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わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

東京藝大発、異色の自主映画「イエローキッド」

2010-01-30 18:24:45 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img230 いま日本映画界には、新しい才能が次々と芽生えています。「イエローキッド」(1月30日公開)の真利子哲也監督も、その代表的なひとり。彼は、法政大学在学中から8ミリ映画を愛好して製作を開始。短編「極東のマンション」(03年)、「マリコ三十騎」(04年)で各国の映画祭に招待され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭ではオフシアター部門グランプリに輝く。07年には、東京藝術大学大学院映像研究科に入学して、黒沢清監督に師事。09年、28歳で同大学院の修了製作作品として、初の長編「イエローキッド」を発表。わずか200万円の製作費と、2週間の撮影期間で作られ、メイン・スタッフも平均年齢26歳という同大学生だった。いわば、気鋭のインディーズ監督の誕生といっていい。
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 この「イエローキッド」は、実にユニークな作品です。主人公は二人の青年。その一人は、認知症を患う祖母と暮らす貧しいボクサー志望の田村(遠藤要)。もう一人は、「イエローキッド」というタイトルの新作漫画を描く漫画家・服部(岩瀬亮)。服部が田村を漫画の主役のモデルに決めたことで、彼らの日常が奇妙に交錯し揺れ動く。そして、いつしか田村の行動が、漫画の物語どおりに進行する…。漫画とボクシングの世界が並行し混合し、現実と虚構の間で幻想的な愛憎とバイオレンスのドラマが生まれていく。劇中で服部が描く漫画の元ネタになった「イエローキッド」のキャラクターは、100年ほど前にリチャード・フェルトン・アウトコールという人が生み出し、連載漫画として人気を得たアメコミだという。
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 いわば、既存のキャラクターを使って、新たなストーリーを創造するというアメコミ方式で企画された作品なのだ。「フィクションですら、現実のものとして認識してしまう若者たち。そうした者たちが、いまの日本には確実に存在する。そうした人間たちの姿を借りて、何か面白いことができないだろうか、と思った」と真利子監督はいう。その結果、かなりの毒を含んだ、それでいて妙に笑えるエネルギッシュな作品が出来上がった。加えて「イエローキッド」は、映画館大賞を毎年実施している独立系映画館主のネットワーク「シネマ・シンジケート」によって、最も将来性を期待される新人監督作品「New Director/New Cinema 2010」に選ばれ、全国主要都市の独立館を中心に順次公開されます。


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