渡辺松男研究37(16年4月)
【垂直の金】『寒気氾濫』(1997年)125頁
参加者:石井彩子、泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆
司会と記録:鹿取 未放
304 幽霊を真上から見てみたきなりぞくぞくと闇を泳ぐ幽霊
(レポート)
(解釈)幽霊を真上からみて見たいものだ。きっとぞくぞくと闇を泳ぐ幽霊たちがいるにちがいない。
(鑑賞)前の303番を受けているのではないだろうか。この連作ではタテとヨコに動くものに目を向けている。闇にいる霊はヨコに這うように泳ぐ。(真帆)
(当日発言)
★幽霊って前から来たり横から来るからぞっとする。それで作者はユーモラスに上から見て高みの見物をしてみたいなと考えたの
じゃないかな。泳ぐ烏合の衆のようにぞくぞくとやってくる幽霊たちを上から見る。(慧子)
★これ空中を泳いでいるんですよね、まさか水の中を泳いでいる訳じゃない。確かに向こうにボーと立っているから幽霊は怖いの
で、泳いでいたらきっと怖くないよね。(鹿取)
★幽霊って足が無いのよね。それで上から見るとまるで泳いでいるように見える。そういう視点の面白さ。時空を超えている訳で
す。「ぞくぞくと」は怖い意味ではなくて、何かそういう泳ぐ形の形容。(石井)
★「ぞくぞくと」は私も怖い意味だとは思わない。集団の意味だと百鬼夜行みたいで楽しいけど、あれはお化けで幽霊ではないか。
でも、この歌、書いてある通りに読んで楽しくて好きですよ。(鹿取)
★人間界に置き換えると人間界もそんなものかと。(石井)
★松男さんは上から見る視点が斬新ですね。横から見たら怖くても上から見たら全然怖くない。まさに高みの見物ですよ。ぞくぞく
はたくさんいるってこと。面白い歌ですよ。(鈴木)
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