ナウマンゾウの絶滅原因を探る(12)
絶滅したナウマンゾウのはなし(第一話)
絶滅説を考える(その2)
冨田氏が指摘するように、人類による過剰狩猟説とか大量殺戮説は、ナウマンゾウの絶滅原因論としては疑問なんです。それは、人類の狩猟活動が大型草食獣を過剰に狩猟するとか、大量に殺戮といいますか、大昔であっても人類が衣食住のために、大型草食獣を絶滅に追い込むような狩猟をしていたとは思えないんです。
後期更新世の末期になりますと、日本列島は温暖期に入り、湿潤な気候で、気温は現在よりも平均で2~3℃は高温だったといわれています。
最終氷期の最寒冷期後、約20,000年前から始まった海水面の上昇、いわゆる縄文草創期の海進で、草地が減少し深い森林に覆われていたと推察されます。
絶滅の危機に追いやられたのは草食の大型獣の宿命だったと考えられます。ナウマンゾウが日本列島から消えたのも最終的にはこの時代ではなかったかと思います。
絶滅原因として考えられる古気候変動説です。古生物学会では、国際的に「気候変動仮説」と呼んでいるようですが、普遍的な定義があるわけではありません。一つの見方としては、氷河期と氷河期の間で生じる温度と降水量のコントラストに焦点を当てた考え方です。ナウマンゾウが絶滅した時期、すなわち第四紀後期に起きたと思われる最大の気候変動を絶滅原因の一つに考えているようです。
この時代、地球上というか世界の人口は500万人程度だったのではないか、そう推計するのは人類生態学者の大塚柳太郎です。また、大塚によりますと、5500年前でも地球上の人口は1000万人程度だったのではないかと推測しています。
日本列島について考えましても、北海道のナウマンゾウは5万年前〜4万年前まではかなりの頭数が生息していたようです。その頃、地球上の人口は100万人位でしょうから、十勝平野の忠類辺りに人類が住んでいたかどうかさえ確証がないのです。
よしんば人類が住んでいたとて、ゾウなど大型哺乳類の狩りをしていたかどうか定かではありません。確かに、野尻湖の湖底からは大量のナウマンゾウの化石や狩猟用の道具類と思われる石器、骨器が多数出土しております。
専門家の間では、野尻湖岸が2万年ないしそれ以上も前から続いていたキルサイトだったのではないかと推測がなされています。
ナウマンゾウが、人類との出会いで犠牲になる機会が増えたことは否定しませんが、ナウマンゾウが絶滅した理由を説明できるとは思えないんです。