【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「長州ファイブ」:品川車庫前バス停付近の会話

2007-02-10 | ★品93系統(大井競馬場前~目黒駅)

ずいぶん年季の入った感じの家ね。
このあたり、江戸時代は品川の宿場町だったらしいからな。
そこまで古くはないでしょ。
じゃあ、江戸から明治に変わる頃か。
いやあ、そこまでも古くはないと思うけど。
明治維新の前後っていろいろあったからなあ。
その歴史のひとコマを描いたのが「長州ファイブ」っていう映画。
ああ、攘夷か開国かで揺れる幕末に、世界の大きさを知るためにイギリスに渡った五人の長州藩士の実際にあった物語の映画化。
この五人が実はそうそうたるメンバーの若かりし頃なのよね。
伊藤博文とか井上馨とか、五人とも帰国したあとは明治維新で重要な役割を果たしている歴史上の人物だ。彼らが激動の時代をどう生きたかっていう物語。
と聞くと、とてもドラマチックな展開を期待するけど・・・。
それが、思ったほどドラマチックじゃないんだよな。彼らが時代の使命感に燃えているのはわかるんだけど、それがアクションにつながらないから、映画としては、どうも興奮に欠ける。
アクションて?木刀で戦ったりしてたじゃない。
いや、そういう意味じゃなくて、のっぴきならない状況にぶち当たる中で主人公はどう行動して問題を乗り越えていくか、っていうサスペンスに欠けているっていうこと。この映画の主人公たちは、これからの日本を変えなければならないという思いばかりで、自身がのっぴきならない状況に陥っているわけではないから、観ていていまひとつ感情移入ができないんだよな。
ああ、たしかに志は高いけど、イギリスに行かないと自分自身が困るってわけでもないし、イギリスで万事休すって場面に出合うわけでもないし、病気になっても帰って来れちゃうし・・・。
イギリスでできた恋人との悲恋もなにか色っぽさというか情緒に欠けるし・・・。
だけど、大志だけは伝わってきたわよね。「日本のために機械になって帰るんだ」っていう。
あの時代は、産業革命直後で、とにかく欧米の技術を取りこむのが日本の最大の命題だっていうのは確かだからな。技術を習得して「日本のために機械になって帰るんだ」っていう使命感を持っていたのはよくわかる。
今そんなこと言っても誰も感動しないだろうけどね。「女性は子どもを産む機械だ」って言ってバッシングされた大臣もいたくらいで。
あの頃の大志を思い出せ、っていう映画なのかな。
「文明だけでなく自然も大事なのよ」って映画の中のイギリス女性は取ってつけたように言ってたけどね。
五十嵐匠監督って、「みすず」を撮った監督だろ。
あれはよかったわ。とてもみずみずしい情感にあふれていて。
ああいう静謐な話を撮るのが得意なのかもしれないな。時代を表現するようなダイナミックな素材は合っていないのかもしれない。
それにしても、五人が五人とも日本へ帰ってきて偉大な人物になったっていうのには感心したわ。
ひとりくらい挫折してもおかしくないのに、立派なもんだ。
あなたも少し見習ったら。
お前もな。
と、この監督は言いたいのかもね。


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ふたりが乗ったのは、都バス<品93系統>
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