スパニッシュ・オデッセイ

スペイン語のトリビア
コスタリカ、メキシコ、ペルーのエピソード
パプア・ニューギニア、シンガポールのエピソード等

仏陀 Buddha, Buda

2018-08-14 14:09:31 | 名前
 「釈迦」の尊称の「仏陀」という姓は日本にはなさそうである。「名字由来net」ではヒットしなかった。
 「仏陀」は英語表記では Buddha となるが、これだと、インドやネパールにありそうである。
 “Forebears”によると、インドに3065人、トリニダード・トバゴに3人いるらしい。ネパールにはいないようである。トリニダード・トバゴの3人はインド人ではないだろうか。
 「仏陀」のスペイン語形は Buda である。まさかスペインには Buda 姓はないだろうと思うが、念のために調べてみる。
  “Historia Apellidos”に当たってみたが、なんと Buda さんがいるのである。スペインでのランキングは第6134位。父の父姓としている人が670人、母の父姓としているのが41人。父の父姓も母の父姓も Buda、つまり Buda Buda さんは8人いる。
 多くはないにしても、珍名とはいえない。カトリック国のスペインにこんなに Buda さんがいるのはおかしい。
 Buda 姓の世界的な分布を見ると、絶対数1位はやはりインドなのだが、人口比1位は何とルーマニアなのである。スペインは絶対数で11位となっている。仏教国以外の国がトップ10に8つも入っている。これはどういうことだろうか。上位にルーマニア、ポーランド、イタリア、ハンガリーなど、ヨーロッパのキリスト教国が入っているのである(“Forebears”参照)。
 ハンガリーがランクインしていることから、はたと思い当たることがあった。ハンガリーの首都は「ブダペスト」(Budapest)だが、この町は「ブダ」(Buda)と「ペスト」(Pest)が合併してできた町である。

 【ウィキペディア「ブダ」より。中世のブダ。ハルトマン・シェーデルの『年代記』より】
 ということは、ヨーロッパの Buda 姓はハンガリーの「ブダ」の町に由来するのではなかろうか。
 ウィキペディア「ブダ」には次のような記述がある。  
 ブダ(Buda)は、ハンガリーの首都ブダペストの西側部分で、ドナウ川の西岸に位置する。ブダという名称は、フン族の王ブレダの名に由来するが、それは彼の名がハンガリー語でブダだからである。

 そうだったのか。そうすると、ヨーロッパの Buda さんは王族の末裔だろうか。当然、紋章もある。

 【“Heraldrys Institute of Rome”より】
 この紋章の Buda さんは伯爵(西 conde)とのこと。
 ついでながら、Buddha, Buda のほかに Budha, Budda 等の類似の姓もあるようである。興味がおありの方は“Forebears”をご覧いただきたい。
 ところで、Sr.(セニョール)Buda さんが Srta.(セニョリータ)Allah さんや Srta. Dios さんと結婚して子供をもうけると、子供は Buda Allah、Buda Dios という姓になるのだが。

追記(2020年5月25日)
 たまたまイギリス映画「予期せぬ出来事」(原題 The V.I.P.s)を見ていたら、オーソン・ウェルズが「マックス・ブーダ」という役で出演していた。映画の冒頭で登場人物名とそれを演じる俳優名がクレジットされていたが、「マックス・ブーダ」はたぶん “Max Buda” とつづられていたと思う。
 細かい設定もわからず、映画が始まって30分もすると、睡魔に襲われ寝てしまったので、映画自体は結局よくわからずじまいになってしまった。   
 

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「神」様、「仏」様、「大仏」様、「釈迦」様

2018-08-13 16:41:08 | 名前
 キリスト教とイスラム教がらみの姓について述べてきたが、今回は仏教がらみで攻めてみる。
 日本には「大佛」(おさらぎ)次郎という作家がいたが、これはペンネームで本名ではない。果たして、本名「大佛」さんがいるのだろうか。「名字由来net」によると、全国に約70人いるらしい。
 それでは、そのものずばりの「仏」様はいるのだろうか。こちらも実在するようで、全国に20人ぐらいいるらしい。読みはストレートに「ほとけ」である(「名字由来net」)。ありがたいような、ありがたくないような姓である。
 ついでに「神」様も調べてみた。「大仏」さんや「仏」様よりずいぶん多く、全国に14100人いるらしい。ただし、読みは「かみ」の他に、「じん」、「かなえ」、「しん」、「こう」、「みわ」、「こお」、「かん」という読みもある(「名字由来net」)ので、そのものずばりの「かみ」様はどのぐらいいらっしゃるのかよくわからない。
 仏教に戻るが、「釈迦」さまはいるのだろうか。「名字由来net」によると、現在調査中とのこと。
 お釈迦様はシャーキャ族の王子様なので、部族名の「シャーキャ」という姓はインドやネパールあたりにありそうである。 
 「ウィキペディア「釈迦」によると、シャーキャ族は梵語で शाक्य 、アルファベット表記では Śākya になる。
 “Forebears”によると、Sakya 姓は全世界に1万人いる。絶対数、人口比とも1位はネパールである。。スペインにも1人、日本にも1人いるらしい。Sakya 姓を持つネパール人も個人的に知っている。ただし、カタカナ表記では「サキャ」だったが。本人も「釈迦」のことだと言っていた。
 「釈迦」の尊称が「仏陀」だが(ウィキペディア「釈迦」)、「仏陀」については次回。

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Mahoma と Muhammad

2018-08-12 15:49:28 | 名前
 旧約聖書に現れる預言者「モーセ」の英語形 Moses やスペイン語形 Moisés (普通名詞 moisés は「赤ん坊を運ぶかご」の意。「モーセ」の語源は「かご」ではなく、「引き上げる」という意味のヘブライ語から。ウィキペディア「モーセ」参照)は姓としても使われているが、Mahoma という姓はあるのだろうか。
 “Historia Apellidos”ではヒットしなかったが、“Forebears”ではヒットした。世界中に207人しかいない貴重な姓である。絶対数でも人口比でもタンザニアがトップである。スペイン語圏には、スペイン、コロンビア、ペルーに1人ずついる。トップのタンザニアには182人、2位のジンバブエが11人だが、これらの国はスペイン語圏ではないので、スペイン語の Mahoma とは関係ないのかもしれない。
 ところで、「ムハンマド」は本来、姓ではなく個人名である。預言者ムハンマドのフルネームは「ムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ・イブン=アブドゥルムッタリブ」(محمد ابن عبد اللّه ابن عبد المطّلب Muḥammad ibn `Abd Allāh ibn `Abd al-Muṭṭalib)で、「アブドゥルムッタリブの息子アブドゥッラーフの息子ムハンマド」の意味。ムハンマド (محمد , Muḥammad)の意味は「より誉め讃えられるべき人」とのこと(ウィキペディア「ムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ」より)。
 現代でもイスラム教徒は姓を持たないのが一般的らしい(「CyberLibrarian図書館員のコンピュータ基礎講座」参照)。というわけで、Muhammad という姓はなさそうであるが、念のために調べてみる。
 いつもの“Forebears”に当たってみると、Muhammad は世界で323位の姓とのこと。絶対数でも人口比でもパキスタンが1位である。イスラム圏に多いが、上位3カ国はパキスタン、ナイジェリア、インドでアラブの国ではない。アラブ諸国ではイラク、エジプト、サウジアラビアがトップ10に入っている。日本にも32人いた。
 Muhammad 単独で姓になっているのか、それとも Bin Muhammad が姓として扱われているのか、不明な点が残念である。
  

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預言者ムハンマド(Muhammad, 西 Mahoma)

2018-08-10 17:32:16 | トリビア
 イスラム教の開祖「ムハンマド」はかつては「マホメット」(Mahomet)や「モハメッド」(Mohammed)などと呼ばれていたものである。スペイン語圏では Mahoma(マオマ)と呼ばれている。
 イエス(Jesús)の画像は無数に存在し、キリスト教徒でなくても、目にしたことはあるはずである。
 それに対し、ムハンマド(Mahoma)の画像を目にすることはほとんどない。イスラム教では偶像崇拝につながるということで、ムハンマドのご尊顔さえ拝することはできない。しかしながら、異教徒が描くことは構わないようである。もちろん、イエスと同様、想像画であろう。
 以下にいくつか紹介する。
  
 【両者とも“okdiario”より】
  右の画像にはムハンマドの言葉(スペイン語)が添えられている。「人の真の富は人が世の中に対して行う善行である」
 
 上の絵に描かれているムハンマドはのっぺらぼうになっている。「写本絵画などにおいては、預言者ムハンマドの顔には白布をかけて表現されることが多いが、これも偶像崇拝を禁止するイスラームの教義に由来している」とのこと(ウィキペディア「イスラム教」より)。

 上の絵はいかにもキリスト教徒が描いたような絵である。
 下の絵は『キリシタン用語(16)「アンジョ」』ですでに紹介してある。
 

 【ジブリールから啓示を受ける預言者ムハンマド(集史より)。ウィキペディア「天使」より】
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ゼウス(Zeus)と デウス(天主 Deus)

2018-08-07 19:36:11 | 名前
  Allah (西 Alá)、Jehovah(西 Jehová)、Yahweh について述べてきたが、ラテン語、及びポルトガル語で「神」を表す Deus (西 Dios)に戻る。
 Deus という語はギリシャ神話の主神ゼウス(英西 Zeus)と関連がありそうである。早速、小学館『西和中辞典』Zeus の項に当たってみる。

 
 【1680年にスミルナにて発見されたゼウス像。ウィキペディア「ゼウス」より】
 Zeus はギリシャ語 Zeús に由来し、関連語に dios, día があることが明記されていた。dios との関連はわかるが、día との関連がいまひとつよくわからないので、今度は día の項を調べる。
 día(英 day)は基本語彙中の基本なので、辞書でこの語を引くことはあまりない。ところが、día には「空」(cielo) という意味もあるのである。大体、神様は天空にお住まいのようなので、Zeus と día の関連性は納得がいった。
 次に、ウィキペディア「デウス」の項を調べてみる。
 その中の「語源論」には次のように記されていた。

 インド・ヨーロッパ祖語の *dyēus 「天空、輝き」に由来する。*dyēus (ディヤウス)はプロト・インド・ヨーロッパ人の多神教の最高神であり、ギリシア語のゼウスやラテン語のdeus、サンスクリットのデーヴァ、古ノルド語のテュール等の語源となった。

 ところで、Zeus という姓はあるのだろうか。“Historia Apellidos”ではヒットしなかったが、“Forebears”ではヒットした。
 それによると、世界中に2681人、Zeus さんがいる。絶対数1位はドイツで、人口比1位はギリシャである。スペインは8人で19位。ブラジルが2位、メキシコが3位に入っている。日本にも1人いるようである。紋章は見当たらなかった。
 

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エホバ(Jehová)とイエス(Jesús)

2018-08-06 20:27:13 | 名前
  アラブ地域の聖書では「ヤハウェ」を「アッラーフ」と表記している(ウィキペディア「アッラーフ」)ことはすでに紹介した。
 すなわち、「アラー」(Allah、西 Alá)は「ヤハウェ」(Yahweh、Jehovah、西 Jehová「ヘオバ」)と同一人物(?)である。
 今回は「ヤハウェ」について述べるが、「ヤハウェ」は「エホバ」とも呼ばれている。その理由については小学館『西和中辞典』Jehová の項より引用する。

 もともとヘブライ語では子音字のみを使っていたため、旧約聖書で yhvh の形で表記されていたが、後代の人が別の母音時を挿入して読んだため、本来の Yahweh とは異なる形ができた。

 Jehová の関連語として、Jesús(ヘスス)、Juan(フアン)があるとのことである。
 そうすると、Jesús も調べなければならない。『西和中辞典』Jesús の項には次のように記載されている。

 Jesús ←[後ラ]Jesus ← [ギ]Iesous ← [ヘブライ]YeshuaYehoshuaYahweh「神」+ yeshuah「救い」:「神は救い主」が原義)] 

 次に Juan を調べる。Juan は英語 John のスペイン語形で、聖書に出てくる「ヨハネ」(使徒及び洗礼者)に関連があることは知っていたが、語源までは調べていなかった。

 Juan ← [古西]Johan ← [中ラ]Jo(h)annes ← [ギ]Ioannes ← [ヘブライ]Yohanan (「神は恵み深い」が原義)

 Jesús も Juan もありがたい名前であることがわかった。Juan の英語形 John は日本では犬の名前にもなっているが、愛犬ジョンの名前を呼ぶたびに、飼い主は神に感謝しなければならない。
 さて、Allah 姓があったように、Jehovah, Jehová, Yahweh などの姓はあるのだろうか。
 “Forebears”にあたってみたところ、Jehova 姓はある。ただし、全世界に26人という超激レアな姓である。アメリカが絶対数1位(ただし、8人)で、スペイン、ペルー、メキシコ、ベネズエラ、ニカラグアに1人ずついる。スペイン語圏ではアクセント記号(tilde)をつけて、Jehová とつづるのだろう。
 Jehovah という姓は見つからなかったが、Jehovah S, Jehovahs という姓ならあった。どちらも Jehová よりいくらか多いものの、全世界で100人にも満たない。
 それでは、Yahweh さんはどうか。“Forebears”によると、全世界でただ一人、インドにいるらしい(“Forebears”)。 世界でただ一人とは Yahweh の名にふさわしい。
 Yaweh, Yehweh などの姓もあるが、全世界で数人である。ただし、Yawe さんは全世界に9070人いるようで、これが Yahweh のような姓では最も数が多い(“Forebears”)。ウガンダに8960人ぐらいいるらしいが、これは Yahweh とは無関係のような気がする。

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Allah のスペイン語形 Alá

2018-08-05 11:22:25 | スペイン語
 Allah のスペイン語形は Alá だが、小学館『西和中辞典』Alá の項に Allah についての語源が記されているので、紹介する。
 アラビア語の定冠詞 al- + Ilah「神」が Allah になったとのこと。
 ウィキペディア「アッラーフ」には次のような記述がある。  
  
 アッラーフ (الله, Allāh) は、「神」を意味するイラーフ (إله, ilāh) に定冠詞アル (ال, al) がついたアル・イラーフ (الإله) の短縮形、あるいはなまったものである。ユダヤ教では神をエロヒム、エルと呼ぶが、アラム語、ヘブライ語、アラブ語などが近縁の語族であるためである。

 そういえば、天使の名前には「ミカエル」、「ガブリエル」をはじめ、語末が -el になっているものが多いが、el は「神」の意味であることはすでに紹介している(『キリシタン用語(15)「アンジョ」のお仕事』参照)。

 Allah(西 Alá)と Dios(英 God)は全然別のものという印象が強いが、実は同じである。
 スペイン語で、「~だったらいいのに」(英 I wish + 仮定法)は ¡ojalá!(オハラ)というが、この語の中にも Alá が潜んでいる。日常、よく使う表現で、Alá を意識することはないが、この語が生まれた経緯は次のとおり。
 まず、アラビア語の“wa sha Allah”「神の思し召しがありますように」から古期スペイン語 oxalá(オシャラ)になり、それが現代スペイン語の ¡ojalá! になった(小学館『西和中辞典』¡ojalá! の項より)。
熱心なカトリック教徒の中には ¡ojalá! の中に Alá があるからといって、何も目くじらを立てる人がいるかもしれないが、Alá はイスラム教徒だけのものではないので、気に病む必要はない。。
 さて、Allah 姓はスペインにもあるが、スペイン語形の Alá さんはいるのだろうか。調べてみたが、残念ながら、“Historia Apellidos”でも“Forebears”でもヒットしなかった。

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「アラー」は「エホバ」?

2018-08-04 16:07:26 | トリビア
 Allah 姓が存在することはわかったが、Allah は「神」という意味のことばなので、「アラーの神」という言い方はおかしい。「太平洋ベルト地帯」、「サルサ・ソース」、「ワゴン車」などもこの類である。
 道案内の外国語標識に「姫路城」の英語表記として Himeji-jo Castle のように書かれていることがある。jo(城)は castle なので、これも重複しているのだが、これは許す。
 Himeji Castle だと、castle を知らない、または聞き取れない日本人が外国人に道を聞かれた場合、ちゃんと姫路城への道を教えることができるかどうか心配である。
 それはともかく、Allah という言葉については、ウィキペディア「アッラーフ」より引用しておく。
 
 元来、アラビア語でアッラーフは英語でいう God である。そのため、現在ではアブラハムの一神教といわれるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通の唯一絶対神を指す。ちなみにアラブ地域の聖書ではヤハウェを「アッラーフ」と表記している。例えば、東方正教会のアンティオキア総主教庁、アッシリア東方教会(ネストリウス派)、シリア正教会 (非カルケドン派)などでは、創造主を「アッラーフ」と訳している。
(中略)
 また、前述のとおりアッラーフはアラビア語で特定の神を指し示す言葉であることから、イスラーム発祥当時のアラビア語を母語とするユダヤ教徒・キリスト教徒も唯一神であるヤハウェをさしてアッラーフと呼んでいた。
(中略)
 ただし、考古学的見地では、ヤハウェとイスラーム教の唯一神アッラーフは別の起源であり、イスラム教の唯一神アッラーフは、630年以前は、カアバ神殿に祭祀されていた最高神の呼称である。イスラム教でいうジャーヒリーヤ(無明時代)に、カアバ神殿に祭祀されていた360の神々の最高神がアッラーフとされていた。
 
 要約すると、God も Dios も Allah も結局「唯一絶対神」のことで、言語が違うだけのことである。
 また、Allah は今では唯一絶対神となっているが、かつては神々のうちで一番えらい神(ギリシャ神話のゼウスのようなものか)だった。ユダヤ教・キリスト教の「ヤハウェ」(Jehovah、「エホバ」ともいう)も同様だったらしい。マックス・ウェーバーの『古代ユダヤ教 (上) (岩波文庫)』、『古代ユダヤ教 (中) (岩波文庫)』、『古代ユダヤ教 (下) (岩波文庫)』にそのような記述があったはずだが、手元にないので、確認できない。
 

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「アラー」(Allah) 姓はあるか

2018-08-03 17:56:28 | 名前
 キリスト教の「神」の意味の姓は Dios(西)、Deus(ポルトガル語、ラテン語)、Dieu(仏)などがあった。
 多神教の Dioses(西:神々)や Diosa(西:女神)等の姓もあった。
 それでは、イスラム教の神「アラー」はどうであろうか。
 ウィキペディア「アッラーフ」には日本語表記として「アッラーフ」の他に「アラー」、「アッラー」があることが述べられているが、「アラー」が一般的ではなかろうか。アルファベット表記では Allah となる。
 ということで、Allah で検索してみる。
Forebears”に当たってみると、ヒットした。世界中に Allah さんは55000人強、いる。絶対数1位はパキスタン、人口比1位はモーリタニアである。絶対数8位まではイスラム諸国で、9位にインドが入っている。インドはヒンドゥー教の国ではあるが、イスラム教徒も13%(1億8千万人)いる(ウィキペディア「インドにおけるイスラーム」)。9位には何と米国が838人でランクインしている。スペインには33人、フランスには61人いるらしい。
 
 【アッラーフの紋章(イスタンブール・アヤソフィア)。ウィキペディア「アッラーフ」より】
 スペインはかつてはイスラム圏だったが、国土回復(reconquista)によって、カトリック国家になった。イスラム教徒は迫害・弾圧されることになるが、詳細はウィキペディア『モリスコ』を参照されたい。
 「モリスコ」とは「カトリックに改宗したイスラム教徒」のことだが、カトリックを装って、実際はイスラムの信仰を守っている人たちもいたようである(日本の隠れキリシタンを想起する)。「モリスコ」はスペイン語では morisco とつづるが、これは moro(ムーア人、モーロ人)の派生語である。moro とは北アフリカのイスラム教徒で、肌も浅黒い。ここから moreno (褐色の)という語ができ、姓にもなっている(スペインでのランキングは第15位。“Historia Apellidos”による)。
 moros(モーロ人たち)を殺し(matar) まくったことになっているのが Matamoros(matar + moros)だが、これはスペインの守護聖人、聖ヤコブ(Santiago) の別名である。Matamoros という姓もあることはすでに述べている(“Santiago Matamoros”参照)。
 前置きが長くなったが、スペインにおいて、レコンキスタ直後に偽装改宗カトリック教徒が Allah 姓を名乗ることはありえない。この姓を持つ人がキリスト教徒とも考えにくい。最近になってスペインに流入したイスラム教徒の移民、または難民が Allah 姓を名乗っているのか、それとも、偽装改宗カトリック教徒が最近になって、元のイスラム教を堂々と信仰し、それまでのスペイン風の姓を捨てて、Allah 姓を名乗ったのだろうか。
 話は変わるが、2017年4月21日付の“Reuters”(ロイター通信)に“娘の姓に「アラー」、ジョージア州が認可”という記事が発表されていた。詳しくはリンクをご覧いただきたい。その中の興味深い一説を引用する。

 イスラム教の市民団体「米イスラム関係評議会」(CAIR)の代表は、たとえば「アブドゥラ」(アラーの僕の意味)など、アラーに由来した名前の人はたくさんいるが、姓に「アラー」の語を単独で使用することは文化的に受け入れられないと述べた。 

 そうすると、パキスタンなどにいる Allah さんたちは文化的に受け入れられていないのだろうか。
 

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フランス語の「神」様 、Dieu 姓

2018-08-02 16:15:11 | 名前
 スペイン語で「神」を表す Dios、ラテン語・ポルトガル語の Deus は姓として使われていることはすでに紹介したが、それではフランス語 Dieu はどうであろうか。
 フランスはカトリック圏とはいえ、Christ が姓として使われていない点で、Cristo が姓として使われているスペイン・ポルトガル・イタリアとは事情がやや異なる。
 とにかく、“Forebears”に当たってみる。
 すると、ちゃんとあるではないか。しかしながら、絶対数でも人口比でも第1位はベトナムである。確かに、ベトナムはフランスの植民地だったが、ベトナム人の姓までフランス風になってはいない。ベトナムは中華文明圏に属すので、ベトナム人の名前は今でも中国風である。フィリピンは中華文明圏ではなかったので、スペインの植民地になって、名前もスペイン語風になってしまった。
 ということで、ベトナムの Dieu さんはフランス語とは関係ないものと思う。ベトナム語には疎いので、ネットで調べてみる。“Sketch Travel”には次のように記されている。

diều 鳶、凧
diễu 旋回する
diệu 上手な、巧妙な、巧みな
điêu でたらめを言う
điều 言葉、事、事柄、口実
điếu 弔問する、パイプ、煙草
điệu 態度、調子、調べ、捕らえる

 このうちのどれかが姓になったのだろうか。ただ、Dieu 姓はウィキペディア『ベトナム人の姓の一覧』には記載されていない。
 蕭(Tiêu、しょう、ティエウ)という姓ならあるが、これと関係があるのだろうか。
 さて、“Forebears”によると、Dieu 姓はやはりフランス語圏に多い。ベトナムの Dieu さんは「神」様ではなさそうなので、第2位のルワンダが「神」様の Dieu さんとしてはトップかもしれない。ルワンダはベルギーの植民地だったので、フランス語も公用語の一つである。第3位にフランスが入る。フランス語圏以外では第8位にドイツ、第9位にメキシコがランクインしている。スペインには10人いるようである。スペインには Dios, Deus, Dieu と神様が揃っている。どれもレアな姓なので、これらの人たちどうしで結婚することはまずなさそうだが、是非結婚してニュースになってほしいものである。
  Dieu 家の紋章は以下のものが見つかった。
 
 【“Heraldrys Institute of Rome”より】
 “Heraldrys Institute of Rome”Dieu 姓の解説文(フランス語)によると、Dieu 家は高貴な出のようである。
 

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Diosa (女神)姓と Dioses(神々)姓

2018-08-01 07:19:15 | 名前
 Dios 姓があることはすでに紹介した。Dios は唯一絶対神(英 God)である。英語で god と小文字で書くと、多神教の神々のうちの一人になるが、スペイン語でも同様に dios と小文字で始めると神々のうちの一人である。
 多神教の神様には男性神もいれば、女性神もいる。英語の女性神は goddess となるように、スペイン語でも dios の女性形 diosa である。
 まさか、diosa が姓になっていることはあるまいと思ったが、念のために調べてみる。
 何と、これがあるのである。“Historia Apellidos”によると、Diosa 姓のスペインでのランキングは47868位。かなり珍しい。世界的な分布は“Forebears”で調べる。それによると、絶対数でも人口比でもトップはコロンビアである。確かにコロンビアは美人大国で、Diosa(女神)と呼びたくなるような美人が多いことだろう。しかし、あまり美人でもないお方の姓が Diosa だと何の女神かと訝しがられることだろう。
 Diosa 姓は、やはりスペイン語圏に多いが、ロシアが6位、ウクライナが8位、オランダが9位、カザフスタンが10位にランクインしている。スペイン語圏以外の Diosa さんは「女神」様とは関係ないかもしれない。Diosa 家の紋章は見つからない。美の女神、ビーナスをモデルにした紋章を勝手に作ってみてもいいのだろうか。
 ところで、多神教の神々は dioses というが、Dioses というとんでもない姓が本当にあるのである。“Historia Apellidos”によると、スペインでのランキングは37392位。世界的な分布を見ると、絶対数でも人口比でもペルーがトップである(“Forebears”参照)。
 絶対数1位のペルーには7837人。第2位のフィリピンには451人なので、ペルーはダントツの1位である。スペインは6位で65人。なんと日本にも1人いる。
 ペルーもフィリピンも今でこそカトリックの影響が強いが、スペイン人に征服されるまでは多神教の世界だったはずである。スペインもキリスト教が入る前はやはり多神教の世界だったことだろう。Dioses 姓はその名残なのだろうか。Dioses 家の紋章は残念ながら見つからなかった。
 ペルーの Dioses 家の方々はインカの神々をモチーフにした紋章を作ってみてはいかがだろうか。
 
 【インカの創造神ビラコチャ。ウィキペディア「インカ神話」より】  

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