脱ケミカルデイズ

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やけどに「ラップ療法」要注意

2012年07月11日 | 

朝日新聞2012年7月7日 やけどに「ラップ療法」要注意 熱傷学会 効果の一方、重症例も

やけどを食品用ラップなどで覆って治す「ラップ療法」で、傷口が腐って足を切断したり、重い感染症を起こしたりする例が相次いでいることが、日本熟傷学会の調査でわかった。同学会は今後、注意を呼びかける声明を出す。

ラップ療法は、傷口からの体液で湿らせて、傷を早く治す「湿潤療法」の一つ。この療法で使う医療用シートが認可されている。傷口の細菌感染による化膿には注意が必要だが、1990年代後半から、床ずれの治療に食品用ラップなどが使われ始めた。その後、やけどや傷にも効くと、ネットなどで広まった。日本熱傷学会は「ラップ療法対策特別委員会」を設け、今春、やけど治療の実態を調べた。この結果、回復の遅れや症状の悪化などのトラブルが48例、確認された。このうち10例は傷口で増えた細菌が全身に回り、高熱や意識障害を起こす敗血症になっていた。左足の低温やけどで、ラップ療法を受けた糖尿病の60代男性は医師から「絶対に2、3日、交換してはいけない」と言われ、患部が腐って足を切断した。一方、54例では、やけどが治る効果が確認された。

同学会は、食品ラップなどの日用品は基本的に使わないよう求める声明を出す。調査委員会の安田浩・産業医大病院准教授(形成外科)は「湿潤療法の効果は確かめられているが、正しい知識を持つ医師が医療用シートでやらないと危険だ」と注意を呼びかけている。(阿部彰芳)

湿潤療法の注意点 安田浩さんによる
●感染症を起こしている傷には基本的に使わない
●傷口や周りの皮膚がふやけたり、乾いたりし過ぎないよう、適度な湿り気を保つ医療用シートが望ましい
●傷の痛み、膿(うみ)が出たり、赤くなったりするなど感染の兆候があれば、他の治療法を考える

 

主催者コメント 湿潤治療について

傷口には傷薬を、というのが常識でしたが、医療の場で、これまでの傷治療に対する認識が変わりつつあります。それが傷の「湿潤治療」という療法です。
その特徴とは、
①傷を消毒しない。消毒液を含む薬剤を治療に使わない。
②創面を乾燥させない。
これにより、擦り傷、切り傷が、早く、痛みもなく、きれいに傷が治るようになるそうです。今までの常識では、傷は消毒して乾燥させる(ガーゼで覆い早くかさぶたを作る)というものでしたが、その正反対です。
皮膚が破壊されると、浸出液が出てきてその中で肉芽が生じ、皮膚細胞が周りから進出して修復します。この皮膚の自己治癒作用は浸出液で濡れた状態が一番働くので、湿潤治療は自己治癒力を最大限に引き出すものです。ちょうど火傷のあとの水ぶくれがこの状態です。
傷薬はこれら修復しようとしている細胞を殺してしまうので、かえって治療の妨害をしていることになります。
 やり方は、傷口を水で洗って血や汚れなどを落とし、タオルなどでふき取る。傷にくっつかず、浸出水を外に漏らさないもので覆い、絆創膏などで止める。被覆材は家庭用ラップやポリ袋でもいいので、軽い傷なら家庭で簡単にできるともいわれます。

今回の指摘は、湿潤潤療法はを否定するものではなく、家庭用ラップでは問題があるということで、医療用のシートでやるのが望ましく、感染の有無をまず見る必要があるということです。

参考
夏井睦『傷はぜったい消毒するな』光文社新書、2009年

 

【ケミカルデイズ http://www16.plala.or.jp/chemicaldays/index.html