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キリシタン用語(12) 「ルシヘル」 Lucifer

2017-09-18 11:44:18 | キリシタン用語
 ダンテの「神曲」の地獄の底には魔王ルチフェロ(サタン)が氷の中に永遠に閉じ込められていることはすでに述べた(「煉獄(Purgatorio)」参照)。
 
 魔王ルチフェロ(ルシファー)はかつては光(西 luz「ルス」。英“lux”、日 照度の単位「ルクス」は関連語)の天使であったが、神に反逆したために地獄に落とされ、堕天使と呼ばれるようになった。
 
 【ウィキペディア「ルシファー」より】
 堕落の原因については諸説あるようなので、ウィキペディア「ルシファー」をご覧いただきたい。
 
 【『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』に描かれた、墜落する美しいルシファー。ウィキペディア「ルシファー」より】
 また、『天使はなぜ堕落するのか―中世哲学の興亡』という高価な本にも詳述されている。一度読んだが、残念ながら現在、手元にはないので、引用できない。
 
 本来、ルシファーは「光をもたらす者」という意味で、決して悪い言葉ではない。手元のスペイン語辞典には Lucifer(ルシフェール)の項に「男子の洗礼名」とも記されている。しかしながら、筆者はこの名前を持つ男性にお目にかかったことはないが。
 Lucio も光に関係する男子名である。アクセントは u にある。女性になると Lucía となり、アクセントが i に移動する。同様の例として、男性形 Mario (アクセントは a)に対する女性形 María(アクセントは i)があげられる。
 Lucio の名を持つ男性は個人的に知らないが、Lucía さんは何人か知り合いがいる。スペイン語では「ルシーア」と読むが、イタリア語では「ルチーア」と読む。ナポリ民謡の「サンタ・ルチア」で有名である。
 
 【聖ルチア、フランチェスコ・デル・コッサ画。ワシントンD.C.国立博物館蔵。ウィキペディア「シラクサのルチア」より】 
 Lucía は、英語では Lucy に相当する。日本語なら「ひかり」、「ひかる」、「光子」、「光代」などに当たろうか。
 さて、手元の辞書の Lucifer の項には次のような説明がある。

 スペイン語と同源同形のポルトガル語より室町時代に「ルシヘル」となる。

 「キリシタン用語集」には「ジュズフェル」という項目があり、「天狗の頭(かしら)。キリスト教における悪魔の長リュシフェルに対応する」との記述がある。
 キリシタンたちが持つ「ルシヘル」のイメージは「大天狗」のようなものだったのだろうか。
 
 ところで、スペイン語には Lucifer のほかに、lucifer と小文字で始まる別の項目がある。意味は次のとおり。
 1.[L-]明けの明星、金星
 2.悪魔、サタン、悪党
 大文字で始めようと、小文字で始めようと、あまり意味に差はないが。
 訳語の「サタン」はスペイン語では Satán で、アクセントは後ろにある。手元の辞書にはこの語についてのキリシタン用語への言及はない。
 今では「悪魔」を表す言葉としては、「ルシヘル」より「サタン」の方が一般的だろう。「サタン」という言葉はテレビドラマ『月光仮面』で覚えたような気がする。シリーズ第2部『バラダイ王国の秘宝』に登場する「サタンの爪」である。
 
 スペイン語 Satán は英語では Satan だが、発音は「サタン」ではなく、カタカナ表記では「セイタン」になろう。
 ちなみに土星は英語では Saturn で、こちらの方が「サタン」に聞こえる。スペイン語では Saturno である。
  

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