スパニッシュ・オデッセイ

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Tzin Tzun Tzan

2013-09-29 10:25:33 | メキシコ

Tzin Tzun Tzan, Tzin Tzun Tzan, Have you ever been in Tzin Tzun Tzan?
 パーシー・フェイス楽団による“Tzin Tzun Tzan”「ツィン・ツン・ツァン」という曲の出だしである。1950-51年のコロンビア・レコード時代にシングル盤(もちろんSP)として発表されたものである。パーシー・フェイスというと、「夏の日の恋」(Summer Place)が代表作で、甘美なストリングスが魅力である。ところが、“Tzin Tzun Tzan”はストリングスではなく、管楽器も入ったオーケストラで、さらに歌も入っている。この曲は最近ではまず耳にすることはない。筆者が最初に耳にしたのは2005年ごろだっただろうか。もちろん、CDの中の一曲であるが、CDの一曲目に収録されていた。当時はそこそこヒットしたのだろう。
 さて、若いころ、筆者はロック派だったが、年を取るとイージーリスニングがいい。パーシー・フェイスのCDを検索していたら、たまたま写真のCDに行きついたわけである。そこに、何と“Tzin Tzun Tzan”という曲があるではないか。もちろん、こんな曲を知っているはずもないのだが、名前だけは知っていたのである。知っているどころか、行ったことがあるのである。




 1991年のこと。メキシコのほぼ中央部に位置するミチョアカン州にパツクアロ Pátzcuaroという湖がある。そのそばにTzin Tzun Tzanという何やら中国人の名前のような、小さな町がある。町というより寒村といったほうが適切だが、実は、昔はここにタラスカ王国があって、Tzin Tzun Tzanはその首都だったとのこと。アステカ王国の侵略に立ちふさがっていたそうで、当時の遺跡がある。


といっても、ピラミッドのような立派な遺跡ではなく、低い城壁っぽいもの残っているだけで、筆者が訪れたときは、観光客も全然いなかった。観光ガイドに遺跡があると書いてあったので、行ってみたのだが、城壁のそばに牛がいて、のんびり草を食んでいた。何やら、ピンクフロイドの名盤『原子心母』のジャケット写真を思わせる。
 
 原子心母
 それにしても、何でこんなさほど有名でもない町がアメリカ人作曲のメキシコのご当地ソング(全然、ラテンっぽくない)になったのだろうか。メキシコのご当地ソングは「グアダラハラ」、「ベラクルス」、「アカプルコの海」、「ティファナ・タクシー」などが有名だが、これらと比べると、「ツィン・ツン・ツァン」はどうにもマイナーである。




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ネイティブ・スピーカーによるスペイン語の誤用(26)-比較表現 

2013-09-27 11:30:22 | スペイン語
  前回までは前置きで、今回が本題のスペイン語の比較級の表現である。“He is taller than I am”に相当するスペイン語は“El es más alto que yo”でよい。これは英語の“He is taller than I”に対応する。本来は“El es más alto que yo soy”と言うのだろうが、soy が省略されるのが普通のようだ。家内もコスタリカの学校で“He is taller than I”と習ったと言っていた。スペイン語の表現をそのまま英語にするとこうなるので、不自然には感じないようだ。
 さて、スペイン語でも than に相当する que は接続詞である。ところが、動詞を省略すると一見、前置詞なので、que の後に前置詞格を持ってくる人がいる。“El es más alto que mí”とやってしまうのであるが、このような誤用を聞いたのはコスタリカの港町であり、あまり教養がありそうな感じがしない人であった。首都サンホセをはじめ、その他の地方では聞いた覚えはない。家内の話によると、“El es más alto que mí”のように言う人は結構いるらしい。ただし、これでは教養の程度が知れるというものである。スペイン語を習い始めた英語話者も同じことをやりそうである。


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主格どうしの比較―まずは、英語の場合

2013-09-25 11:01:11 | スペイン語
  今回は、中学英語に話題を変えて、比較級の話をしよう。比較級の後に「~より」を表す than を持ってくるのだが、than の後が代名詞の場合が問題である。ただ、話が複雑になるので、今回は自動詞文の主格どうしの比較に限定しておこう。
 教科書では“He is taller than I”のように習うのだが、これは不自然らしい。本当は“He is taller than I am (tall)”のように言わなければならない。than は前置詞ではなく、接続詞なのである。ところが、中学1年の段階では複文を教えていないらしい。筆者も “He is taller than I”で習ったような気がする。
 日常会話ではどう表現するかというと、“He is taller than me”である。me が目的格であるとすると、he と me で格が違うから、中学英語の段階では間違いということのようだ。me を強勢格として認めてしまえば、問題は解決すると思うのだが。

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主格か目的格か前置詞格か

2013-09-23 12:20:10 | スペイン語
 「それは私です」という場合、英語では本来なら“It is I”となるのだが、普通は“It's me”と、目的格を使うことは前回述べた。スペインではどう言うかというと、“Soy yo”である。英語に逐語訳すると“Am I”である。
 ところで、フランス語には強勢格というものもあり、「私」の場合は、moi である(主格はje)。「それは私です」は“C’est moi”(セ・ムワ)で、英語の“It’s me”に相当する。moi は同時に前置詞格にもなっている。
 スペイン語に戻る。「それは私です」というとき、英語では目的格を、フランス語では前置詞格を使うのが一般的だが、これらは強勢格ということもできるだろう。ところが、スペイン語では前置詞格の mí を使って、“Es mí”とやることはできないのである。英語話者がスペイン語を習い始めたころなら、こんな間違いも起こるだろう。
 スペイン語では前置詞格には強勢格の用法はなく、主格がそのまま強勢格にもなると言えよう。
  さて、以前どこかで触れたかと思うが、モーリス・シュヴァリエの持ち歌の一つに“Ma pomme, c'est moi”というのがある。英語に直訳すると、“My apple, that's me”であるが、なぜか「私のリンゴ」は「わたし」を強調する言い方だそうで、特に「リンゴ」の意味はない。「リンゴ」を顔に見立てたものだろうか。スペイン語に直訳すると、mi manzana だが、もちろん「私自身」という意味はない。


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主格か目的格か 

2013-09-21 20:13:23 | スペイン語
  スペイン語の代名詞には主格、所有格、目的格、前置詞格がある。1人称単数を例にとると、次のようになる。
 主格 yo
 所有格(弱形、名詞の前に来る)mi
 所有格(強勢形、名詞の後ろに来る。所有代名詞としての用法もある)mío
 目的格 me
 前置詞格 mí
 英語の場合は目的格と前置詞格は同じで、me である。
「それは私です」というばあい、文法的には“It is I”となるのだが、一般的には“It’s me”という。meはニューギニアのピジン語(mi とつづる)やハワイの怪しげな英語でも主格として用いられる。
 話は変わるが、1960年代のアメリカのヒット曲に「ルイ・ルイ」というのがあり、この中に“me gotta go”というフレーズが現れる。gotta が got to で、口語では have to に代わってよく用いられるということは何となくわかった。ただ、me が主格に立つということは高校生の筆者にとっては全く想定外であった。me ではなくて we ではないかと思って聞き直してみるのだが、どうしても“me gotta go”としか聞こえない。それで、しぶしぶ“I got to go”のことだろうと思ったのだが、違和感はずっとついて回った。

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ネイティブ・スピーカーによるスペイン語の誤用(25)saber

2013-09-18 20:30:01 | スペイン語
  誤用はまだまだ続く。動詞 saber (知る、できる)は使用頻度の高い不規則動詞である。“¿Sabe(s)?”(知ってる?)と“No sé”(知らない)抜きの会話はまずないだろう。名曲
“Quien será”「キエン・セラ」(だれでしょう)にも“Yo no sé”(I don’t know)というフレーズが出てくるので、ラテン好きな方にはおなじみである。
 直説法現在1人称単数のみ不規則であるが、この動詞はよく使うので小さな子どもでもない限り、活用を間違えるとは思えない。ところが、コスタリカでのこと。同僚の友人のコスタリカ人(決して教養がないわけではない)が、つい“sabo”とやってしまったのである。すぐ気が付いて、あわてて“sé”と言い直していたが、かなり恥ずかしそうな様子であった。


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ネイティブ・スピーカーによるスペイン語の誤用(24)不規則動詞の点過去形

2013-09-15 21:58:29 | スペイン語
  以前、怪しげな現在分詞形を紹介した記事の中で、quererと tener の点過去形の活用も怪しげになっていることも紹介した。
 1人称単数の本来の活用形はそれぞれ quise と tuve だが、それらが quisí と tuví になっていたのである。これらはプエルトリコの詩人の作品に現れているのだが、以下は Facebook で最近お目にかかった例である。
 ver(見る)の点過去の1人称単数の活用形は vi であるが、これを veí とやっていたのである。この間違いもわりとあるらしい。線過去では veía となるので、その連想も働いたのかもしれない。もう一つの可能性は次のとおりである。直説法現在の1人称単数の活用形は veo なのだが、これを規則動詞的に点過去で活用させると、 veí という形が類推される。
 いずれにせよ、 veí でも意味は分かるのであるが、やはり外国人としては、真似をすべきではないだろう。

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怪しげな現在分詞形

2013-09-10 13:15:58 | スペイン語
  以前、怪しげな現在分詞形で、quisiendo とか tuviendo を紹介した。アラゴン語としては普通らしいが、現在のスペイン語としては誤用といわざるを得ない。それぞれqueriendoとteniendo が本来のスペイン語である。
 ところが、『スペイン語史』p.182によると、quisiendo のような形は中世スペイン語にもあったようなのだ。
 fiziendo (haciendo)、toviendo (teniendo)、uviendo (habiendo)などの例が紹介されている。かっこの中は現在の標準的な形である。 ここでは、tuviendo ではなく、toviendo となっているが、tuviendo という形も当然あったと思われる。最後の例の uviendo だが、原形の haber は、かつては h があったりなかったり、また、b と v とが入れ替わったりしていたようである。
 これらに対して、一見誤用に見えるのが pudiendoである。動詞 poder(できる)の点過去の活用形の語幹は pud-である。
点過去の活用形の語幹を使用して現在分詞を作るのは、現在では一般的には誤用なのであるが、これは例外である。
 poder の現在分詞形には、かつては podiendo という形もあった。こちらの方が正しく見えるのだが、現在では間違いで、正しくは pudiendo なのである。
 もう一つ有名な例として venir (来る)の現在分詞がある。veniendo ではなく、やはり、点過去の活用形の語幹の vin- を使った viniendo が正しい。 

 

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またまた Bastardo が話題に!

2013-09-08 08:28:12 | トリビア
  最近、メジャーリーガーの薬物汚染が話題になった。中でも、大物は Alex Rodríguezであるが、その他の選手もほとんど latino(ヒスパニック)であった。この中に以前、このブログで取り上げた Antonio Bastardo投手もいる。今シーズンは出場停止処分を受けているので、その雄姿にお目にかかれないのが残念ではある。それにしても薬物に手を出すとはやっぱり、名前どおり bastardo (英 bastard)「ろくでなし」である。

 これに比べると、つい先日、話題になった bastardo(庶子、非嫡子)の遺産相続分についての判決のほうがインパクトが大きいだろう。「子どもは親を選べない」などと言われると、ごもっともだと思う。一方、親の手伝いや介護をしない非嫡子が遺産相続の時だけしゃしゃり出てきて、嫡子と同様の相続分を要求するというのも納得できない。
 それよりも、外国にいる子供を日本人の子供として認知してくれれば、謝礼をはずむというビジネスもあるらしい。日本人の正当な遺産が「ろくでなし」(bastardo、英 bastard)にわたる事態を避けるためにも慎重な対処が必要である。 


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ネイティブ・スピーカーによるスペイン語の誤用(23)

2013-09-07 11:13:58 | スペイン語
  スペイン語に限らず、印欧語族の言語は動詞の活用が大変である。英語は、活用がほとんどなくなり、声調のないシナ・チベット語族の一員になったかのような感じである。
 今回は、romper(壊す)について紹介する。これは一応不規則動詞であるが、過去分詞だけが不規則である。そのため、規則動詞と勘違いして、過去分詞をrompidoとやってしまうのである。本来は、roto が正しい過去分詞形であるが、あまりににもrompido とやる人が多くなったのか、ついには辞書にも rompido という形が記載されるまでになった。いずれは、roto が誤用とまではいかなくても、古語扱いされる日が来るかもしれない。
 英語でも get の過去分詞はかつては gotten だったものだが、今ではすっかり過去形の got が過去分詞としても使われるようになってしまった。いまどき、“I have gotten ~”なんて言うと、どんな顔をされるだろうか。 


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