雪舟の『慧可断臂図』は洞窟の奥の設定のせいか、雪積もる日だとは気が付かなかった。そこで慧可は、大師が坐禅する洞窟内部に踏み込まず、洞窟の外に立たせたい。一つには己の腕を切り落とすのに使った剣を傍の雪に突き立て、雪には僅かな血痕、これが最初から浮かんでいたからだが、慧可の頭や肩に、粉を降って撮り直した。国宝にああだこうだ、と異をを唱えているようだが、なんといっても雪舟が参考にした中国のオリジナルより、雪舟作にはただならぬ緊張感が漂い、そこに惹かれたのだが、その緊張感は筆描きによる水墨画ならではのものであり、人形写真で狙うべきものではない。 インスタに上げようと、横着して寝転がったまま下から撮り、やはり写真を手段にしているのだから、あくまで写真的に撮ろう、といっていたのにかかわらず、やはり例によって最初に描いた悪戯描きを超えることができず、上斜め45度から見下ろす構図になった。