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デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ライオンとヴァン・ゲルダーの点を線にしたギル・メレ

2012-11-04 08:55:12 | Weblog
 ブルーノート、それも1500番台は究極のジャズとも言われるが、それはアルフレッド・ライオンが惚れ込んだミュージシャンの最も熱い演奏を、レコーディング・エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーがこれぞジャズといえる音で録ったことによる。1501番のマイルスから1600番のスリー・サウンズまで、どれを選んでもジャズが一番燃えたであろう時代のドキュメントがぎっしりと詰まっているのは驚異といっていい。

 そのなかにあって1517番のギル・メレの「パターンズ・イン・ジャズ」は一風変わっている。どちらかというとハードバップ色が濃いブルーノートにあって理論的且つ実験的要素が強いからであり、その音楽は幾何学ジャズ、或いは建築学ジャズと呼ばれていた。メレのオリジナル曲はこのアルバムに4曲収められているが、テーマ部分は耐震性を強化したような複雑な構造のビルのようであり、アドリブ展開は様々なパターンの図形が絡み合い想像も出来ない模様を創り出す幾何学的パターンをみるようだ。このような印象を綴ると、ここはビルの何階か?と迷うような難解さだが・・・

 そこは天下のブルーノート、スウィングもしているからご安心を。ジェローム・カーンの「ロング・アゴー・アンド・ファー・アウェイ」はストレートな演奏で、太いアンサンブルによるテーマからメレのバリトン、エディ・バートのトロンボーン、そしてジョー・シンデレラのギターと続くソロはどこを切り取っても躍動感がある。自作曲は少々難解さもあるとはいえ、やっぱり1500番台だ、と納得できる内容だ。メレはジャケットのデザインも手がけていて、プレスティッジのセロニアス・モンク・トリオ(7027)も彼の作品だが、まるであのデザインのようにシンプルながら立体的に広がるサウンドは、メレとヴァン・ゲルダーの音世界をみるようだ。

 ヴァン・ゲルダー・サウンドとは何か?と訊かれる度にヴァン・ゲルダーは、「ヴァン・ゲルダー・サウンドとは実はアルフレッド・ライオン・サウンドだ。私はエンジニアとしてアルフレッドの望む音を何とか実現しようとした」と答えている。その望む音とはジャズファン、そしてオーディオ・マニアが求める音でもあるだろう。永遠のジャズ・サウンドを創り出した二人を会わしたのはギル・メレという、当時21歳の青年だった。