美術の旅人 Voyageur sur l'art  

「美術」との多様な出会い。見たこと、感じたこと、思ったこと。

野中光正&村山耕二展 2022/11/21Mon.~27Sun. 杜の未来舎ぎゃらりい

2022-10-27 11:06:06 | レビュー/感想

白という光の色。

なぜ世界に光とともに色彩があるのだろうか。そんなことを考えるのは、野中氏の作品を覆っている色彩は、絵画理論の構成要素である「色」とはまったく別のものと感じたからだ。それを「純粋色彩」とでも呼ぼうか。野中氏が顔料を既製品ではなく自作し続けてるのも、この色彩への強いこだわりがあるからだろう。色彩は、最も鮮明な知覚である「視覚」を通して魂に直接呼びかけてくる力を持つ。最新作でも、野中氏の生活の記憶庫から呼び寄せられた色彩が重なり合い、独特な奥行きのある世界を形づくる。彼の作品の特徴的骨格である矩形の「形」はもはや自然にそこにあり、真ん中には太い柱のような白色の光の帯があって天から降り注いでいる。誕生前の赤ん坊が目で見た、あるいは来世で見るかもしれない、純粋な色の世界へと誘うかのように。

 

MITSUMASA NONAKA

1949年東京都鳥越生まれ、現在元浅草在住。78年木版画展(現代版画センター)、84~95年ゆーじん画廊(東京)、89-91年新潟高柳町移住、紙漉きを学ぶ、2001~22新潟絵屋、2009年〜杜の未来舎(仙台)、2010年〜ギャラリーアビアント、ギャラリー枝香庵(以上東京都)などで毎年個展開催。

●野中光正在廊日 11/26(土)~27(日)

 

誕生と衰滅のリアルプロセス。

村山氏は、卓越したセンスと腕を持つガラス工芸作家である一方、リスクを恐れず未知の世界に向かう探検家のような魂を持っている。人を魅了する生きた美は、向こうから唐突にやって来て、人が頭と技で作り出したものからは得られない。彼の持続的な創作エネルギーは、この出会いを求めて、地球創造の源へと遡る中から生まれてきた。新作は、高温で石が溶解しガラス化して行くプロセスを巻き戻し、逆に石に帰っていく、ダイナミックな自然の永劫回帰の過程を見せられているかのようだ。彼の手の内で、瞬く間に高温で溶解し破裂する石に美しい形が与えられ、その究極の姿が光を透過して固有の色を帯び変化するガラスになる、毎度アルケミストの夢を見させられているような、不思議な作品に魅せられる。

KOUJI MURAYAMA

1967年山形市生まれ。1996年仙台市秋保に海馬ガラス工房設立。2007年モロッコ王国・王室への作品献上。土地土地の砂の特質を生かしたユニークな造形作法で知られる。

●杜の未来舎ぎゃらりい

野中光正の木版画作品/ミックスメディア作品

村山耕二のグラス・オブジェ作品