脱ケミカルデイズ

身の周りの化学物質を減らそうというブログです。 

世界で化学肥料の窒素による水質汚染広がる

2013年05月06日 | 化学物質

朝日新聞GLOBE2013年5月5日
ナショナルジオグラフィック日本版から 化学肥料と地球の未来 窒素の流出が湖を汚染

窒素は農業を支える肥料として、膨大な人口の胃袋を満たす食料生産に、重要な役割を果たしている。窒素肥料なくして、今や私たちの生活は成り立たないだろう。だが、窒素を使いすぎた代償が、環境問題という形で現れ始めた。その一方で、窒素肥料を使わない地域は、依然として食料不足に悩んでいる。

1970~90年に人口が3億人も増えた中国では、従来のやり方では食料需要を満たすことが困難になった。政府は窒素肥料の製造工場を数百カ所建設。現在、窒素の投与量は1ヘクタール当たり590キロに達している。

田畑にまかれた窒素化合物は、じわじわと周囲に流出し、しばしば環境に悪影響を及ぼす。近年、中国政府が国内40カ所の湖で実施した調査で、半数以上の湖が大量の窒素やリンに汚染されていることがわかった。湖の藻類の異常増殖の元凶とされている。

米ミシガン州立大の研究所では、トウモロコシなどの栽培方法を比較する研究が進められている。休耕期にアルファルファやクローバーを植えた“低窒素肥料”の耕地では、高い収穫量を維持しながら窒素の流出量を抑えられた。

未来への鍵は、世界各地の農家や農地から見っつかるはずだ。(ナショナルジオグラフィック日本版2013年5月号「化学肥料で“肥沃”になった地球の未来」よりGLOBE編集部で要約)

 

藻類の異常発生日本でも

今月号の「ナショナルジオグラフィック」では、主に中国での窒素肥料の大量使用の問題が指摘されている。日本ではどのような状況なのだろうか。

山梨大学生命環境学部の新藤純子教授(環境科学)によると、日本では窒素量に換算して年間約45万トンの窒素肥料が使われているという。国連食糧農業機関(FA0)の統計から計算すると、農地1ヘクタールあたりの使用量は約110キロ。作物によってばらつきが大きく、「数百キロ与えているところもある」。

農地の利用の仕方に差があるため単純比較はできないが、米国の使用量は1ヘクタールあたり30キロ、EU諸国は20~160キロという。

最近の日本では農耕地が減っており、窒素の使用量も合計では減り気味だ。ただ、「東京湾、大阪湾、瀬戸内海など水の出入りが少ない水域では、陸から河川を通じて流れ出た窒素によって赤潮がたびたび発生し、湖沼では藻類の異常発生や、硝酸イオン濃度が高まるといった影響も出ている。窒素肥料も大きな一因と言われている」と新藤教授は指摘する。

農水省は1999年から化学肥料や農薬の使用量を減らした農家を「エコファーマー」と認定し、一部を支援する事業をしている。昨年度末までに21万件以上が認定されているという。(GLOBE記者宮地ゆう)