美術の旅人 Voyageur sur l'art  

「美術」との多様な出会い。見たこと、感じたこと、思ったこと。

フランス南西部、森の中の若い大工たちのコミュニティ Kirsten Dirksenのユーチューブ映像から

2020-03-17 20:46:40 | 

フランス南西部、森の中の若い大工たちのコミュニティ

さて、ここはフランス南西部の若い大工たちのギルドによるコミュニティ。昔ながらの工法を使って、様々な住宅を2年前から森の中に作り始めた。製材も古風な斧(これら道具もここで自作している)を使って行なっている。新しいテクノロジーだ、我々の発明だと見せてくれたのが、自転車で動く製材機械。思わず目が点になった。棟上が終わった大きな建物もあるが、天然木が枝分かれし曲がった元の立ち姿のまま使われている。伝統的なフランスの田舎家の建築様式なのだろう。手づくりのあったかな味と独特の美的ハーモニーがあって心惹かれる。

しかし、仕事ばかりしているわけではない。なんか一見ぶらぶらしている者の方が多いように思う。三々五々、弓で狩猟の練習をする者もいれば、木にぶら下がった廃物のソファに座って新聞を読んでいる者もいるといった具合。彼は「僕は2日間大きな仕事をしていたんだ。いつも忙しいんだよ。お客の相手もしなくちゃならないし」と言い訳していて面白い。

バスが何箇所もある。建築途中の立派なタイル張りのバス。ゴミを燃やすかまどをバスタブに突っ込んだだけの五右衛門風呂風なのもある。土のピッツァ&パン窯、地面をくり抜いただけのワイン庫、そして木の上に設けられた放し飼いの鶏のための家というのもユーモラスだ。それぞれが暮らす小さなキャビンを森の中に作っているが、ピレネーから馬でやってくる(!)という彼女のために作った家もある。でも、馬が引くには重くなりすぎて、トラクターか、人が押すしかなくなったという。

「ノーマルな生活は送りたくない。僕の考えはシンプルで、森の近くで暮らすということさ。確かに労働はハードさ、でも、ジョークを言い、音楽を演奏して、友達といっしょに働くのは楽しいよ。仕事をやめたくなればやめればいいだけの話しさ」。その通り、それでいいのだ。閉塞状況の中で、窮屈な思考に落ちいっている若者に聞かせたい。

 

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充ち来るもの  Loving Vincent を見て

2018-09-26 09:05:59 | 
鳥のさえずりは
彼らを充たしているものが
何であるかを問わず語りに
物語っている。
それらは、暗闇に出会っては
沈黙をし続けるもの。
私のうちには
哀しみをもってしか
未だ存在しえぬものだが、
見えない風や光の兆しに
幽かに感じても
指の先からたちまち
零れ落ちてしまう。
あえかに思われて
幼子の眼差しと笑顔のうちに
ここに満ち充ちて
確かに存在していると
感じられるもの。
繰り返し押し寄せては
詩を孕ます追憶の波頭を越えて
決して歌ではない!
心の奥に秘せられたシンバルよ、
高らかに鳴り響け!
智恵においては知り得ぬ
満ち充ちて来るものを迎えるとき。


Loving Vincentは、世界中から100人以上の画家が集い、フィンセント・ファン・ゴッホのアルルでの最期の日々を、1コマ1コマ、ゴッホの油絵タッチで描いた長編アニメーション映画である。最新の研究からゴッホ自殺説に異議を唱えている。