わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

「風さそふ 花よりもなほ…」

2009-04-09 17:55:08 | 映画の話 あれこれ

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 今週は、映画よりも花見が優先でした。東京・巣鴨の義兄宅に植えられた桜の巨木(写真・上)から始まって、地元の埼玉・春日部市近郊の内牧公園、岩槻城址公園(写真・下)、そして市内各地の桜を観賞。週末は、幸手の権現堂桜堤や森林公園にも行ってみようと張り切っています。桜の花言葉は、「精神美」「すぐれた美人」だそうです。
 
 映画に登場した桜で印象に残っているのは、マービン・ルロイ監督の「心の旅路」(42年)です。記憶を喪失した男(ロナルド・コールマン)が、思い出の家で愛する妻(グリア・ガースン)と出会うラストシーン。ふたりの頭上には、昔と同じ桜の大木がそびえ、花びらを散らしている。この作品はモノクロ映画だったけれど、彼らの精神的な愛の美しさを象徴する桜の花は、まるで清らかな色彩で彩られているかのようでした。
 
 また、木下恵介監督の「二十四の瞳」(54年)では、高峰秀子扮する大石先生が、小豆島の丘にある桜の木の下で教え子たちと汽車ごっこをして遊ぶシーンがさわやかでした。吉田喜重監督の「秋津温泉」(62年)では、すべてを失った女(岡田茉莉子)が、満開の桜の下で愛する男(長門裕之)に心中を迫ります。おなじみの「忠臣蔵」では、桜の下での浅野内匠頭の切腹シーンが定番。マキノ雅弘監督「忠臣蔵  天の巻」(38年)では、片岡千恵蔵演じる浅野内匠頭が、桜の下にひそむ家来の片岡源五右衛門(澤村國太郎)と最後の対面をするシーンが感動的だった。桜吹雪の下で、浅野内匠頭が読んだ辞世の句は…「風さそふ 花よりもなほ 我はまた 春の名残を いかにとやせん 」。

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