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南太平洋島嶼国「トゥヴァル」について(14):中本博皓

2016年10月30日 21時29分49秒 | 島嶼諸国

 

南太平洋島嶼国「トゥヴァル」について(14)




(5) 日本との二国間外交関係

ソポアンガ前首相は、前述したように2003年12月、日本政府の招待で最大の援助国である日本を訪問した。彼は、日本の援助に対して謝意を表明し、今後も地球温暖化問題等一層の支援と協力を求めた。また、ソポアンガ前首相は、トゥヴァルが漁業資源(漁業収入に多くを依存しているとして、海洋生物資源の持続的利用の重要性に対する認識を示し、海洋資源開発等に関する諸問題について、両国間での意見交換を活発に行いたいとの希望を述べた。

これに対し小泉総理は、ソポアンガ前首相の今回の訪日を歓迎するとともに、「太平洋の隣人として更なる友好関係を増進するよう努力する」1)と応え、今後も漁業資源の保護には支援を惜しまないことなどが話し合われた。とくに、ソポアンガ前首相は、地球温暖化がもたらす懸念を、あらゆる機会を捉えて国際社会に訴えていく決意とともに、京都議定書にも大きな関心を示したと言われている。

一方、小泉総理からは、海抜の低いトゥヴァルが地球温暖化により受けているであろう海面水位の上昇から、高潮などによる深刻な影響を受けていることについて理解が示された。また、小泉総理は、日本が環境問題に特別の関心を有して取り組んでいることなど、先進工業国としての地球温暖化に対する取り組みの詳細について説明するなど、かなり踏み込んだ二国間における会談が行われた2)。

(注)
1)http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/yojin/arc_03/tuvalu_g.html
2)外務省資料、「ソポアンガ・ツバル首相の訪日」(『概要と評価』)。  


2. 政治課題

(1)出稼ぎ先(労働移民先)の確保
 主としてこの国の宗教はキリスト教(プロテスタント)、ほとんどの国民がトゥヴァル教会に属しているクリスチャンである。したがって、外交面でも西側諸国との友好関係維持・強化を基調としている。最近、国連加盟を果たしたことで、国連を足がかりに地球温暖化問題と経済援助を加盟国に訴えることに積極的な姿勢を見せている。また、地域協力機関(SPF、PC)にも働きかけている。

 さて、トゥヴァルにとっての当面の課題は、最も安定した出稼ぎ先(市場)であった隣国ナウルの燐鉱石資源の枯渇とそれに伴い失業したトゥヴァル人労働者の再就職市場の開発問題である。これまでにも政府は、ニュージーランドとオーストラリアに対し労働移民受け入れ交渉を行い、ニュージーランド政府とはすでに述べたように一定の成果を得た。しかし、オーストラリア政府とは「暖簾に腕押し」状態である。ともあれ、トゥヴァル政府は、「当面の課題」である出稼ぎ先の新たな開発に対する成果が得られる目途は全く立っていないと言う厳しい状況におかれている。

(2)政治課題としての環境問題

 トゥヴァルにおける海面上昇に関しては、日本の環境省(旧環境庁)が、すでにSPREP(南太平洋地域環境計画)と共同で調査を行っており、その結果でも海面上昇の影響が深刻であることが報告されている。首都のあるフナフティ島1)に隣接したに位置にあるアマトゥク島では海水の湧出が激しいことも知られるようになった。

 海抜の低いトゥヴァルにとって、最大の関心事は何よりも地球温暖化による海面上昇問題である。1995年3月にドイツのベルリンで気候変動枠組条約第1回締約国会議(COP1)が開催され、1997年12月はCOP3が京都で開催されたが、オブザーバーでトゥヴァルのNGOも参加し、1998年12月のCOP4には代表を参加させた。

トゥヴァルの代表は、各国の代表に温暖化問題と南太平洋島嶼国がおかれている現状とその重要性を訴えるなど、小島嶼国の先頭に立って積極的な環境問題への取り組みを見せた。環境問題は、トゥヴァルの国民にとってまさに死活問題であり、緊急の政治課題であるとされている。

 (注)
1)正しくは、ファンガファレ島と言う。本来は「フナフティ島」と言う島はないが、最近では地図にも、またトゥヴァル中央統計庁資料でも「ファンガファレ島」ではなく、フナフティ島と使われているので、
本稿でも誤解のない程度に「フナフティ島」を用いている。

3.経済活動

(1)国内生産

ⅰ)土地問題
ツバルの国土は、その約95%が個人所有であるが、離島の中には国有地を含む共有地が存在する。国土が狭いこともあって、人々が所有している土地の規模は極端に狭い。また耕地と宅地は同一区画になっていて、日本流に言えば、通りに面しているところに畑があればその向こうに住宅がある。このケースが一番多い。家が道路に面して建てられていれば(手前にあれば)、その奥が畑になっていることが多い。

  畑には、パンノキが植えてある家、バナナを植えてある家、その両方が植えられている家もある。ココヤシなどが植えられている家もある。そのほかプラカは、土地の人々が主食にしているタロ芋の一種である。プラカは、多くの民家の畑で見かけるが、高潮で海水を被ることが多いためか、どの畑も余り成長は良くない。塩害の影響であるように感じられた。

 畑と住宅用地を合わせても、その用地の面積は一戸当たり精々200~300m2 程度である。また、住宅も平屋建て木造で、例外的に大きな住宅もあるが、一般庶民の住宅は30~50m2 程度と推察できる。わが国の畑や田圃に相当するような農耕地はフナフティ島では全く見かけない。稀に見かけた広い農耕地も、精々400~600m2 程度の面積に過ぎない。フナフティでは、それでも大農場のように思われる。フナフティ島で最も広い土地は飛行場の滑走路とその両側に広がる草地である。それ以外の空き地は波打ち際の海岸線くらいである。

ツバルにおける土地は制度上、子への相続が原則である。その他は、土地所有者間での土地の分割が行われている。それ以外には土地の入手はほぼ困難である。それでも土地の度重なる分割で、土地の細分化、土地の境界に関する紛争及び土地区画に対する多重所有権などの問題が生じて争われるケースもある。そのために9つの島のいくつかでは、もはやインフラの開発が事実上困難になっている。

 トゥヴァルでは、政府自体が土地を所有しているわけではないから、政府も必要とする土地は、用途に応じて地主から借地して利用している。確かに、政府は公共の用途のために法律上は土地を収用することができるが、通常は土地所有者に一定の補償金を支払って利用している。

 現在、政府が借地に支払っている地代の金額は、1エーカー当たり年間、1,350米ドルである。一方、土地は政府の自然資源省の管轄下におかれている。その土地の出身でない者が、直接地主から土地を借用することはできないことになっている。土地を必要とする者は、必ず自然資源省の許可を得なければならないのである。

ⅱ)経済活動の実態
以下、本稿では、トゥヴァルの産業構造および経済活動について、同国の中央統計部が作成した「経済統計資料」を用いて、それらの特徴のいくつかに言及する。

①農業及び漁業が産業の中心であることは他の島嶼国と同じであるが、自給自足的な部分が大きい。海面上昇の影響もあって今日では、その自給自足でさえも維持できなくなってきていると言われている。
②その他、若干の建設業、サービス業及び郵便切手の発行事業である。
③土壌は痩せており、各島とも珊瑚礁、岩片で形成されており、加えて塩害の影響もあり、農事用水資源が乏しいことから、トゥヴァルの立地条件は本来農業には不向きである。コプラを除けば、行われている農業のほとんどは自給自足のた
め のものである。主な農産物はコプラ、プラカなどのタロ芋とバナナである。
④また、トゥヴァルの人々にとっては、自給自足のために行われている漁業も、土地の漁民からすると、現金収入を得る重要な手段であり、経済活動である。
⑤国家の主な収入源は、コプラの輸出、政府による切手の輸出販売、出稼ぎ者による本国送金である。しかしながら、近年は切手販売、切手の輸出による収入はともに減少している。