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キリシタン用語(14) 「アンジョ」の元になった天使たち

2017-09-21 17:50:28 | キリシタン用語
  地獄の魔王ルシヘルはかつては光り輝く天使であった。それも、天使の中で最も位の高い天使であった。天使の階級についてはウィキペディア「天使」より引用する。

 上位三隊 「父」のヒエラルキー
熾天使(セラフィム)
智天使(ケルビム)
座天使(王座)
 中位三隊 「子」のヒエラルキー
主天使(主権)
力天使(力)
能天使(能力)
 下位三隊 「聖霊」のヒエラルキー
権天使(権勢)
大天使
天使

 つまりルシヘルは並みの天使(angel、西 ángel)ではなく、 最高位の熾天使(してんし、seraph。seraphim は複数形。スペイン語では serafín。複数形は serafines)であった。
 さらに、ウィキペディア「熾天使」より引用する。

 偽ディオニシウス・アレオパギタが定めた天使の九階級のうち最上とされている。三対六枚の翼を持ち、2つで頭を、2つで体を隠し、残り2つの翼ではばたく。ヤハウェ神への愛と情熱で体が燃えているため、熾(燃える、などの意)天使といわれる。
 
 【「神の母」。ハリストス・生神女・セラフィムが描かれている。ヴィクトル・ヴァスネツォフ(1901年)。ウィキペディア「熾天使」より】
 
 【『ベリー公のいとも豪華なる時祷書(Très Riches Heures du Duc de Berry)』に描かれた、パトモス島の福音書記者ヨハネの図。王座の周りを4人の熾天使(セラフィム)が囲み、純粋をあらわす白いローブに身を包む24人の長老が両側に座る。ウィキペディア「熾天使」より】
 さて、「天使」を表す英語の angel はギリシア語のアンゲロス(αγγελος;angelos)に由来し、その原義は「伝令」「使いの者」である、とのこと(ウィキペディア「天使」)。スペイン語では「天使」は ángel(アンヘル)というが、その複数形が ángeles(アンヘレス)である。これに男性複数定冠詞をつけると、los ángeles になる。これが Los Angeles という地名になったわけである。スペイン語話者は今でも「ロサンゼルス」(「ロサンジュリース」の方がより英語に近い)ではなく、「ロサンヘレス」と発音する。
 ところで、ロサンゼルスを本拠地とするメジャーリーグのチームは二つある。一つはドジャースで、もう一つがエンジェルス(Angels)である。エンジェルスはスペイン語では Angeles ではなく、Angelinos といっている。チーム名の前に都市名をつけると、Los Angeles Angeles になるので、重複を避けるために Angelinos にしたのだろう。angelino は ángel に縮小辞の -ino がついた形である。縮小辞は愛情(思い入れ等)を込めるときにも使われる。言ってみれば、「天使ちゃん」といったところだろうか。
 筆者がコスタリカに住んでいた1980年ごろ、このチームのスペイン語名は現地の新聞では Serafines となっていた。並みの天使ではなく、天使の中でも最高位なので、こちらの方が Angelinos よりずっと強そうで、いいと思うのだが。 

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