スパニッシュ・オデッセイ

スペイン語のトリビア
コスタリカ、メキシコ、ペルーのエピソード
パプア・ニューギニア、シンガポールのエピソード等

元横浜大洋ホエールズのポンセ選手(1)

2018-02-28 17:18:49 | 名前
  ミャーン選手が大洋ホエールズで活躍したのは1978年から80年にかけてであったが、1985年から90年にかけて横浜大洋ホエールズで活躍したのはポンセ選手である。「カルロス・ポンセ」の名前で登録されていた。ポンセ選手は『スーパーマリオブラザーズ』のマリオに似ていたので、「マリオ」と呼ばれ、ファンに親しまれていた。

ポンセ選手、フルネームは「カルロス・アントニオ・ポンセ・ディアス」(Carlos Antonio Ponce Díaz)。ミャーン選手と同じく、プエルトリコの出身である。
 
ポンセ選手の個人名は Carlos Antonio、父の父姓は Ponce、母の父姓は Díaz である。
 個人名の Carlos も Antonio もごくごくありふれた名前である。母の父姓の Díaz もよくある姓で、この姓を持つプロ野球選手もいたかと思う。
 それでは、父の父姓の Ponce に入ろう。“Historia Apellidos”によると、Ponce はスペインでは211位にランクインしている。あまり多くはなくても、珍しくはない。Ponce Ponce さんはスペインに279人いる。世界的な分布では、絶対数でメキシコ、人口比ではホンジュラスに多い。
 Ponce の意味は何だろうと思って、『西和中辞典』を調べてみたが、出てこない。
 “Mis Apellidos.com”というサイトで、Ponce を調べてみると、概略次のようなことであった。
 フランス起源で、貴族的な姓であるとのこと。Poncelet(ポンスレ)という貴族に由来するらしい。
 
 【某 Ponce 家の紋章。“Plusesmas.com”より。紋章は盾型の部分のみ。周囲はいうなれば額縁】
 そういうことなら、フランス語辞典も見なければならない。ponce も poncelet もあった。ponce は普通名詞「軽石、色粉」等の意味で、poncelet は物理学用語で、「仕事率の単位(毎秒100キログラム・メートル)」とのこと。
 仕事率といってもよくわからないので、ウィキペディア「ポンスレ」に当たってみた。以下に引用する。

 ポンスレ(poncelet、記号:p、pq)は、かつてフランスで用いられた仕事率の単位である。その名前はジャン=ヴィクトル・ポンスレ(Jean-Victor Poncelet)に由来する。
 1ポンスレは、1秒間につき1キンタル(= 100キログラム)の重量を1メートル持ち上げるときの仕事率(100 kgf·m/s)と定義されている。

 Jean-Victor Poncelet さんはポンセ選手の遠い親戚にでもなるのだろうか。
 ついでながら、手元のフランス語辞典には Ponce Pilate という項目もある。これは「ポンティウス・ピラト」(西 Pontio Pilato)のことで、イエスの処刑を許可したローマのユダヤ総督である。敬虔なキリスト教徒の間では悪名高き人物である。しかし、これはスペインの Ponce さんとは関係あるまい。関係があったら大変である。

 
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元大洋ホエールズのミャーン選手(3)父の父姓 Millán

2018-02-27 18:24:49 | 名前
  元大洋ホエールズのミャーン選手(Félix Bernardo Millán Martínez)。
 
 今回はお待ちかねの父の父姓、Millán である。このつづりで「ミャーン」と読むのかと、亡父が驚いていた記憶がある。
 ll はスペイン語では本来「リャ」行の子音、硬口蓋側面接近音[ʎ]を表す。この音は「ヤ」行や「ジャ」行の子音としても発音されている。コスタリカでは「ジャ」行になるが、プエルトリコでは「ヤ」行になるのだろう。
 ということで、「ミャーン」は「ミリャン」、「ミジャン」とも発音される。
 さて、Millán 姓はミャーン選手以外に知らないので、珍しいのかと思っていたが、そうでもないようだ。“Historia Apellidos”によると、スペインでのランキングは197位。全然珍しい部類に入らない。世界的な分布を見ると、絶対数ではメキシコ、人口比ではベネズエラに多い。
 父の父姓も母の父姓も Millán、つまり、Millán Millán という人はスペインに259人いるとのこと。gato (英 cat)がニックネームになっている Millán Millán さんはどのくらいいるだろうか。
 “Apellido Millán”というサイトによると、Millán 姓は古くからあり、起源はアラゴン(Aragón)らしい。
 
 【アラゴン州】
 Milla、Millá という姓もある。Millán がアラゴン語なのに対して、Milla、Millá はカタロニア語とのこと。
 
 【某 Millán 家の紋章】
 スペイン語には milla という普通名詞がある。意味は「マイル」(英 mile)である。milla は mil (千)の関連語でもある。Millán という姓は1マイルごとに置かれたマイルストーンに由来しているのかと思ったら、そうでもないらしい。
 “Plusesmas.com”(plus es más ?スペイン語の plus は「ボーナス・臨時手当」の意)というサイトによると、Millán は Emiliano または Emilio の異形とのこと。これらはラテン語 aemilius に由来し、その意味は「一生懸命がんばって仕事をする人」だそうである。
 さて、ミャーン選手のご先祖様はアラゴン出身のようである。そうすると、個人名の1つ、Bernardo もアラゴン語形の Bernal にした方がよかったかもしれない。
 結論として、ミャーン選手はがんばって、首位打者も取ったので、姓の意味に違わない選手だったと言える。
 

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元大洋ホエールズのミャーン選手(2)個人名 Bernardo

2018-02-26 16:47:14 | 名前
  元大洋ホエールズのミャーン選手。
 
 【なぜか「マルチネス・ミャーン」】
 Félix の他にもう一つ個人名がある。それは Bernardo である。これは英語の Bernard に相当する。珍しい名前ではない。
 『ヨーロッパ人名語源事典』(梅田修著)という、ヨーロッパに古くからある人名の由来についての本があるが、現在は手元にはない。かなり高価なので、ちょっと手が出ない。
 
 しかたがないので、ネットで“Bernardo”について検索してみた。“Tu Parada”には“Audaz como un oso. De origen germano.”と記されている。
 意味は「熊のように大胆。ゲルマン起源」ということである。“audaz”(アウダス)に関連する英単語には“audacious”(大胆な)やその名詞形の“audacity”がある。
 ゲルマン起源ということなので、Bernardo の“ber”の部分が「熊」に当たるのではないかと推測する。英語では「熊」は bear、ドイツ語では Bär である。
 スペイン語では「熊」は oso (メスは osa)という。osar という動詞もあり、意味は「大胆にも行う、敢えてする」で、「熊」(oso)との関連が窺える。
 ところで、-nardo で終わる名前には Leonardo がある。スペイン語版ウィキペディア“Leonardo (nombre)”には次のような記述がある。

 Leonardo es un nombre propio masculino de origen germánico, derivado de Leonhart, y su significado es «aquel que es fuerte como un león».​ También puede ser del latín Leo (león).

 要約は次のとおり。
 
 ゲルマン起源で、Leonhart に由来する。意味はライオンのように強い人。ラテン語の Leo (ライオン)に由来する可能性もある。

 Bernardo に戻る。
 Bernardo に似た形、Bernal という名を持つコスタリカ人を個人的に知っている。ひょっとして、Bernardo の異形ではないかと思い、Bernardo との関連を調べてみた。スペイン語版ウィキペディア“Bernardo (nombre)”にはヨーロッパ諸語の“Bernardo”に対応する形が書かれていた。その中に Bernal があった。これはアラゴン語(aragonés)であった。
 
 【スペインにおけるアラゴンの位置 (赤)、ウィキペディア「アラゴン州」より】
 アラゴンはかつてはアラゴン王国であった(詳しくはウィキペディア「アラゴン王国」を参照願いたい)。
“conmishijos”(con mis hijos、コン・ミス・イホス。英:with my sons)というサイトには Bernal は Bernaldo の語尾消失形と書かれている。Bernardo ではなく、Bernaldo で r と l が入れ替わっている。スペイン語とポルトガル語の間にもこのような例はある。 
 Bernal の名を持つコスタリカ人のご先祖様はアラゴン出身だったのだろうか。

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元大洋ホエールズのミャーン選手(1)個人名 Félix

2018-02-25 17:12:24 | 名前
 今回は、1978年から80年にかけて大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)で活躍したミャーン選手。メジャーリーグで活躍後、大洋に入団。1979年には首位打者のタイトルを取っている。
 ミャーン選手のフルネームは Félix Bernardo Millán Martínez。日本では単に「フェリックス・ミャーン」と呼ばれていた。
 
 Félix Bernardo が個人名、Millán が父の父姓、Martínez が母の父姓である。ミャーン選手、アメリカ国籍だが、出身はアメリカの属領、プエルト・リコなので、名前もスペイン式である。
 個人名の Félix は英語ではアクセント記号が取れて、「フィーリクス」と発音されるが、ミャーン選手の場合はスペイン語なので、「フェリックス」でよい。スペイン語には félix という普通名詞はないが、feliz ならある。「幸せ」という意味で、発音は「フェリス」である。こちらは姓にもなる。“Historia Apellidos”によると、スペインでのランキングは1744位。多くはないが、珍名というわけでもない。世界的な分布を見ると、絶対数でも人口比でもドミニカ共和国に多い。メジャーリーグにもこの名前の選手がいるが、NHKのアナウンサーは「フェリーズ」と発音している。アメリカ人アナウンサーの英語読みをそのまま、まねているだけのようだ。
 日本には「フェリス女学院」というのがあるが、こちらの「フェリス」もてっきりスペイン語の“feliz”かと思っていたら、実はそうではなく、“Ferris”というアメリカ人の名前なんだとか。
 例によって、また脱線してしまった。
 ミャーン選手のニックネームは「キャット」(cat)で、登場するときの曲はアメリカの古典的アニメ「フィリックス・ザ・キャット」のテーマ曲であった。日本語版もあり、日本でも結構人気があった。
 ミャーン選手の個人名 Félix にちなむニックネームでもあろうが、父の父姓の Millán(ミャーン)が猫の鳴き声「ニャーオ」(英語では mew、スペイン語では miau)を連想させるからでもあろう。
 ちなみに「ネコ」は学名を“Felis silvestris catus”というが、別名を“Felis silvestris domesticus”、“Felis catus domestica”ともいう。スペイン語では「家庭の幸せ」は“feliz doméstica”というが、そういえば、『幸せになりたければ、ネコと暮らしなさい』という2016年の暮れに出版された。
 そういうわけで、アニメの「フィリックス・ザ・キャット」のネコの名前が「フィリックス」なのは当然である。ネコの名前としては『トムとジェリー』の「トム」(Tom)もある。「雄ネコ」のことを tomcat というので、Tom もネコの名前にふさわしい。ついでに、tomboy という英単語もあるが、これは、まるで男の子 Tom、つまり「おてんば娘」ということである。
 いろいろと脱線したが、ミャーン選手の個人名 Félix と Feliz という姓を組み合わせると、Félix Feliz という名前が出来上がる。何とも幸せいっぱいの名前である。

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元読売ジャイアンツのサンチェ選手(4)なぜサンチェスではないのか?

2018-02-24 13:25:28 | 名前
  元読売ジャイアンツのサンチェ選手。
 
 Sánchez とつづるが、なぜか登録名は「サンチェ」である。Sánchez のカタカナ表記は「サンチェス」でいいし、ありふれた姓なので「サンチェス」はなじみがある。
 当初、サンチェ選手は「サンチェス」と呼ばれていたはずであるが、すぐに「サンチェ」に変わってしまった。「サンチェス」の発音が難しいわけではない。
 Sánchez の語尾の z はスペイン本国では[θ](英語の think や thank などの“th”で表される音)で発音されるが、ラテンアメリカでは[s]音で発音される。
 ところが、音節末の[s]音が[h]音に変化(気音化)したり、消失したりする地域があるのである(“Comerse las eses [heces]”参照)。
 
 サンチェ選手はベネズエラのスクレ(Sucre)州の出身である。
 
 【赤く塗られた地域がスクレ州】
 この州は音節末の[s]音が[h]音に変化(気音化)したり、消失したりする地域に含まれている。そうすると、当然、サンチェ選手自身は Sánchez を「サンチェス」ではなく、「サンチェ」と発音したことだろう。本人がそう発音するものだから、登録名も「サンチェ」になったものと思われる。
 さて、サンチェ選手。2005年2月4日、脳血管疾患のためベネズエラで死去。享年51歳。早すぎる死であった。2年間という短い期間であったが、印象に残る選手であった。ご冥福をお祈りする。

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元読売ジャイアンツのサンチェ選手(3)母の父姓 Sánchez

2018-02-23 16:52:38 | 名前
  元読売ジャイアンツのサンチェ選手。フルネームは Luis Mercedes Escobar Sánchez。
 
 今回は母の父姓 Sánchez について。
 この姓はスペインでのランキングは“Historia Apellidos”によると、第7位。メジャーな姓である。絶対数ではメキシコ、人口比ではスペインに多い。
 Sánchez 姓はスペイン西部に多い。黄色の部分で表されている地域である。
 
 【スペイン語版ウィキペディア“Sánchez”より】 
 以下は有名な Sánchez 家の紋章である(同上)。

Sánchez は Sancho の息子という意味であるが、小学館『西和中辞典』の Sancho の項にはまず、「サンチョ3世大王:ナバラ王(在位1000-35)」が出てくる。次に「サンチョ:男子の洗礼名」と続く。
 サンチョといえば、『ドン・キホーテ』(Don Quixote)の従者、「サンチョ・パンサ」(Sancho Panza)を連想する。
 
 「パンサ」(panza)は「腹、太鼓腹」の意味なので、「サンチョ・パンサ」は当然太っちょである。
 Sancho は姓としても使われる。スペインでは第192位。Sánchez と比べるとずいぶん少ないが、それでも珍しい姓ではない。絶対数ではスペインに多く、人口比ではコスタリカに多い。そういえば、筆者の知り合いにも Sancho を姓にしている女性がいた。彼女は祖父が中国人だったが、中国系コスタリカ人には Sánchez や Sancho 姓を名乗る人が多いらしい。中国系ではないコスタリカ人女性から「私は中国人ではないけれど、Sánchez よ」と自己紹介されたことがある。
Sánchez や Sancho の他には León (英 lion、スペインでは56番目に多い姓)を名乗る中国系コスタリカ人も結構いるらしい。マカオに女房殿の従兄がいて、その息子の嫁さんが「梁」(Leong)さんだった。中国系コスタリカ人の León さんは本来「梁」さんだったものと推測される。
 中国系コスタリカ人の Sánchez さんや Sancho さんはもとは「宋」さんや「孫」さんだったのだろうか。 
  

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元読売ジャイアンツのサンチェ選手(2)父の父姓 Escobar

2018-02-22 14:13:01 | 名前
元読売ジャイアンツのサンチェ選手。フルネームは Luis Mercedes Escobar Sánchez。 姓を1つだけ名乗るときは、父の父姓を名乗るのが一般的だが、サンチェ選手は母の父姓を名乗っている。メジャーリーグでもプレーしていたので、念のために調べてみたが、やはり Escobar ではなく、Sánchez で登録されていた。
 母の父姓を日常的に使うのにはいくつか理由がある。その一つは父の父姓がありふれているが、母の父姓が珍しくてインパクトがある場合である。代表例がピカソである。長い名前で有名だが、父の父姓は Ruiz で、スペインでのランキングは12位。それに対して Picasso は29898位である。ピカソは当初、簡単に Pablo Ruiz Picasso と名乗っていたが、ある時期から Picasso だけになったそうである(ウィキペディア「パブロ・ピカソ」)。
 もう一つは、父母が離婚か何かの理由で、子供が母親に育てられた場合である。正式には父の父姓と母の父姓の両方が登録されるのだが、父親にはなじみがないので、日常的には母の父姓を使用する。実際、このような例を個人的に知っている。
 サンチェ選手の場合は後者に当たるのだろう。父の父姓の Escobar(エスコバール) はスペインでのランキングは195位で、珍しいものではない。
  父の父姓と母の父姓の2つとも名乗る場合もある。有名なのはマンボの王様、ペレス・プラード(Pérez Prado)やノーベル賞作家のバルガス・リョサ(Vargas Llosa)、詩人のガルシア・ロルカ(García Lorca)などである。Pérez Prado はどちらもありふれた姓で、どちらか1つだけではもの足りないのだろう。スペイン語を知る前は Pérez が個人名で、Prado が姓だと思っていたものである。ちなみに、Pérez Prado の個人名は Dámaso である。
 さて、今回は父の父姓である Escobar について述べる。スペインでのランキングは195位で、特に多くはなくても珍しくはない。世界的な分布を見ると、絶対数で多いのはコロンビア、人口比ではエルサルバドルに多い。
 
 【エニシダ】
 スペイン語には escobar という語は2つある。1つは名詞で、「エニシダ林」の意。もう1つは動詞で「ほうきで掃く」という意味である。Escobar 姓は「エニシダ林」から来ているのだろう。
 「ほうきで掃く」escobar の元になる名詞「ほうき」は escoba という。「ほうき」の意味の他に、「植物の枝の束、エニシダ、やせた女性、トランプ遊びの一種」という意味もある。
 defensa escoba はサッカー用語で、「スイーパー」という意味になる。
 
 サンチェ選手はメジャーリーグのエンジェルスでもプレーしていた。MLBの公式サイトで調べてみると、何と Escobar ではなく Escoba となっていた。誤植(?)か、それともニックネームが Escoba(ほうき)だったのかはわからない。
 同一カード全勝の場合、「スイープする(sweep)」というが、これにあやかって、「ほうき」の escoba がニックネームになったのかもしれない。  



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元読売ジャイアンツのサンチェ選手

2018-02-21 17:06:45 | 名前
 再び、往年の印象深いラテンアメリカ出身の選手の名前の紹介に戻る。今回は1986年と87年のシーズンに読売ジャイアンツでプレーしたサンチェ選手。
 
 フルネームは「ルイス・メルセデス・エスコバル・サンチェス」(Luis Mercedes Escobar Sánchez)。登録名はなぜか「サンチェス」ではなく、「サンチェ」。[s] の発音が難しいわけではないのに、どうしてこうなったのか。それについては後で述べることにする。
 さて、サンチェ選手。Luis Mercedes が個人名、父の父姓が Escobar、母の父姓が Sánchez である。
 Luis の英語・フランス語形は Louis で、英語形はスペイン語同様、カタカナ表記では「ルイス」だが、フランス語では「ルイ」と発音される。フランスの王様の名前として有名だが、サンチェ選手はフランス王にあやかったのかどうかはわからない。よくある名前である。
 Mercedes はベンツ社の高級乗用車の名前として有名である。ウィキペディア「メルセデス・ベンツ」によると、「メルセデス」とは、1899年当時、ダイムラー車のディーラー(販売代理店)を経営していたオーストリア=ハンガリー帝国の領事でありユダヤ系ドイツ人の富豪であるエミール・イェリネックの娘の名前である、とのこと。
 高級車の Mercedes は日本では会社名の「ベンツ」(Benz)と呼ばれるのが一般的だが、欧米では Merecedes と呼ばれるのが普通のようで、コスタリカでも Mercedes である。
 どうして、日本では Mercedes ではなく、Benz と呼ばれているのか。ちょっと理由を考えてみた。Mercedes はスペイン語である。それに対して Benz はいかにもドイツ語っぽい響きがある。「ドイツ」製を強調する心理が働いて、Mercedes ではなく、Benz と呼ばれるようになったのではなかろうか。
 また、話が散らかってしまった(内田百閒流の表現)。
 Mercedes はスペイン語圏では女性名として、よく用いられている。筆者も個人的に何人か女性の Mercedes さんを知っているが、男子名として使われていることは知らなかった。
 Mercedes は普通名詞 merced(恩恵、慈悲。英 mercy)の複数形である。人名に使われる場合は、「(神の)恩恵、慈悲」という意味であろう。フランス語の「ありがとう」は merci だが、この語の本来の意味は「恵み」である。スペイン語の merced に対応するようだが、フランス語の merci は現在では「ありがとう」の意味でしか使われない(手元のフランス語辞典)。
 スペイン語で、普通名詞を個人名として使う場合は、男女ともに使えるようである。Rosario (数珠)もその例である。最初に知った Rosario さんは女性だったが、その後、男性の Rosario さんとも知り合いになった。  
 Mercedes は姓としても用いられている。スペインでのランキングは6286位。あまり多くはない。世界的な分布を見ると、絶対数でも人口比でもドミニカ共和国に多い。
 単数形の Merced も姓になる。スペインでのランキングは53346位で、かなり珍しい。この姓を持つメジャーリーガーもいた。MLB の公式サイトでは Orlando Luis Merced と紹介されている。プエルトリコ出身である。NHKでは「マーセッド」と英語風に呼んでいたが、スペイン語では「メルセッ」である。
 それはともかく、Mercedes Merced Mercedes (英 Mercies Mercy Mercies)という人物がいる可能性はあるが、漫画の登場人物のようである。

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阪神タイガースのドリス選手(2)父の父姓 Dolis

2018-02-18 16:45:40 | 名前
 阪神タイガースのドリス投手。フルネームは「ラファエル・ホセ・ドリス・エルナンデス」(Rafael Jose Dolis Hernandez)。
 
 今回は父の父姓の「ドリス」(Dolis)についてである。
 初め、「ドリス」と聞いたときは、女性の名前かと思った。「ドリス・デイ」の「ドリス」を思い浮かべた。ただし、女性名の方は Doris とつづる。
早速、Dolis を“Historia Apellidos”で調べてみたが、ヒットしない。そこで、“Geneanet”というサイトに当たってみると、フランス在住の Dolis さんがずらっと並んでいる。フランス全土に約1000人いるようである(“Descubra el origen del apellido”参照)。発音は「ドリス」ではなく、「ドリ」かもしれない。
 キューバ出身である「デスパイネ」(Despaigne)や「デストラーデ」(Destrade)もフランス起源の姓であるが、ドミニカ共和国にもフランス起源の姓があるようである。
 Dolis の場合、スペインにはこの姓を持つ人はいないようなので、ドリス選手のご先祖様かどうかはわからないが、フランス人の Dolis さんがフランス植民地であったハイチに農園主として渡っていったのであろう。その後、政変があり、キューバに逃げたフランス人がいたが、ドミニカ共和国にも逃げた人もいたのではなかろうか。イスパニョラ島(スペイン語では La Española だが、ハイチ語では Ispayola)の西側のハイチから東側へ行くとドミニカ共和国である。
 それとも、フランス人農園主はキューバに逃れたが、農園の黒人奴隷はハイチにとどまり、フランス人農園主の姓 Dolis をもらうか、または勝手に名乗るかしたのだろう。その後、ドミニカ共和国へ流れていったのだろうか。
 

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阪神タイガースのドリス選手

2018-02-17 14:26:26 | 名前
  セットアップのマテオ投手の次はクローザーのドリス投手の登場である。
 
 【ドリス投手】
 マテオ投手とヘアスタイル、口ひげ、あごひげがよく似ているので、遠くからだと区別がつきにくい。
 
 【マテオ投手】
 マテオ投手と同じく、ドミニカ共和国出身の出身で、フルネームは「ラファエル・ホセ・ドリス・エルナンデス」(Rafael José Dolis Hernández)である。
 個人名が Rafael José で、父の父姓が Dolis 母の父姓が Hernández である。母の父姓の Hernández は何度も出てきているので、触れない。
 個人名の José もごくごくありふれた名前で、すでに何度も紹介しているので、これまた省略。
 Rafael (英 Raphael) も天使の名前の一つとしてどこかで紹介しているとは思うが、何しろ記事が1000近くになったので、調べるのも大変である。重複するかもしれないが、述べておく。
 
 【天使ラファエル】
 ウィキペディア「ラファエル」から引用する。
 
 ラファエルという名前はヘブライ語で「神は癒される」という意味であり、ユダヤ教の伝統で癒しを司る天使とされている。
 
 天使の名前には「ミカエル」、「ガブリエル」、「ウリエル」等、「~エル」(-el) で終わるのが多い。-el は「神」で、天使の名前は「神(の、に、が等)~」という意味を表している。

 欧米には天使由来の名前も多い。「ミカエル」はスペイン語では Miguel、「ガブリエル」は Gabriel となる。
 

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阪神タイガースのマテオ選手(3)母の父姓 Lora

2018-02-16 17:02:33 | 名前
  阪神タイガースのマテオ選手。フルネームは「マルコス・アウレリオ・マテオ・ロラ」(Marcos Aurelio Mateo Lora)。今回は母の父姓の Lora である。
 
 なんとなく女性の個人名のようだが、そちらは Laura とつづり、発音も「ラウラ」である。Laura は英語読みすれば「ローラ」となる。
 姓 Lora は“Historia Apellidos”によれば、スペインでのランキングは856位。多くはないが、珍名でもなさそうである。世界的な分布は、絶対数でも人口比でもドミニカ共和国がトップである。マテオ選手もドミニカ共和国出身である。
 lora と小文字で書くと、普通名詞で「メスのオウム」の意味であるが、ラテンアメリカでは「醜い女、おしゃべりな女」、「腫れ物、ただれ」という意味にもなる。
 loro と語尾を変えると、男性名詞になる。意味も lora とほとんど同じだが、念のために小学館『西和中辞典』より引用する。
 
 1.《鳥》オウム、インコ:オウム目の鳥。大形のものをオウム、小形のものをインコという。
 2. おしゃべりな人
 3.《口》醜い女、老いて醜くなった女
 4.《俗》トランジスタラジオ、ラジカセ
 5.《ラ米》(1)(チリ)尿瓶;拷問;[複]鼻(水)。(2)(チリ)スパイ;(盗賊の)見張り役。(3)(ベネズエラ)かみそり
 
 lora が姓として使われているので、それではと loro も姓になっているかどうか、“Historia Apellidos”で調べてみた。
 あった。スペインでのランキングは3106位。Lora よりはかなり少なくなっている。世界的な分布を見ると、絶対数ではブラジル、人口比ではイタリアに多い。
 ただ、イタリア語には loro という代名詞がある。3人称複数男性・女性形の人称代名詞で主格としても目的格としても使われる。さらには所有格、所有代名詞としても使われている。ということは英語の they, their, them, theirs をすべて表すわけで、便利なのか、不便なのかよくわからない。
 イタリアの Loro さんが自己紹介すると、「私は彼らです」(I am they [their, them, theirs].)というようなことになってしまうが、大丈夫だろうか。
それにしても、マテオ選手。Marcos Aurelio Mateo Lora。Marcos は姓にも個人名にもなるし、Mateo も同様である。Lora は Laura と間違えて女子名かと思ってしまいそうである。Aurelio という姓はないだろうと思っていたが、実はこれがあるのである。“Historia Apellidos”によると、スペインでは26670位で、かなり少ない。世界的には絶対数でも人口比でもブラジルが1位である。
 Lora 以外は個人名にも姓にも使われるわけで、順番を適当に変えると、簡単に別の人物になるのである。  

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阪神タイガースのマテオ選手(2)Mateo

2018-02-15 18:11:50 | 名前
 阪神タイガースのマテオ投手。ドミニカ共和国出身で、フルネームは「マルコス・アウレリオ・マテオ・ロラ」(Marcos Aurelio Mateo Lora)。
 
 マルコス・アウレリオが個人名で、これは前回紹介した。今回は父の父姓の Mateo である。日本語ではアクセントが「マ」の上に来ているが、本来は「テ」(e) の上である。
 小学館『西和中辞典』の Mateo の項を紹介する。

 1.《聖》San Mateo 聖マタイ:キリストの十二使徒の一人。『マタイによる福音書』の著者。祝日 9月21日。
 2.マテオ:男子の洗礼名
 
 【カトリック情報「使徒聖マタイ福音史家」より】
マテオは「マテオ・リッチ」(Matteo Ricci)の個人名として有名である。
 
 【マテオ・リッチ】
 Mateo はポルトガル語 Mateus、フランス語 Mathieu、英語 Mathew に相当する。ポルトガル語 Mateus はワインの名前としてよく知られている。
 
 というわけで、初めて「マテオ」の名前を聞いたときは、てっきり個人名だと思った。一般的には姓を登録名にするのだが、個人名を登録する場合もある。古いところでは「レポーズ」選手が、「ロジャー」選手になって活躍した例もある。
 Mateo が姓にもなることはマテオ選手の例で初めて知った。早速、いつもの“Historia Apellidos”を調べてみる。スペインでは143位。珍しい姓ではない。世界的な分布を見ると、絶対数ではフィリピン、人口比ではドミニカ共和国に多い。
  これまでラテンアメリカ出身の選手の姓を見てきたが、Amador(愛を与える人、たぶん神様)、D'Oleo (聖油)、Cruz (十字架)、Santos(聖者)などと並んで、Mateo も「聖マタイ」に由来する、宗教的なありがたい名前といえるだろう。 

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阪神タイガースのマテオ選手

2018-02-14 16:02:39 | 名前
  2017年のシーズンに活躍した選手はまだいた。阪神タイガースのマテオ投手とドリス投手である。リーグ優勝も日本シリーズ進出も逃してしまったので、印象が薄くなってしまった。成績は立派なのに気の毒である。
 マテオ投手がセットアップ、ドリス投手がクローザーだったので、この順番で紹介しよう。
 まず、マテオ投手。フルネームはウィキペディア「マルコス・マテオ」によると、「マルコス・アウレリオ・マテオ・ロラ」(Marcos Aurelio Mateo Lora)。ドミニカ共和国の出身である。
 
 個人名は Marcos Aurelio、父の父姓が Mateo、母の父姓が Lora である。
 個人名の Marcos も Aurelio も珍しい名前ではない。Marcos はローマ神話の軍神マルスに由来するが、この名前は『マルコによる福音書』の著者 San Marcos (聖マルコ)にちなむ男子名である。姓としても使われていて、“Historia Apellidos”によると、スペインでは124位。世界的な分布を見ると、絶対数ではブラジル、人口比ではスペインに多い。フィリピンにもこの名前の大統領がいた。Marcos は英語では Mark や Marks に相当する。
 Marcos の語末の s を取って Marco としてもよい。『母を訪ねて三千里』のあのマルコや、マルコ・ポーロなどでお馴染みである。
 小学館『西和中辞典』Marco の項には次のように書かれている。

 1.Marco Aurelio マルクス・アウレリウス:ローマ皇帝(在位161-180) でストア哲学者。五賢帝の最後の皇帝
 2.マルコ:男子の名[Marcos の異形]

 ということは、マテオ選手の個人名は Marco と Marcos のちょっとした違いがあるとはいえ、ローマ皇帝「マルクス・アウレリウス」にちなむものであろう。それにしても立派なお名前である。写真を見る限り、とても哲学者には見えないが(口ひげとあごひげを除く)。
 
 【マルクス・アウレリウス】
 Aurelio という名前は「金、ゴールド」に関係がありそうである。金の元素記号は Au だが、ラテン語では aurum という。スペイン語では au が o に変わり、語尾も変化して oro となる(フランス語では or)。
 áureo(金の)や áurico(金の。英語形の auric は映画『007』シリーズの『ゴールドフィンガー』でゴールドフィンガー所有の会社の名前として使われていた)などはもちろん、aurora も関連語らしい。男子名 Aurelio はさしずめ「金太郎」といったところだろうか。
 ところで、フランスの都市「オルレアン」Orléans も Aurelio と関連のある Aurelianus(小金太?)にちなんでいる。ウィキペディア「オルレアン」には次のように書かれている。

 ローマ皇帝アウレリアヌスはこの町を再建し、アウレリアーヌムすなわちアウレリアヌスの都市 Aurelianum、英語では "city of Aurelian"(フランス語でcité d'Aurélienスィテ・ドーレリャン)と名付けた。これが変化してオルレアンとなった。

 ただし、この皇帝はマルクス・アウレリウスではなく、「軍人皇帝時代のローマ皇帝(在位270年 - 275年)である」(ウィキペディア「ルキウス・ドミティウス・アウレリアヌス」)。

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óleo (油)について

2018-02-13 15:52:05 | トリビア
 東北楽天イーグルスのペゲーロ選手の母の父姓 D'Oleo からさらに脱線する。
 普通名詞 óleo は原義が「オリーブ油」で、さらには「油一般」をも指すようになった。現代生活になくてはならないものは石油だが、英語では petroleum、スペイン語では petróleo という。スペイン語のほうにはちゃんと óleo がついていて、「油」を表すことがわかる。petr の部分は「石」を表すラテン語 petra のことである。スペイン語では「石」は piedra である。「石」に関連した人名は Pedro で、聖書には「ペテロ」の名前で登場する。
 つまり、日本語の「石油」は英語やスペイン語などの西洋語の直訳である。
 石油と一口に言っても、原油、重油、軽油、灯油などいろいろな種類がある。
 「原油」は英語では crude というが、スペイン語では petróleo crudo という。crudo は基本語彙で、「生(なま)の、加工していない」という意味の形容詞である。つまり petróleo crudo は「生の(加工していない)油」で「原油」というわけである。
 英字新聞の石油関連の記事を読んでいて、crude の意味がわからなくても、スペイン語の crudo を知っていれば、文脈から crude の意味は類推できる。
 話は変わるが、ロシアで「石油王」といわれている「ロマン・アブラモヴィッチ」。名前に「アブラ」が入っていることで、日本でも話題になったものである。しかし、これは「油」とは関係ない。「アブラームの息子」で「アブラモビッチ」というわけで、ロシア語の「アブラーム」は英語の Abraham、スペイン語の Abrahán(アブラアン)に相当する。これらの名前は聖書に出てくる「アブラハム」(英・西 Abraham)に由来する。
 ここで、「アブラハムの子」という歌を思い出したが、それについてはウィキペディア「アブラハムの子」を参照いただきたい。
「アブラカダブラ」という呪文にも「アブラ」が含まれている(スペイン語表記では下記のように abra が2つ)。この言葉は小学館『西和中辞典』にも載っている。abracadabra とつづる。本来は「病魔を追い払うためなどに使われる逆三角形に書かれた呪文」(『西和中辞典』)である。
 
 ウィキペディア「アブラカダブラ」によると、語源はアラム語やヘブライ語などとの説があるらしい。スペイン語話者なら abra を動詞 abrir(開く)の丁寧な命令形 abra と関連付けそうである。
 
 【「開けゴマ」を唱え、洞窟に入ったアリババ(アルベール・ロビダ筆)。ウィキペディア「開けゴマ」より】
 「開く」といえば、「開けゴマ」を連想するが、スペイン語話者は「開けゴマ」の代わりに abracadabra と言ってしまうかもしれない。ちなみに、「開けゴマ」はスペイン語では“¡Sésamo, ábrete!”または“¡Ábrete, sésamo!”という。ただし、「ゴマ」を表す sésamo は日常的には筆者の経験では聞いたことがなく、ajonjolí(アホンホリ)が使われていた。ということから、“Abierto, ajonjolí”とも言われるらしい。ここでは、動詞 abrir の命令形ではなく、過去分詞由来の形容詞 abierto が使われている。
 ペゲーロ選手から脱線して、油を売ってしまった(使い方がちょっと違うような気もするが)こと、ご寛恕願いたい。 

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東北楽天イーグルスのペゲーロ選手(4)母の父姓 D'Oleo の Oleo について

2018-02-12 16:29:39 | 名前
  前回、東北楽天イーグルスのペゲーロ選手(Carlos Angel Peguero D'Oleo)の母の父姓 D'Oleo について述べた。D'Oleo に含まれる Oleo についてもう少し述べる。

 Oleo は普通名詞 óleo から来ているが、本来の意味は「オリーブオイル」である。これがカトリックの儀式に聖油として使われている。
 オリーブオイルとカトリックをはじめとした宗教との関係については「宗教におけるオリーブオイル」に詳しいので、そちらをご覧いただきたい。
 「オイル(油)豆知識」というサイトによれば、人類の歴史上、起源がもっとも古いのはオリーブオイルとごま油だそうである。というわけで、カトリック等の伝統的な宗教でオリーブオイルが使われるのは当然である(なぜ、ごま油ではないのかという疑問は残るが)。
 ところで、「オリーブ」の学名は“olea europaea”だそうである。olea は一見、スペイン語 óleo の女性形のようであるが、olea はラテン語である。ラテン語 olea は「オリーブ」で、スペイン語 óleo の原義は「オリーブオイル」である。意味に少しずれはあるが、関連性は明白であろう。
 ところで、スペイン語では「オリーブオイル」は一般的には“aceite de oliva”という。「油」一般も óleo ではなく、aceite(アセイテ)である。oliva(女性名詞) が「オリーブ」である。オリーブといっても、「実」の方で、「木」の方は olivo(男性名詞) になる。「実」は fruta(英 fruit の関連語)で女性名詞、「木」は árbol(アルボル)で男性名詞だからであろう。
  Olivo は姓としても使われていて、“Historia Apellidos”によると、スペインでのランキングは4372位。世界的な分布では、絶対数でメキシコ、人口比ではドミニカ共和国に多い。シアトル・マリナーズにも在籍したミゲル・オリーボ選手もやはりドミニカ共和国の出身である。
 
 【ミゲル・オリーボ選手】
 話は変わるが、ジャズが好きな人はソニー・ロリンズの作品に“Oleo”というのがあることを想起しないだろうか。
 当初、これは「油絵」のことかと思っていた。ところが、「MIRUKO の時間」というサイトによると、「OLEO はたまたまロリンズさんがいつも常用しているマーガリンの名前だったとか!! 」
 さらに引用を続ける。
 
 1869年にナポレオン3世が軍用と民生用のためにバターの安価な代用品を募集したところ、フランス人のイポリット・メージュ=ムーリエが牛脂に牛乳などを加え硬化したものを考案。これは、オレオマーガリン (oléomargarine)という名前がつけられ、後に省略してマーガリンと呼ばれるようになった。 

 oléomargarine の短縮形が margarine(西 margarina)になり、さらに日本にも伝わり、「マーガリン」になったという次第である。
 ということで、ソニー・ロリンズの Oleo はロリンズ愛用の「マーガリン」で、「聖油」ではないのがちょっと残念である。 

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