日本の北海道に住む先住者であり、彼らは北海道という地域で長いこと生活を営むことにより,言語,習俗,宗教,政治,経済などの各種の文化内容の大部分を共有し,アイヌ民族のアイデンティティ(集団帰属意識) によって結ばれた人間の集団、共同体を築いてきたと言えると思います。

 アイヌ民族は国の長年の同化政策で使う言葉や生活様式を大きく変えることを余儀なくされました。

 われわれは余りにも自分たちのことを知らな過ぎやしないだろうか。各紙メディア等で大きく扱われましたから記憶にも新しいのですが、政府は2019年2月15日、閣議で、アイヌ民族を先住民族として初めて位置づけ、アイヌ文化を生かした地域振興策を行うための交付金の創設などを盛り込んだ新たな法律案(アイヌ文化振興法)を決定しました。アイヌの人々(民族)が、自分たちの国土で堂々と生きられる第一歩が踏み出せることになったのです。

 たとえば、Web記事『NHK政治マガジン』によりますと、いまから150年前、明治政府が「えぞ地」を「北海道」と命名し、開拓使が置かれてからはアイヌ民族の子どもたちが学校で日本語を学ぶようになりました。その結果、子どもたちは、自分たちの言葉(アイヌ語)を使う機会が減り、アイヌ民族でありながら自分たちの言語を使えない、また生活や儀式のためサケを川で取ることさえも禁止されてしまったのです。

  そこで、1893年(明治26年)に加藤正之助によって第五回帝国議会へ「北海道土人保護法案」が提出されたのですが廃案になり、その後、アイヌ自身も代表を送り法案成立を目指して国会に陳情したと言われています。耳障りの悪い法案ですが、それでも粒粒辛苦(大変な苦労)の末、1899年(明治32年)に制定されました。

 1899年、現在から約120年前、アイヌ民族を「旧土人」と位置づけ、同化政策を決定づける「北海道旧土人保護法」(明治32(1899)年)が公布されました。この法律は、1997(平成9)年まで存続しました。アイヌ民族の保護にある一面で役だったかもしれませんが、公布時から、予算が不足しアイヌの有する財産を不当に管理することでアイヌ民族に対する差別を助長する根源となったことも事実です。

 よく外国語で論文を書いた場合、われわれ日本人の場合nativeに見てもらう、と言うことを言いますが、このnativeと言う言葉を日本語に直すと「土民」、「原住民」、「その土地の人」「その言語の国で生まれ育った人」、と言う意味で使っていると思いますが、相手はどう受け止めるだろうか、よく考えて使うことが大切であろうと考えます。