ちゃんとしたシャワー設備がない、コスタリカの家庭では calentador(「温めるもの」の意)というインスタント温水器を取り付けることもある。値段もそう高いものではない。電熱器をシャワーに取り付けたようなものだろうか。これは、浴室の天井近くの水道栓に直接取り付ける。スイッチはあるものの、配線がむき出しで、水がかかれば、感電しそうな代物であるが、感電死したという話は聞かない。配線がむき出しとはいっても、一応ビニールで覆ってはいるからだ。それでも、最初は恐る恐る、スイッチに触っていたものだ。
calentador をオンにしても、熱湯は出てこない。ぬるま湯程度である。コスタリカではぬるま湯でもあまり問題はなかった。シャワーで十分で、湯船付きのバスルールは金持ち専用の印象だった。それでも、あまり湯船は使っていなかったのではないかと推測する。一般家庭では、シャワーのみである。コスタリカ人は朝シャワーを浴びる。バスに乗っても体臭がきつくて困ったような記憶はない。
ペルーの一般家庭の事情はよく知らないが、筆者が借りていた一軒家では、シャワーで苦労したことはない。ペルーのリマは緯度は南緯12度、海抜は数メートル程度なので、暑そうだが、フンボルト海流(寒流)のせいで、あまり暑くない。冬は寒いぐらいである。寒い時でも、湯がぬるくて困った記憶はない。湯船はあったけれど、シャワーで済ませていた。
ペルーの先住民、特に山の民はあまり入浴しないようで、体臭がきつくはなくても、におう人は結構いた。リマでも、筆者の知る先住民系の人たちはあまり入浴しないのではないかと思われた。
メキシコの借家では最初、温水が出ないで困った。メキシコ・シティーは北緯20度ぐらいだが、標高は2,200メートルぐらいある。冬は結構寒い。当然、温水設備はある。筆者の借りた家では、ガスで温水を作っておくタイプだったが、温度設定は室内ではなく、室外の設備で行うタイプのものだった。最初、温度設定が最低になっていて、とても湯船に湯を張れる温度ではなかった。そうとも知らず、湯船を満たしたものの、寒くて入れなかったことがある。次の日、室外の温水設備を見に行って、温度設定の場所をやっとのことで見つけ、最高の温度に設定しなおした。それでも熱湯にはならない。せいぜい45度ぐらいだっただろうか。これで、湯船を満たして、やっと入浴できる。45度の湯を入れても、湯船のタイルが熱を吸収して、40度ぐらいの温度になる。ちょうどいいが、早くしないとぬるくなる。湯船のそばにガラス張りのシャワー設備があるので、そちらで体を洗い、湯で流すのであった。
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