わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

ウッディ・アレン「それでも恋するバルセロナ」

2009-06-20 16:13:39 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img106「それでも恋するバルセロナ」(6月27日公開)は、ウッディ・アレン(脚本・監督)にしては珍しいハリウッド・タッチのラブコメです。親友同士のクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)とヴィッキー(レベッカ・ホール)が、夏の休暇を過ごすためにスペインのバルセロナにやって来る。ある日、彼女らはセクシーな画家ファン・アントニオ(ハビエル・バルデム)に出会う。情熱家のクリスティーナはひと目で彼と恋におち、婚約者がいる慎重派のヴィッキーも彼に惹かれる。そんなときに、ファン・アントニオの別れた妻で激情的なマリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)が現れ、奇妙な四角関係が始まる。
                   ※
 恋愛に対して異なった姿勢を持つ3人の女性たち。「人生は無意味だから、貪欲に楽しむべきだ」という哲学を披瀝するファン・アントニオの女たらしぶり。そんな登場人物の愛の駆け引きが、陽光きらめくバルセロナの名所・旧跡を背景に、ジウリア・イ・ロス・テラリーニが歌い演奏するテーマ曲「バルセロナ」のメロディにのせて繰り広げられる。第66回ゴールデン・グローブ賞のミュージカル・コメディ部門で作品賞を受賞。第81回アカデミー賞では、エキセントリックな芸術家を演じたペネロペ・クルスが助演女優賞を獲得。
                   ※
 作品全体の印象は、観光めぐり的セックス艶笑譚といった感じ。アレン流の舌鋒鋭い自省的かつ自虐的なやりとりは、余り見られません。ただ、こんなセリフのやりとりが記憶に残っている。ヨハンソン演じるクリスティーナが、したり顔で「中国語は素晴らしい!」なんてことを言うと、「あなた、中国語がしゃべれるの」と聞き返されて、困った表情で「ニイ・ハオ・マ?」(ご機嫌いかが?)と答えるくだり。これには大笑い。
                   ※
 ウッディ・アレンの映画は余り好きではないけれど、「ボギー!俺も男だ」(72年)や「アニー・ホール」(77年)、「マンハッタン」(79年)はじめ、1970年代から80年代にかけての作品は、それなりに印象に残っています。でも最近は、独特のタッチが息をひそめて、洗練された作風を誇る巨匠になってしまったみたい。神経症的で、被害妄想的な言動と、機関銃のように繰り出される破滅的なモノローグが、いまでは懐かしくさえ思われます。

P6010062
黄金色に輝く金鶏菊(きんけいぎく)


コメントを投稿