中野笑理子のブログ

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本が助けてくれた

2017年07月10日 | 日記

時に認知症の母がまともに思えるほどの、夫の変わりように激しく動揺しました。
けれども母と話していても、健全だった時のように悩みや不安は口にできませんでした。
ごく近しい人にだけ本当のことを話しましたが、話して楽になるわけでなし、仕事中も頭のてっぺんはどーんと痛く、いつまで続くのか、また自分がどこまでもちこたえられるのかもわからなかった。

とにかく本を読みました。
ちょっとでも心が強くなれるような、ささやかな幸せを感じられるような、唯一の現実逃避でした。
病院のある駅は大きな本屋があり、毎日寄っては買って読みました。

益田ミリさんのマンガやエッセイ、小説。
にしむら珈琲創始者である川瀬喜代子さんの物語『神戸っ子の応接間』
朝井まかてさんの『ちゃんちゃら』『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』『すかたん』
伊集院静さんの『作家の遊び方』
桐野夏生さんの『だから荒野』
文藝春秋スペシャル『脳と心の正体』等々。

もちろん中山先生の新刊も、発売日に買って読みましたが、独りっきりの家の中で読むのが怖くて、遅くまで開いている喫茶店で粘って最後まで読みました。
読んでやっぱり、家の中で一人で読むのは危険だと思いました。

『幽』vol27も貪るように読みました。
花房観音さんの『但馬忍法帖』のラストは何度読んでもほろりとしてしまいました。
チーズの肉トロ、いつか作って食べてみたい。
山田風太郎さんの本は今、書店では見つけることが困難なのです。
でも図書館に行く時間がないので、この特集は嬉しかった。

そうこうするうちに、夫の状態も薄紙を剥ぐように本当に少しずつですが回復し始めました。
テレビを見るようになり、行く度にテレビカードを買う羽目になるので、小さなラジオを買って、野球中継はラジオで! と釘を差しました。
次第に幻覚や幻聴もしなくなりましたが、元気だった時のような普通の会話はまだ難しく、時系列でものを考えたりするのはつらそうでした。

リハビリ専門の病院へ転院することが決まり、転院する数日前から「時代ものの本が読みたい」と言い出したので、どうかな? と思いながら朝井まかてさんの本と複数作家のオムニバス時代ものを持って行きました。
時代ものといっても今まで戦記ものが好きで人情ものはあまり読まない人だったのですが、ちゃんと読んでいたようです。
これは嬉しかった。

そして近所の大学(自転車で5分)で桐野夏生さんの講演会があり、申し込んで聴きに行きました(しかも無料だった!)。
桐野さんはとても綺麗で声がハスキーでカッコ良くて、自分の小説について、自分の小説を評された時の忘れられない出来事についてなどを話して下さいました。
速記記者のように一番前でメモをとりました。
目は桐野さんに釘付け状態でとったので、ぐちゃぐちゃなメモになってしまいましたが、今も時々読み返しています。

やっぱり本は良いな。



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