素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

ナウマンゾウの絶滅原因を探る(13)中本博皓

2020年05月02日 17時44分17秒 | ナウマン象と日本列島

ナウマンゾウの絶滅原因を探る(13)

 

 

 絶滅したナウマンゾウのはなし(第二話)

 過剰狩猟仮説(その1)

 まず、ごく一般に言われている過剰狩猟について触れることから始めましょう。今からですと、半世紀ほど前になりますが、1966年に古生物学者のポールマーティンによって「過剰狩猟説」と言いますか「過剰殺戮仮説」が唱えられました。

 北米と南米に進出した現生人類が、尖頭石器(とがった石器)をつけた槍(やり)を考案して、大型獣を狩りするようになったというものです。北米や南米の生息していた大型獣を過剰に殺して絶滅に追い込んだことが「過剰殺戮(さつりく)」に繋がったというものです。

 ポール・マーティンによって、最初に提起された「過剰殺戮仮説」は、世界の新しい各地域への現代人が移動したことで、狩猟するか、競合するかを問わず、すべての巨大な動物の絶滅をもたらしたのだと言うわけです。

 P・マーティンの仮説では、人間を強力な自然破壊者として描いており、最初にその仮説を提起したときは大きな波紋と言いますか、大きな物議を醸した、と言われています。しかし、時間を刻むとともに、古生物学の世界を牽引する有力な説になりました。

 最近では、一部に反論もありますが、この仮説は結構支持があるようです。「巨獣はなぜ消えたか」(『ナショナル・ジオグラフィック(National・Geographic)』、2010年10月号)によりますと、オーストラリア(University of New South Wales)の古生物学者ティム・フラナリー氏は、「過剰殺戮説」のオーストラリア版とも言える仮説を、彼の著作The Future Eatersにおいて発表したと言われています。

 すなわち、「人類は生態系を荒らし、自らの未来を破壊する前代未聞の動物だという大胆な主張」をしたのですが、一方で、反論もあります。それが「自然と調和しながら生きる誇り高いアボリジニへの批判」、と受け止められたからです。フラナリーの仮設には、人類が大型動物を殺戮したことを示すはっきりした証拠が示されていないことです。

 そしてまた、フラナリーの仮説には幾つかの疑問があります。これは、後にナウマンゾウの絶滅原因でも言及しますが、狩猟具として用いた道具は、せいぜい槍と火しかないのですから人類が、数多くの種を絶滅させることは大変難しいと言わざるを得ないのです。

 オーストラリアの場合、広大な大陸全土に大型動物がに分布していたことを考えますと、人類が絶滅に追いやることは簡単ではないと思いますが。