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キリシタン用語(9) 「コンヒサン」

2017-09-13 18:53:37 | キリシタン用語
  カトリック教会では信者が宗教上の罪を犯したとき、神父に告白して赦しを請う「ゆるしの秘蹟」という儀式がある。かつては「悔悛の秘蹟」や「告解」と呼ばれていたが、一般的には「(罪の)告白」で通じたかと思う。
 精神分析医がいなかったころは、その役割も果たしていたことだろう。告白する側は告白してしまえば、すっきりするだろうが、聞く側はそうはいかない。「聴罪司祭には守秘義務があり、告白によって知った罪についての完全な秘密を守るように義務づけられていて、これに背けば厳罰を科せられる」とのことである(ウィキペディア「ゆるしの秘蹟」)。
 宗教的な罪はともかく、殺人などの重大な犯罪を犯した場合も、警察に通報してはいけないのだろうか。告白など聞きたくないものである。
 「ゆるしの秘蹟」には「懺悔」という別名もある。この言葉は仏教では「さんげ」と読み、キリスト教では「ざんげ」と読むそうである(ウィキペディア「懺悔」)が、キリスト教徒は仏教徒に比べて圧倒的に少ないにもかかわらず、この言葉の読みに関してはキリスト教側の圧勝である。
 ちなみに、「礼拝」は仏教では「らいはい」と読み、それ以外は「れいはい」と読む。
 JR越後線に礼拝駅という名前の駅が新潟県柏崎市にある。「らいはい」と読む。
 
 「駅名の由来は近くの二田物部神社礼拝所から取られた」(ウィキペディア「礼拝駅」)とのことであるが、神社は仏教ではないので、上記の説明では「れいはい」と読まなけらばならない。ただ、神仏習合ということで、神道でも「らいはい」と読んでもいいのだろう。このあたりに隠れキリシタンが多ければ、「れいはい」駅になったかもしれない。

 さて、筆者には「ゆるしの秘蹟」はなじみのない言葉であった。1978年に「告解」や「悔悛の秘蹟」などの言葉から「ゆるしの秘蹟」に変更されたとのことである。「告白」と言ってくれれば、すぐわかるものを。
 キリシタン用語では「ゆるしの秘蹟」のことを「コンヒサン」と言う。例によってポルトガル語から来ている。ポルトガル語では confissão と書く。これに対応するスペイン語は confesión で、英語では confession である。
 「ゆるしの秘蹟」は正式にはラテン語で Sacramentum Poenitentiae et Reconciliationis、英語で Sacrament of Penance and Reconciliation と言うらしいが、長ったらしいので、日常的には confesión や confession で十分である。
 映画『沈黙 -Silence -』には「コンヒサン」という言葉が使われるシーンがあったように記憶している。「コンヒサン」は「コヒサン」とも言われる。手元のスペイン語辞書の confesión の項には次のような説明がある。
 
 16世紀末にキリシタン用語「コンヘション」となる。同源のポルトガル語 confissão が「コ(ン)ヒサン」となる。

 スペイン語由来の「コンヘション」はあまり聞かない。ポルトガル語の圧勝である。
 ところで、筆者は2015年末にコスタリカの古い教会を再訪した。まだ現役のようだが、告白の部屋は新しくなっていたようで、古い告白椅子が展示されていた。そこで、義兄に神父役になってもらい、筆者が告白(ごっこ)をしたわけである。例によって、何を告白したか、全く覚えていない。何か冗談を言ったかもしれない。
 
 本当の「ゆるしの秘蹟」での信者の話が面白すぎて、神父さんが大笑いしたり、笑いをこらえたりすることはないのだろうか。小さな町の教会ではみんな知り合いで、懇意にしている信者さんが「ゆるしの秘蹟」の最中、または直後に冗談を言ったりしないだろうか。こんな不真面目なことは考えてはいけない、とお叱りを受けそうである。早速、告白しなくては。
 

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