ファン・ジョンミンは、いま韓国で注目の俳優です。1970年生まれの44歳。イケメンではないが、幅広い役柄をこなす実力派男優だ。いままで「ユア・マイ・サンシャイン」(05年)と「新しき世界」(13年)で、2度の青龍映画賞主演男優賞に輝いた。彼の新作が「傷だらけのふたり」(4月4日公開)。ドラマ「がんばれ!クムスン」「朱蒙(チュモン)」などの人気女優ハン・ヘジンを相手役に、三流チンピラの純粋な恋心を演じてみせる。監督は、本作で長編映画デビューとなるハン・ドンウク。助監督時代に一緒に仕事をしてきたファン・ジョンミンの推薦によって監督に抜擢され、本作の企画がスタートしたという。
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舞台は、日本統治時代の面影が残る寂れた湾岸都市・群山(クンサン)。高利貸の借金取りをしているテイル(ファン・ジョンミン)は、一見粗野で乱暴だが、反面情に厚い不器用な男。ある日、昏睡状態に陥った男の借金取り立てのため病院を訪れた彼は、そこで相手の看病をする娘ホジョン(ハン・ヘジン)と出会う。テイルはホジョンに父親の借金の肩代わりを強いるが、内心では彼女にひと目惚れ。そのあげく、毎日1時間、自分とデートすれば借金を帳消しにしてもいいと持ちかける。初めは嫌々ながらそれに応じたホジョンだが、ぎこちない逢瀬を重ねるうちに、テイルの意外な優しさに触れて、徐々に心を開いていく。
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チンピラまがいの中年男と、銀行に勤めるカタギの娘との純真かつ大甘なラブストーリーである。やがてテイルの愛は実り、ふたりでチキンの店を出そうという話までまとまる。だが、テイルが脳腫瘍に侵されていることが判明。あげくに彼は傷害事件を起こして服役、ホジョンの心も離れていく。いわば、韓流メロドラマの要素がすべてそろった恋愛物語だ。「荒削りの男たちにも家族はいるし、恋愛もする。そうした部分を描いた作品を撮ってみたかった」と、ハン・ドンウク監督は言う。テイルと家族や友人とのやりとり、ホジョンの戸惑い、そしてテイルの死。メロドラマとしては、ちょっと出来過ぎ(?)の感もある。
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この身分違いの恋の物語で面白いのが、食事のシーンだ。テイルは、ホジョンの気を引くために食事にさそう。彼と彼女の気分に合わせたバリエーション豊かな食事。父親の葬儀の後、骨付きの鶏肉を手づかみで食べるホジョンの気持ちは、その日を境にテイルに傾いていく。なるほど、恋愛を成就させるためには、食事も大切な要素なんだな。それが、ハン・ドンウク監督流の日常リアリズムでもあるのだろう。ファン・ジョンミンは、類型的だが微妙でもある男の心理を巧みに演じる。最新主演作「国際市場で逢いましょう」(5月16日公開)は、韓国で観客動員数1000万人を超えるヒットになったそうだ。(★★★+★半分)
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