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【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「間宮兄弟」:三光坂下バス停付近の会話

2006-09-12 | ★田87系統(渋谷駅~田町駅)

この小学校、校庭に子どもがいないけど、授業中かな。
そういえば、「間宮兄弟」の弟は小学校の用務員だったのよね。
ドランク・ドラゴンの塚地がいい味出してたな。
兄の佐々木蔵之介も奇妙な味わいだったわ。このまま、この二人がコンビ組めばいいのに。
そんなこと言ったらドランク・ドラゴンの片割れがかわいそうだろ。
名前も知らないくせに。
・・・。
ほーら、思い出せない。
いや、映画の話してるんだろ。この凸凹兄弟が、30過ぎてるのに、同じ屋根の下にとても仲良く住んでます、っていうだけの映画なんだけど、妙におもしろかったな。
「仲良く」の質が問題で、まるで小学生同士みたいな仲良しなのよね。
こんな兄弟いるか、と思うんだけど、バカだなー、気持ち悪い兄弟だなー、と思いながら妙に心地いいんだよね。
大人なら仕事とか恋愛にどろどろのはずなのに、そういうのがまったくないからじゃない。
女性との接し方なんて中学生みたいだもんな。
大人のしみとか汚れとかがないのよね。うらやましい。
でも、彼らは彼らなりに苦労してるってところもチラッと出てきてなおのこと、共感しちゃうんだよな。
女優陣も、恋人を姓名で呼ぶ常盤貴子とか、へんだったわね。
ああ、ああいうやついるいる、っていやしないのにいるような気がしちゃうんだよな。
処女作の「の・ようなもの」に戻ったみたいなおかしくて切ない映画よね。
森田芳光も最近は「海猫」みたいなどろどろな大人の映画に挑戦してみごと失敗してるけど、ようやく自分の本質は「の・ようなもの」にあると気づいたのかな。
昔から気づいているとは思うけど、大人の映画も撮ってみたかったのよ。大人の映画も撮れるんだぞ、って証明したと思ったから自分の世界に戻ろうと思ったんじゃない?
こんどは黒澤明の「椿三十郎」をリメークするっていうから、また大人の映画に戻っちゃうのかな。
でも、「椿三十郎」ってコメディじゃない。
ああ、湿度も温度も高い黒澤明にしては珍しく、湿度も温度も低い映画。本来湿度も温度も低い森田芳光の本質が発揮されればいいんだけどな。
たしかに、「かもめ食堂」ほどではないけど、湿気も温度も低い映画よね、「間宮兄弟」は。
ゆれる」の兄弟とかと比べると雲泥の差だ。あんな緊張感どこにもないもんな。
いっそ、森田自身も兄弟に加わればいいのにね。あの甲高い声で。
「間宮三兄弟」か。それはいい。


ふたりが乗ったのは、都バス<田87系統>
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「ユナイテッド93」:北里研究所前バス停付近の会話

2006-09-11 | ★田87系統(渋谷駅~田町駅)

ここは北里病院か。
あの日、もし日本が標的になっていたらこの病院にもたくさんの負傷者が収容されたのかしら。
あの日って?
9月11日よ。5年前の今日。
そんな物騒な話はやめろよ。
でも、アメリカだからワールド・トレード・センターが狙われたけど、日本だったらきっと六本木ヒルズが狙われるわ。そしたら、六本木に近いこの病院にだって負傷者が来るわ。
だから、そんな縁起でもないこと言うなよ。
でも、現についこの間も新たなテロの計画が発覚したのよ。
そうなったら戦うしかないだろう。
「ユナイテッド93」の乗客みたいに?
ああ。
テロでハイジャックされた飛行機で1機だけ標的に達せず地上に堕ちた飛行機の映画ね。でも、あの映画を見てびっくりしたわ。地上の官制室って飛行機の動きをまったく把握していないのね。窓越しにワールドトレードセンターが炎上するのを見て始めて自分たちが官制している飛行機が突っ込んだのかもしれないって知るなんて。
まあ、あんなことが起きるなんて、誰も想像できなかったしな。
管制室のすごい混乱ぶり。リアルだったなあ。
ユナイテッド93の機内の描写もリアルだったぜ。生存者がいなくて機内がどうだったかなんてわからないのに、きっとこうだったんだろうって納得させちゃう。
ヒーローなんていないのよね。みんなでなんとなく犯人を追いつめていく。でも、間に合わなくて飛行機は墜落しちゃうの。
犯人もまた、震えながら迷いながら行動する。実は、乗客と同じ、ふつうの人間なんだよな。
そうなのよ。1対1でつきあえば、きっといい人たちなのに、立場が違うばかりに悲劇が起きてしまうという状況。
そう、ひとりひとりと話せば信条の違いも乗り越えられるだろうに、それを世界の状況は許さないんだよな。
ほんとはね、乗客の誰かひとりでも犯人を説得する人が出てくるかと期待したんだけど、そんな余裕もなかったわね。世界の状況の縮図だわね。
ほんとだな。「話し合おうじゃないか」って言う人がいてほしかったな。無駄でもいいから言ってほしかったな。
あんな状況で、そんな余裕あるわけないのは十分承知してるけどね。
ああ。彼らはあの状況の中でできる限りのことはやった。立派だった。あの勇気には感動するよ。
やっぱり、戦うしかないのよ。テロには屈しないって言って。
いいや、やはりあの犯人の人間臭さを見てると、同じ血が流れている人間なんだから、どこかでわかりあえるっていう希望は捨てきれない。
あら、戦うしかないって言ったのはあなたよ。
ああ。でも、「ユナイテッド93」という映画には、わかりあえるかもしれないって思わせてくれるところがあるんだよ。そんなシーンはまったくないのに。悲劇を忠実に描いているのに、どこか、かすかな希望の光が見えるんだ。
その希望の光を消さないように私たちも努力しなくちゃだめね、犠牲になった彼らのためにも。
ああ、ほんとうだ・・・。じゃあ、映画の話はこれくらいにして、今夜は奮発して六本木ヒルズのレストランでフレンチなんてどうだ?
ああ、これが日本の現実なのね・・・。


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「かもめ食堂」:恵比寿三丁目バス停付近の会話

2006-09-10 | ★田87系統(渋谷駅~田町駅)

なんか、シンプルで飾らない感じのいすが並んでるわね。
「かもめ食堂」にあってもいいようないすだな。
北欧の匂いがするってこと?
匂いっていうより、北欧の空気を感じる。
「かもめ食堂」は日本映画にしては珍しくヘルシンキで撮影したっていうんだけど、その雰囲気が明らかに映画を支配していたわね。
出てくるのは日本人だし、監督も日本人だけど、どうも日本映画に見えないところがあるんだよな。
風景が、っていうんじゃんくて映画のたたずまいがね。
いろんな意味で湿度と無縁なんだな。
温度も低いわよ。感情を露にしたり、怒鳴りあったり、泣いたりまったくしないもの。
三人の日本人女性がヘルシンキに食堂を出しましたっていうだけの映画だもんな。三人の事情もわからなければ、三人の間で葛藤が起こるわけでもない。でも、退屈しないんだよな。
言ってみれば、アキ・カウリスマキの映画みたいだもんね。
監督の荻上直子もこの前撮った「バーバー吉野」とは明らかに違ってたよな。
主演の小林聡美がプールでふわふわ浮かんでいるシーンがあったけど、この映画を見ている間中、ふわふわ浮かんでる感じだったわ。
癒される、ってやつだよな。
ヒットするのもわかるような気がするわ。
映画は誰が撮るかも大事だけれど、どこで撮るかも大事なんだなあって改めて思ったよ。
て、きょうは私たちの会話もやけに穏やかじゃない?
ほんとだ。
しばらく黙ってこのいすにでも腰かけていたい気分ね。
ああ。


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「紙屋悦子の青春」:恵比寿二丁目バス停付近の会話

2006-09-09 | ★田87系統(渋谷駅~田町駅)

このあたりは、ハチ公バスなんてのが、走ってるのかい?
コミュニティバスってやつね。
ハチ公だけに、いくら待ってもこないんじゃないのか。
待ってればくるわよ。
待っちょいますから・・・。ずっと、待っちょいますから・・・。
なにそれ。「紙屋悦子の青春」のセリフじゃない。
ああ。原田知世が婚約者に言うセリフだ。いい顔してたなあ、原田知世。俺も一度でいいから言われたいもんだ。
悪かったわね。
初主演作の「時をかける少女」から20年以上もたってるのに、まだあんなかわいい顔ができるなんて、信じられないな。ハチ公なんかより、全然かわいいぜ。
変な例え。でも、なんか、感じが小西真奈美に似てるわね。
いや、小西真奈美が原田知世に似てるんだ。
映画自体もよかったわね。戦場も戦闘も出てこないから、戦争映画とは言わないのかもしれないけど、あの頃のふつうの人たちの暮らしをとても細やかに描写してて、戦時中映画っていうのかしら、とても感動したわ。
なるほど。戦時中映画とは、お前もたまにはいいこと言うな。「男たちの大和」なんかと違って男も女も大声でわめきたてないのがいいよな。
そう、みんな気持ちを心に秘めて。でも、あの頃はそれがふつうだったって感じがまたよく出てて胸がつまるわね。
愛する人ともう会えない場面とか、愛する人が死んじゃったことを知る場面とか、ことばにしないだけに、表情のひとつひとつが訴えてきて切ないよな。
だから戦争はいやなのよ。でも、あの頃の人々のつつましさには憧れるわね。
自分は戦争で死ぬから好きな人を親友に譲る、って話なんだけど、考えてみればそんなこと、ひとことも言ってないよな。
私の知ってるおばあちゃんで、夫が戦争で死んじゃったからその人の弟と再婚した、って人がいたけど、あの頃はそんなことも深く考えるようなことじゃなかったのかもね。
いやしかし、男二人に女一人の映画ってどうして、古くは「突然炎のごとく」「冒険者たち」「明日に向って撃て」から最近見た「ゆれる」までどうして傑作が多いのかな。
そうね、考えてみるから、ちょっと待ってて。
待っちょいますから・・・。ずっと、待っちょいますから・・・。


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「ゆれる」:恵比寿四丁目バス停付近の会話

2006-09-08 | ★田87系統(渋谷駅~田町駅)

遠くにウェスティンホテルが見えるわね。
恵比寿は、東京でもおしゃれな町だからな。
撮影スタジオも多いとか。
カメラマンになるのを夢見て地方から来る若者も多いんだろうな。
「ゆれる」の弟みたいに?
そう。弟は自由だからどこへでも行ける。家督を継がなきゃいけない兄はそういうわけにはいけない。「ゆれる」という映画には基本的にそういう葛藤がある。
そして、二人の間をつなぐ女性を巡って事件は起こる、て何かの映画に似てない?
「エデンの東」だろ。あの映画でも、兄は堅物で弟は奔放な感じだったけど、それと似ていないこともないな。
「エデンの東」では兄は耐え切れずに軍隊に入っちゃうけど、「ゆれる」の兄は耐え切れずに刑務所に入っちゃう。
そう。兄は有罪になりたくて、わざと弟を挑発したんだよ、きっと。
もうこんな生活いや、って気持ちね。
都会に出て行った者も大変だけど、田舎に残された者も大変なんだよ。
て、そこまで言うとネタばれじゃない。
いいや、ほんとのネタばれはラストシーンにある。あそこをどう見るかで映画の印象がぐっと異なってくる。
私はハッピーエンドになってほしいな。
おれはあの二人はあくまで「エデンの東」じゃないかと。
でも、題名は「ゆれる」よ。そんな単純に割り切れるものじゃ、ないんじゃないの。
単純とか複雑とかじゃなくて、人間て哀しいねえっていう・・・おおっと、このバスもゆれるな。
ゆれるーおもい、からだじゅうかんじてー
て、バスの中で歌うな!


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