スパニッシュ・オデッセイ

スペイン語のトリビア
コスタリカ、メキシコ、ペルーのエピソード
パプア・ニューギニア、シンガポールのエピソード等

スペイン語もどきのジャズの曲:Sonny Rollins のアルバム“What's New”より

2015-08-03 07:57:32 | スペイン語タイトルのジャズの曲
  ソニー・ロリンズのアルバム“What's New”はラテン風の曲で占められているが、スペイン語のタイトルの曲はない。ただし、スペイン語風のタイトルの曲はある。“Bongoso”と“Bluesongo”がそれである。
 “Bongoso”は、いかにもスペイン語風である。“bongo”に形容詞語尾の“-oso”(英語の“-ous”に相当)をつけた形容詞のようであるが、手元の辞書にはこんな単語は見当たらない。
 この曲は“bongo” が活躍するので、“bongoso” という語をでっちあげたものと想像される。“conga”が活躍すれば、“congoso”、“maracas”活躍すれば、“maracoso”というタイトルになったことだろう。
 楽器ではないが、ハエ(mosca)がブンブン飛んでいれば、“Moscoso”で、あの野球選手の名前になる。
 もう1曲、“Bluesongo”というタイトルの曲があるが、カタカナ表記では「ブルーソンゴ」となっていた。もし、スペイン語だったら、「ブルエソンゴ」とならなければならない。当然、こんな言葉は辞書には載っていない。
 この曲も“bongo” が活躍するので、“blues + bongo”の合成語かと思われる。ただ、これだと [b]音が余分であるが、ないほうがいくらかスペイン語っぽいような気もする。
 「ブルーソンゴ」という発音だけから語源を推測すると、“blues + hongo(オンゴ)”の可能性もある。で、“hongo”とは何かというと、「キノコ」である。そうすると、「ブルーソンゴ」は「ブルース茸」ということになるが、キノコの着ぐるみを着た淡谷のり子がブルースを歌う場面をつい想像してしまった(アメリカの“blues”と日本の「ブルース」は別物だが)。シュールな世界ではある。


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スペイン語もどきのタイトルのジャズの曲:Sonny Rollins (3)

2015-08-02 08:12:08 | スペイン語タイトルのジャズの曲
 ソニー・ロリンズのアルバム“What's New”のジャケットには次のように書かれている。
 “Sonny Rollins brings to jazz a new rhythm from South America”
 オリジナル・ジャケットの裏面には以下のように書かれていた、と解説の油井正一氏が1973年に再発された日本盤ライナーノートで回想している。
 “All Kinds of Latin Percussion -- plus the new rhythm from Brasil, the Bossa-Nova”
 アルバムが発売された1963年当時、ボサノバがブームになっていたが、このアルバムにはボサノバなど、1曲も入っていない。ボサノバ・ブームに便乗したキャッチ・コピーである。
 このアルバムは、ラテン・リズムの曲で占められていて、ロリンズお得意のカリプソものもある。前回、触れたように、カリプソは、南米ではなく、カリブ海地域の音楽であり、ラテンと言っていいかどうかは疑わしい。
 ラテン・パーカッションはコンガとボンゴ、その他の打楽器と書かれているが、“All Kinds” と言えるかどうかはわからない。
 昔は、いい加減なキャッチ・コピーやライナーノートが横行していたものだ(最近の事情は知らない)。

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スペイン語もどきのタイトルのジャズの曲:Sonny Rollins (2)

2015-08-01 10:07:08 | スペイン語タイトルのジャズの曲
  ソニー・ロリンズの両親は米領バージン諸島の出身である。米領バージン諸島の西にはスペイン領バージン諸島があったが、今ではプエルトリコの一部になっている。というわけで、米領バージン諸島はラテンアメリカとは言えないが、プエルトリコに近いこともあり、ラテンアメリカの雰囲気が濃厚なのではないかと想像する。
 カリプソはバージン諸島を含むカリブ海の島々で生まれた音楽で、ロリンズもカリプソを取り入れた曲があるが、1956年のリーダー・アルバム『サキソフォン・コロッサス』に収録されている「セント・トーマス」が中でも有名である。
 これに次ぐのが“What's New”に収録されている“Don't Stop The Carnival”だろう。

    

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スペイン語もどきのタイトルのジャズの曲:Sonny Rollins

2015-07-31 08:29:14 | スペイン語タイトルのジャズの曲
  スペイン語のタイトルのジャズの曲もそろそろネタ切れの感がある。ラテン・ジャズ、ラテン・ロック、フリオ・イグレシアスに代表されるスパニッシュ・ポップ、オーソドックスなラテンナンバーのタイトルがスペイン語なのは当たり前で、話題にするほどのこともない。ここでひとまず、打ち切って、話題を変えよう。
 ジャズの曲のタイトルには辞書に載っていないものもある。
 つづりを逆にしたものがその一例だが、マイルス・デイビス(Miles Davis)のアルバム“Live-Evil”(Evil は Live の逆つづり)には Miles の逆つづり、Selim や、Davis の逆つづりの Sivad というのもある。

 しかし、何と言っても一番の有名どころはソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の「エアジン」(Airegin)だろう。Nigeria の逆つづりである。
 逆つづりのほかには造語という手もある。ロリンズは言葉遊びが好きなようで、スペイン語もどきのタイトルの曲もある。


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スペイン語のタイトルのジャズの曲:Chick Corea の “El Bozo”(9)

2015-07-30 08:40:52 | スペイン語タイトルのジャズの曲
チック・コリアというと、1972年に発表された“Return To Forever”があまりにも有名で、その他のアルバムがかすんでしまっているような印象がある。
 その中の一つに1976年に発表された“My Spanish Heart”がある。
 
 アルバム・タイトルから作品名にスペイン語のものがあるのではないかと予想されるが、やっぱりあるのである。
 それは“El Bozo”である。意味は「(上唇の上に生える)薄ひげ、口のまわり、(馬の)端綱」であるが、形容詞形は“bozal”で、「未熟な、間抜け、野生の、荒い、スペイン語のできない(下手な)」という意味である。
 “bozo”は英語にも取り入れられているが、「奴,野郎、とんま」という意味になっている。形容詞の方の“bozal”は米国南西部の英語に“bosal”「(馬の)端綱」という形で入っている。
 さて、この曲のタイトルの“bozo”はどんな意味だろうか。
 まず、ジャケット写真はチック・コリアの1976年当時の若い時のものだろうが、上唇の上に生えているのは、薄ひげではなく、立派な口髭である。それとも、これは付け髭で、実は「薄ひげ」なのだろうか。「馬の端綱」か、はたまた、「とんま」なのだろうか。
 チック・コリアはスペインの血を引くと入っても、ご先祖様がアメリカに来て、何世代もたっていれば、チック・コリア自身、スペイン語ができなくなっているということも十分考えられる。そうすると、“bozo”は「スペイン語ができない(下手な)」という意味かもしれない。
 ともかく、この曲は歌詞がないので、“bozo”の意味が何かは想像の域を出ないのである。


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スペイン語のタイトルのジャズの曲:Chick Corea の “El Bozo”(8)

2015-07-29 07:48:27 | スペイン語タイトルのジャズの曲
  Chick Corea の本名は Armando Anthony Corea だったが、ミドルネームを抜くと、Armando Corea である。
 Armando はよくある男子名だが、“armando” は動詞 “armar” の現在分詞形でもある。
 “armar” は名詞 “arma” (英 arm)の派生語で、本来は「武装させる」の意味だが、「艤装する、組み立てる、据え付ける、補強する、準備する、組織する、たくらむ、引き起こす、(巻きたばこを)巻く」等の意味もある。
 Armadno Casas という名前を持つ男性は実在の可能性大であるが、小文字で “armando casas” とやると、「(プレハブの)家を組み立てる、据え付ける」という意味になり、大工さんにぴったりの名前になる。詳しくは「Armando Casas」の項を参照されたい。
 “armando Corea” だと、「朝鮮を組み立てる」というよりは、“armar” の本来の意味である「武装させる」で、「朝鮮・韓国を武装させる」ということになろう。北朝鮮の軍事パレードにチック・コリアが招かれて、演奏する場面を想像してみたが、やっぱり似合いそうにない。
 まさか、チック・コリア自身が“armando Corea”の意味を知っていて、これはまずいと思い、愛称の“Chick”を表に出してきたというわけではないと思うが。
 ちなみに、“armar” の反意語は “desarmar”(英 disarm、「武装解除する、軍備を縮小する」等)だが、“armando Corea”よりは、“desarmando Corea (del Norte)”「(北)朝鮮の武装解除、軍縮(特に核兵器)」であってほしいものだ。  


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スペイン語のタイトルのジャズの曲:Chick Corea の “El Bozo”(7)

2015-07-28 10:02:54 | スペイン語タイトルのジャズの曲
 “Corea”に戻るが、この姓はチック・コリア以外には知らない。ただし、“Correa”という姓は比較的、ありふれた姓であろう。普通名詞としては「革紐」という意味である。
 発音も近い。“Corea”の方はだいたいだれでも発音できるが、“Correa”の方は“rr”の発音がやや難しい。舌先を上の歯茎につけて、何度も弾くように発音する。「ルルルル」のような感じである。これは、ネイティブ・スピーカーでもできない人がいる。筆者もコスタリカで、この発音ができないというネイティブ・スピーカーに出くわしたことがある。ブラジルのポルトガル語では“rr”(および語頭の“r”)は「ハ」行音を表すようになっている。もともとは、スペイン語同様の発音だったが、ブラジルではうまく発音できない人が多かったのだろう。
 そういうことで、ひょっとして、チック・コリアの爺さんの姓は“Correa”だったのだが、うまく発音できないので、移民局で、これ幸いと、発音が易しい“Corea”にしたということもありうる。または、移民局の職員がつづりを書き間違えたということも考えられないでもない。
 しかし、普通に考えれば、やっぱり“Corea”は“corear”(合唱する、合唱曲を作曲する)と関連付けるのが自然であろう。


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スペイン語のタイトルのジャズの曲:Chick Corea の “El Bozo”(6)

2015-07-27 07:19:24 | スペイン語タイトルのジャズの曲
  姓の変更(微調整)の例を挙げる。筆者の知人のコスタリカ人にセルビアからの移民の子孫がいる。セルビア人の姓は「誰それの息子」の意味の「何とかビッチ」さんが多い。例えば、テニスのジョコビッチはセルビア語では“Đoković”とつづられるが、英語では“Djokovic”と表記されている。
 英語やスペイン語では語尾の“c”は普通名詞であれば、[k] 音を表し、決して「チャ」行の子音を表すことはない。固有名詞であっても、事情を知らなければ、語尾の“c”は [k] 音で読んでしまうだろう。
 そういうわけで、筆者の知人の「何とかビッチ」さんは “-vic” ではなく、“-vich”と表記されている。
 姓を完全に新しいものに変更している人たちもいる。コスタリカの中国系住民の中には中国人の姓をスペイン語風に変えてしまっている人たちもいる。“Sánchez”と“Sancho”がその典型だが、詳しくは「コスタリカにおける中国系、東欧系の姓」の項を参照されたい。


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スペイン語のタイトルのジャズの曲:Chick Corea の “El Bozo”(5)

2015-07-26 09:35:43 | スペイン語タイトルのジャズの曲
 アメリカなどに移民した後、姓を完全に変えてしまうわけではないが、少し変更するケースもある。
 一例をあげる。スージー・クワトロ(Suzi Quatro)の姓 “Quatro” はポルトガル語で「4」の意味である。スペイン語の「4」は“cuatro” とつづるが、発音はポルトガル語と大体同じである。イタリア語では“quattro” である。
【若き日のスージー・クワトロ】
 ところが、スージー・クワトロはポルトガル系ではないのである。父方の爺さんがイタリア系で本来の姓は“Quattrocchi”だったのだが、移民局の役人がうまく発音できないので、“Quatro”にされてしまったんだとか(英語版ウィキペディアによる)。
 で、元の姓“Quattrocchi”は普通名詞としては、「眼鏡をかけた人」という意味である。quattrocchi とはquattro (4) + occhi (occhio「目」の複数形)がつまって、“o”が一つ脱落した形である。「四つの目」が直訳であるが、日本でも眼鏡をかけた子が「四つ目」と言ってからかわれていたことを思い出す。コスタリカでも同様に、“cuatro ojos”と言ってからかっているようであるが、“Cuatrojos”という姓の人にはお目にかかったことはない。


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スペイン語のタイトルのジャズの曲:Chick Corea の “El Bozo” (4)

2015-07-25 09:27:59 | スペイン語タイトルのジャズの曲
 チック・コリア(Chick Corea)の姓の“Corea”だが、スペイン語では「韓国・朝鮮」の意味で、英語の Korea に相当する。スペインには“Japón”(日本)という姓を持つ人々もいて、祖先は、遣欧使節団の支倉常長一行で現地にとどまった人たちの子孫といわれている。しかし、その昔、朝鮮から南イタリアやスペインに渡って、現地に住み着いたという人の話は聞かない。また、逆に南イタリアやスペインから朝鮮に渡って、関係を築いた人たちがいたという話も聞かない。
 そうすると、“Corea” には他の意味があるのではないかと思って、調べてみたら、ありました。
 スペイン語には“corear” という動詞があり、「合唱する」、「(合唱曲を)作曲する」、「口をそろえて賛同する」、「除草する」(ペルーのみ)という意味である。小難しそうな言葉だが、名詞“coro”(英 chorus)の派生語だろう。“corea”は“corear”の直説法現在3人称単数の活用形である。
 チック・コリアのスペイン系のご先祖様は合唱曲の作曲家だったのかもしれない。
 イタリア語にも“coro”という名詞(スペイン語と同形・同義)があるが、“corear”に相当する動詞は手元の辞書には見当たらない。
 いずれにせよ、チック・コリアは、「合唱曲」ではないが、ジャズの「作曲」家でもあるので、“Corea” は作曲家にぴったりの姓ではないか。


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スペイン語のタイトルのジャズの曲:Chick Corea の “El Bozo” (3)

2015-07-24 09:35:58 | スペイン語タイトルのジャズの曲
  Chick Corea の“chick” には、古語「(愛称として)人間の子供」という意味もあった。一方、スペイン語には“chico”という語がある。「小さい」という意味の日常用語だが、「少年、若者」という意味にもなる。「少女、若い女の子」は“chica”である。日本語の愛称「チコ」ちゃん(三田明の「ごめんねチコちゃん」という曲があった)は、スペイン語圏では男と思われてしまうので、「チコ」ちゃんは「チカ」ちゃんに変更されたい。
 “Chico” といえば、ジャズ・ドラマーの Chico Hamilton がいるが、本名は Foreststorn Hamilton である。ラテン系かどうか、確認できないが、容貌はラテン系っぽい。
  
 Hamilton はスペイン系の姓ではないが、英米系の姓を持つヒスパニックもいる。2015年現在、読売ジャイアンツに在籍している Anderson 選手はキューバ出身である。 
 さて、“chico”は“Oye, chico”「おい、君」という呼びかけにも使われるが、なれなれしいので、使用するときは十分注意されたい。
 チック・コリアも、チコ・ハミルトンも、スペイン系の親や祖父母に“Oye, chico”と呼びかけられていたのかもしれない。チック・コリアの場合は、“chico” を英語風に“chick”にしたものと考えられないでもない。
 まさか、「臆病者」だったので、“chick” と呼ばれたわけではないだろう。「美少女」のような「美少年」だった可能性もあるが、比較的新しい写真を見ると、太ったミック・ジャガーのようで、とても三田明のような「美少年」には見えない。 


 なお、Chico については、“Chico”の項も参照されたい。
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スペイン語のタイトルのジャズの曲:Chick Corea の “El Bozo” (2)

2015-07-23 12:15:24 | スペイン語タイトルのジャズの曲
  チック・コリアは本名 Armando Anthony Corea である。“Chick” はニックネームだが、chick は chicken の語尾消失形でもある。
 chicken の語源は“chick ( = cock)+ en (縮小辞)”で、原義は「小さい雄鶏」である(電子辞書による)。chicken は「ひよこ」だけでなく、「鶏肉」の意味でも使われるが、スペイン語でも「ひよこ」を意味する“pollo”(英語 poultry「家禽の肉」は pollo の関連語) が「鶏肉」の意味でも使われる。
【以下、加筆】手元の電子辞書によると、鶏肉は「英国では魚屋で売っているのが普通」とある。筆者は英国へ行ったことがないので、わからないが、本当ですか。ご存知の方がいらっしゃったら、ご教示願いたい。
 そういえば、シーチキンという名のツナ缶があるが、シーチキンと名付けた人は、このことを知っていたのかもしれない。ウィキペディアによると、シーチキンの名前の由来は、味が鶏肉のささみに似ていることからとの由。【以上、加筆】 

 chicken には「若い(魅力的な)娘」という意味もあり、「娘さん」という呼びかけにも使われる。
 また、「チキン・レース」ということばも若い人たちには解説する必要もないことばになっているかと思う。どちらが先に臆病風を吹かすかという競争で、chicken は「臆病者」という意味にもなる。
 “yellow”も「臆病者」という意味があるが、「ひよこ」(chicken) は羽毛が黄色いので、そこから、“yellow”も「臆病者」の意味を持つようになったのではないだろうか。エルビス・プレスリーの映画で、エルビスが“yellow”と言われて、けんかになった場面があったような記憶がある。


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スペイン語のタイトルのジャズの曲:Chick Corea の“El Bozo”

2015-07-22 15:14:42 | スペイン語タイトルのジャズの曲
  チック・コリア(Chick Corea)は今では、ジャズ・ピアノの大御所といってもいいだろうが、筆者がジャズを聴き始めた時は、まだまだ新鋭だった。
 容貌からして、いくらか黒人の血も流れているのではないかと思ったが、調べてみると、南イタリアとスペインが父祖の地で(英語版ウィキペディア)、黒人の血は入ってなさそうである。
    
    【若き日のチック・コリア。英語版 Yahoo!より拝借】
南イタリアとスペインは北アフリカのイスラム教徒に支配されていた時期もあるので、当然、ムーア人(モーロ人、北アフリカのイスラム教徒)の血も入っているであろう。ムーア人はネグロイドではなく、コーカソイドだが、肌の色は浅黒い。チック・コリアの黒人っぽさは、ムーア人の血のためかと思われる。
 ところで、スペイン語で「黒人」を意味する“moreno”という言葉は、“moro”に由来するということは、「Santiago Matamoros」の項で述べているので、参照願いたい。
 【以下、加筆しました】
 いつもの余談だが、あのカール・マルクスについて、次のような記述がウィキペディアにある。
 
 マルクス自身もその色黒と意地悪そうな顔から娘たちやエンゲルスから「ムーア人」や「オールド・ニック(悪魔)」と渾名された。マルクス当人は娘たちには自分のことを「ムーア人」ではなく、「オールド・ニック」あるいは「チャーリー」と呼んでほしがっていたようである。


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スペイン語のタイトルのジャズの曲:Frenesí

2015-07-20 09:54:28 | スペイン語タイトルのジャズの曲
 “Frenesí”(フレネシー)はジャズというより、ラテン・ナンバーであるが、アーティー・ショー(Artie Shaw)が取り上げ、ジャズの曲としても大ヒットした。
 タイトルの“Frenesí”(フレネシー) は辞書を引くと、すぐに見つかる言葉で、「熱狂」という意味である。アクセントは最後にあるのだが、日本語では「レ」の上に来るのが一般的なようだ。
 frenesí は英語では frenzy に相当する。frenzy と frenesí。意味も形も似ているので、語源は同じかなと思って調べてみた。手元のスペイン語辞書に「関連語」として掲載されているものは語源が同じと考えてよさそうであるが、frenesí の関連語には frenzy は載っていなかった。そうすると、語源は違うのかとも思うが、確認できていない(ご存知の方がいらっしゃれば、お教えください)。
 さて、“Frenesí”は軽快なナンバーであるが、あまり「熱狂」という感じはしない。どこか抑制されているような感じがする。
 frenesí という言葉を分解してみると、frene + sí になる(これはあくまでも言葉遊びであって、学術的な分解ではない)。 
 後ろの sí は特にスペイン語を知らなくても、“yes”の意味だということぐらいはわかるであろう。
 前の frene は動詞 frenar の丁寧な命令形にもなる。frenar とは何かというと、「ブレーキをかける」、「抑制する」という意味である。「ブレーキ」は freno で、frenar とともに、車を運転する人には必須の語彙である。 
 そうすると、frenesí は“Frene”「ブレーキをかけて」+“Sí”「はい」という、短い会話になる。
 frenesí(熱狂)状態の時に、「ブレーキをかけて」といわれて、「はい」と素直に従うようでは、「熱狂」とは言えないのではないか。    
 “Frenesí”というタイトルの割りには、どこか抑制された感じがするのも当然といえば、当然か。


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スペイン語のタイトルのジャズの曲:Soy Califa (4)

2015-07-19 10:21:30 | スペイン語タイトルのジャズの曲
 キリスト教世界でカリフは全然なじみがないのではないかと、前回述べたが、そうでもなさそうである。「アラビアン・ナイト」はディズニーのアニメでも取り上げられたように、アメリカの庶民にも親しまれているのではないか。
 「アラビアン・ナイト」によく出てくるカリフがハールーン・アッ=ラシード(Hārūn al-Rashīd)で、西暦800年ごろのアッバース朝第5代カリフで実在の人物である。「ドラえもん のび太のドラビアンナイト」にも登場している人気者である(ウィキペディア)。
  【写真はウィキペディアより拝借】
 “Soy Califa”のカリフがハールーン・アッ=ラシードかどうかはともかく、ラテン・リズムを使って、アラビアン・ナイト風のエキゾチックな味付けをしたということだろうか。
 ところで、カトリック国であり、イスラムは敵だったスペインの言葉で、“Soy Califa”(私はカリフ)というのも考えてみれば、おかしな話ではある。
 
 手元の辞書の califa の項に、イスラム支配下の「スペインでは929年に Abderramán 3世がカリフを名乗り、コルドバ・カリフ国を創設した」とあるから、このカリフなら、スペイン語で“Soy Califa”と言ってもおかしくはないだろうが(ただ、この時期、ラテン語から変化して、現代のスペイン語の母体になる言語が成立していたかどうか、調べなくてはならない)。

 それはともかく、カトリックであるはずのラテンと、敵であるはずのイスラムをくっつけてしまった強引さには感心してしまうが、これまた、堅いことは言いっこなしということか。
 
 さて、カリフは正式には1924年に廃止されたが、「2014年には、イラク、シリア両国にまたがる地域を掌握した過激派組織ISILが、支配地域における国家としての独立と、指導者のアブー・バクル・アル=バグダーディーのカリフ即位を宣言した」(ウィキペディア)とある。ただ、「この即位について、現時点ではイスラム社会を含め国際社会で承認する動きはない」とのこと(同上)。

 “Soy Califa”を含むアルバム、“ Swingin' Affair” が発表されたのは1962年のことだから、「私はカリフ」といっても、人畜無害だったが、今「私はカリフ」というと、危険人物扱いされそうである。
【追記 スペイン語のタイトルのジャズの曲:Soy Califa (2)の末尾に一句詠みました】


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