【夢解き師】『寒気氾濫』(1997年)66頁
参加者:泉真帆、鈴木良明(紙上参加)、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部 慧子
司会と記録:鹿取 未放
150 沈黙のおんなに凭りかかられてみるみる石化してゆく樹幹
(レポート)(2014年8月)
そこにいる「おんな」は「沈黙」のまま樹に凭りかかっている。沈黙がかろやかなたたずまいを見せる人もあろうが、そうでない場合もあり、精神のいきいきしていない人に凭りかかられると樹といえどもたいへんな圧迫かも知れない。沈黙の圧迫による樹幹の困惑や疲労を「みるみる石化してゆく」として、うつろう時をかたちにし、読者に示す。(慧子)
(紙上意見)(2014年月)
斎場の樹木に凭れて、故人を偲んでいる沈黙の女。凭れかかられている樹幹は、その嘆きの重さにたちまち石化していく。本邦雄の歌をベースに面白く表現している。(鈴木)
(発言)(2014年月)
★本邦雄の『水葬物語』に「革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ」が
あります。ただのパロディではなく、対比して作っている。沈黙の女には何か重いものがあって
それに凭りかかられるので何か固まってしまう歌だと思う。ただ、肝心なところを味わえていな
いのですが。樹幹というのは、木の中の役割をきちんと言いたかったのではないか、根に続く樹
幹であるよということ。語らぬものの沈黙の訴えによって動けなくなってしまったものをいいた
かったのではないか。(真帆)
★本邦雄の第一歌集『水葬物語』の巻頭歌だから誰でも知っていますよね。本にとっても処女
歌集の巻頭歌だから非常に思い入れがあるはずですし、元の歌の辛辣な批評意識とか苦さとかは
周知のことだと思います。その本歌取りをするのだから、渡辺さんにも相当な覚悟とか思い入れ
があるはずなんですけれど、私はもう一つこの歌が分からないです。真帆さんが言った「語らぬ
ものの沈黙の訴えによって動けなくなってしまったもの」というのはそうなんだろうと思うし、
鈴木さんの「斎場の樹木に凭れて、故人を偲んでいる沈黙の女」という解釈も、唐突に女が出て
きたように思ったけど、なるほど一連の流れの中では故人と深いかかわりのあった女か、とも思
うんですけど、作者の意図とか本質的な部分が自分ではつかめないでいます。(鹿取)
★国のことだったりしますか?「沈黙のおんな」でどこかの国を例えたり。(真帆)
★それは違うような気がする。この一連にいきなり外国への風刺とかは出てこないんじゃないかな
あ。(鹿取)
◆本邦雄の「邦」の正字が出せませんでした。申し訳ありません。
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