北の杜

ニセコ・羊蹄山麓に暮らす一級建築士の奮闘記

北海道新聞社説

2008年03月16日 | まちづくり
北海道新聞の朝刊の社説に町の景観のことが載っていましたので紹介します。



社説では、「まちの景観は美しい自然だけでは足りない。暮らしや仕事の場となる建物の美しさも必要だ。生活の場を景観という資源にしなければならない。」と述べられています。
ニセコアンヌプリや羊蹄山などの自然景観だけではなく、そこで暮らしている私たちの生活そのものが景観や観光と一体としてある事だと思います。改まって行うのではなく、普段の生活や暮らしそのものが景観の一部であり、それを楽しむゆとりある暮らしをしたいと思うのです。
大勢の観光客が訪れるところなんですから、毎日がリゾートにいると思って暮らさないともったいないですね。だから、地域を大切にしていきたいと思うのです。

* 北海道新聞 社説 より転記 **************
倶知安から 景観に託すマチの未来(3月16日)
 景観を重視するか、大規模開発を優先するか-。観光を軸にマチの未来を探っている後志管内倶知安町が「景観」を選んだ。
 まちづくりの新ルールを自ら作ったことに意義がある。
 町議会が景観条例を制定した後、町がひらふ地区を中心に景観法に基づく景観地区に指定した。
 道内自治体で初の指定は、各地の注目を集める内容となった。
 画期的なのは建物の高さを二十二メートルに制限したことだ。六、七階建てにとどめ、周りの木立に隠れそうな高さとした。欧州と同様にデザインや色に基準があり、罰則もある。
 「ひらふ景気」が、この新ルールを生み出したと言っていい。
 低迷していた倶知安町の冬季観光を救ったのは外国からのスキー客。施設建設ラッシュは基準地価の上昇率を二年続けて日本一にした。大規模開発の構想も進んでいる。
 これが町を二分する景観の議論と、その後の曲折を招いたようだ。
 景観重視派は高さ四十メートルのビルがリゾートの街並みを傷つけ、観光資源の価値が下がると主張した。四年前にできた景観法をテコに、議員提案で景観条例案を出す根拠だ。
 開発優先派は観光と開発の共存は可能で、高さ規制はそれを阻むと反発した。地元業者の事業参入で地元を活性化でき、将来の新幹線開業をにらんだ布石になるとの理屈もある。
 観光がマチの発展に役立つとの考え方は同じだ。だが、観光で描く未来図と、そこに至る道筋が違う。
 賛否が渦巻く中、条例は一月の可決後に罰則内容に疑義が出され、二月に賛成八、反対七で修正された。異例の展開。しかも一票差の合意だ。
 新ルールで行政を進める立場の福島世二町長は一票差を「まさに分かれ道だ。手続きは間違っておらず、施行せざるを得ない」と今も戸惑う。
 対立した議論がそのまま残り、かじ取りの難しさがあるからだろう。
 公共事業が減る中、倶知安町は観光と農業が頼りだ。元気な観光が地元経済、つまりマチ全体の活気を作る。スキー場周辺に限る話ではない。
 マチの景観は美しい自然だけでは足りない。暮らしや仕事の場となる建物の美しさも必要だ。生活の場を景観という資源にしなければならない。
 だからこそ、まちづくりの在り方が重要になる。ぎりぎりの合意で得られた高さ制限という新ルールが、今後の倶知安町を左右するからだ。
 さまざまな建設計画が、新ルールを試すかのように出てくるかもしれない。行政も議会も町民も、重くて大切な責任を共有することになる。
 道内各地の自治体が観光に活路を求めている。倶知安町の取り組みが与える影響は小さくない。