美術の旅人 Voyageur sur l'art  

「美術」との多様な出会い。見たこと、感じたこと、思ったこと。

ルオー版画「ミセレーレ」展 宮城県美術館 常設展示

2013-07-02 10:19:11 | レビュー/感想
追求の矛先は他者、自己に関わらず、情け容赦なく厳しくなければならない。しかし、その厳しい追求でほとんど壊滅せられた人間性の空洞には光が満ちていなければならない。ルオーの版画の輝くばかりの白とは、この希望の(愛の)光の圧倒的な確かさの表明であらねばならなかった。ルオーが白黒のリトグラフを選んだ、そしてこの白の表現技法に腐心した背景には、こうした単なる芸術的な意図を越えた彼の信仰的な確信があった。「ルオー全版画」(岩波書店刊)を久しく前に買い求めてときどき眺めていたが、やはり複製印刷ではそのことはよく分からなかった。それは本物を目の当たりにし、初めて実感したことであった。そして彼が晩年、暖炉で多くの作品を焼き払ったというのも、単に作品の出来不出来に関わる、つまりは芸術家のエゴイズムに関わることではないのだろう、と思った。

ゴッホ展と同時に、宮城県美術館では、某コレクターが寄贈したルオーの版画展を現在常設展示している。そのことを知らないで唐突に出会った。それが良かったのかもしれないが、こちらの地味な展示会の方に、むしろ心揺さぶるものがあった。

上写真「山の手の夫人は、天国に予約席ありと思う」

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