美術の旅人 Voyageur sur l'art  

「美術」との多様な出会い。見たこと、感じたこと、思ったこと。

中島みゆき「命の別名」

2014-01-25 13:01:52 | 私が作家・芸術家・芸人
「あぶな坂」を高校3年のとき聞いて、同世代の中からすごい女の子が現れたものだと思った。今は大姉御になって押しも押されぬ日本のトップシンガーとなった中島みゆきである。しかし、一冊のランボー詩集しか持たない畏怖すべき友人が認めたその鋭いナイフも、「時代」を歌ったころから、一般的な感性と融和的になり、そうでない曲も自分を特権化して繰り言をつぶやくように聞こえて、だんだん聞く事から遠ざかっていった。ところが、正月に、とんでもない昔のことが幽霊船のように突如として表れるyutubeで、たまたま彼女の名前を見かけ、90年代終わりに書かれた曲「命の別名」をはじめて聞いた。「聖者の行進」 という知的障害者を主人公にした作品でテーマソングであった事も遅ればせながら知った。当時は話題になったのだろうか?ドラマの深刻なテーマがそうさせたのか、正直、これは今までの日本の歌にはなかなかないものだと思う。とりわけ以下のリフレイン。

石よ樹よ水よ 僕よりも
誰も傷つけぬ者たちよ

くり返すあやまちを照らす 灯をかざせ
君にも僕にも すべての人にも

命に付く名前を「心」と呼ぶ
名もなき君にも 名もなき僕にも

石や樹や水に訴えても、もとより答えてはくれまい。しかし、ここには静める存在たちに、そう叫ばざる得ない者がいる。「時代」が行き過ぎ、巡り巡ることを見送るだけでやがて生まれ変わって再び巡りあい、笑って話せるわ、なんて都合のいい人間のお話を、もはや信じられない者がいる。すべての人が繰り返しあやまちを犯す者であることを認めつつ、今、そのあやまちを照らす灯を、誰も傷つけぬ者たちに求めている。しかし、3.11を経験した者に、誰も傷つけぬ者として自然は再び灯となれるだろうか。ここに自然をベースにして日本の歌がぎりぎりまで行ってつながらない彼方がある。

命の別名
http://www.youtube.com/watch?v=5Wlmc4xSQFU&list=PL2F0D8035AF2CDA37

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